*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【人権学習教材?】


 人権について話して欲しいという依頼を受けることがあります。一般の方に人権について啓発することも役目なのでお引き受けしますが,いつも迷うのが話す内容の選択です。人権問題としてパンフレットなどに掲げられていることは,

  ○女性の人権を守る。
  ○子どもの人権を守る。
  ○高齢者を大切にする。
  ○障害のある人の完全参加と平等を実現する。
  ○犯罪被害者と家族の人権を配慮する。
  ○部落差別を無くす。
  ○アイヌの人々への理解を深める。
  ○外国人の人権を尊重する。
  ○HIV感染者やハンセン病患者等への偏見を無くす。
  ○刑を終えた出所者への偏見を無くす。
  ○インターネットを悪用する人権侵害を止める。
  ○性的指向を理由とする差別を無くす。
  ○ホームレスへの偏見を無くす。
  ○性同一性障害を理由とする差別を無くす。

 差別という具体的な拒否行動がされる側の人の人権侵害になることは明らかです。差別の前段階としての偏見は心の中にあるもので他者には見えません。直接的な関わりの当事者になったときには拒否行動となって現れますが,間接的には見て見ぬ振りをするといった無関係さを維持しようとします。さらには,人間観の中に優劣といった評価尺度を持ち込んでしまい,それが偏見であると意識しないままに,他者のより良く生きようとする願いを壊してしまうことが起こります。あるいは,自己の欲望を充足することしか念頭に置かずに,他者への思いやりを脇にどけて,他者を利用しようとする卑怯な行為も犯罪直前の域に踏み込んでいます。
 このような様々な段階の人権問題の背後には,人は共に生きているという根源的な理解が十分ではないことがあります。人の好き嫌いというような感情を認めざるをえない現状では,人間関係の中に人権という視点からの制御を持ち込まなければなりませんが,それは野放しの自己主張への歯止めになるために,意志の強さを必要とします。
 権利と権利の衝突が弱者の権利を侵すことになるという構図で考えると,強者の権利を抑制することが権利を守ることになるはずです。そこでは,権利と義務というバランス感覚を構築することが一つの解決策になります。権利の抑制は義務になるということです。一人一人が義務を果たすことで,お互いの権利が守られるという図式を描くことができます。
 他者を理解すること,簡単に言えば,人を人として思いやることが出発点になります。そこで,啓発の機会のあるときには,人の思いを分かり合うという方向でお話しするようにしています。その際に,参考にできる資料がありました。大阪府教育委員会が作成した参加体験型の人権学習教材です。「動詞から広がる人権学習」という資料です。(参照→【動詞から広がる人権学習】
 動詞として,分け合う,伝える,決める,抱え込む,名のる,暮らす,知らせる,参加する,働く,遊ぶ,つながる,聴く,避けるの13項目ごとに,エピソ−ドを提示して考えるという教材の形式が整えられています。上記のホームページから資料をpdfファイルでダウンロードすることができます。ぜひ,啓発の機会があれば,参考にされてください。
(2008年03月31日)