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【第2章】行動の青信号
2.1 社会性の根元を一言で表そうとすれば,どう言えるのでしょうか?
社会が明日に向かって安定して動いていく条件とは,価値規準のバランスです。人の生き方にもバランスが求められます。信号には青信号もあるのです。子どもたちに他者を温かく認識させるために,どのような心の青信号を設置したらよいのでしょうか。
社会性とは人が外界にどのように働きかけるかという行動の総体です。社会性を読み解くキーワードとして「ギブアンドテイク」という概念を取り上げます。この言葉は主として利害関係の公平さというバランスを表現していますが,多くの人が気づいていない知恵が込められています。それは順序で,ギブが先であるということです。逆にして「テイクアンドギブ」と言えば,鼠小僧の論理になります。テイクだけではなくギブが付随することによってかろうじて義賊と呼ばれていますが,テイクからはじめるのは闇の世界のルールです。犯罪行為や非行は断じればテイクの行動であることからも明らかです。これに対して表の世界はギブを優先するルールで動いています。無償のギブ行為である奉仕活動が推奨されるのも,社会を成立させる大事な活動原理だからです。
迷惑をかけないようにという制止規準は,テイク行動に被せられた規準です。前述のように制止が有効に働かなくなったのは,その根元であるテイク欲望を中和するギブ欲望が発動していないからです。悪の道を赤信号で封鎖する一方,同時に善の道に青信号を点すことで,人の生活行動は滞りなく流れることができます。メカニズム的に言えば,ギブしようとすることで,暴走気味のテイクに強いエンジンブレーキがかかるのです。
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