*******  心 の 指 南  *******

〜育てよう ドウゾと言える 健やかさ〜

【 序 】
2 問題行動の底に潜むひずみの正体は,何でしょうか?
 では,その要因は一般にどのように分析されているのでしょうか。他者の命を冒涜したという悪行をしていながら悪いという認識がうかがえない無邪気さが,人を人とも思わない冷酷残忍さを漂わせます。悪の判断力が育っていないという指摘がなされます。さらに悪というのは他者に対する負の価値観ですから,他者意識の欠落,つまり立場を逆転すれば自己中心的な育ちが基盤にあると考えられています。
 また薬物や売春の罠に自ら捕らわれていこうとする無謀さが,自分を大切にする意欲の未熟さをうかがわせています。たとえいくらかの後ろめたさがあったとしても,欲望を解放する言い訳の方が優先され,自己正当化のプロセスを経て苦もなく一線を越えていっています。必ず口にされる言葉が「誰にも迷惑をかけていない」という言い立てです。この場合の誰にもとはもちろん他者のことではあるのですが,人間的な関係を持たない通りすがりの他人のような透明な他者なのです。これも他者意識の欠落と認定してよいでしょう。
 社会生活では,自分を大切にすると同時に他者をも尊重し,自他に対する善悪の価値観による判断をした上で行動化しなければなりません。自分の欲望や衝動の無制限な発散は抑制され,適度な欲望の適切な発散法が社会行動の基本です。子どもたちが思いもしない悪に踏み込んでしまっている状況の分析から,社会性とは何かを学ぶことができないという子どもからの訴えを大人は聞き取り,養育の不備を早急に繕わなければなりません。
 それでは具体的に何をどのようにしつけるべきなのでしょうか。その課題を考える場合に,あらゆる状況を網羅することは現実的ではありません。基本的な概念は簡単なキーワードで表されてこそ実行上有効と考えて,以下の話を進めます。