《第2章  子育て心温計の誕生》

 【2.1】なぜ心温計を必要とするか?

 子育てを考える場合に耳に入ってくる声があります。例えば,「現在の家庭教育を見ると,情報化社会という激動の時代の中で価値観が多様化し,自分の子どもをどう育てていけば良いのか親が戸惑っている。しっかりとした価値観・家庭教育観を持つことが必要である」。つまり自分の価値観を持ちなさいということです。しかしそれをどうして手に入れたら良いのかということは教えては頂けません。
 現在の子育ての特徴は過保護になっているとも指摘されます。保護的であろうとすることは結果的に自立を妨げていることになると注意されてしまいます。また放任も指摘されます。指導すべきことをしていないと。それでは適度の保護をするにはどうしたら良いのかという考え方の提示が全くありません。結論が「適度にしなさい」ということでは振出に戻っているだけのことです。
 青少年組織では健全な子どもを育てようと努力しています。その健全な子どもとはどういう子どもを言うのか,みんなに共通理解されているのでしょうか。明るく元気な子どもが健全な子どもと思われていますが,ではネクラでおとなしい子どもはなぜ健全な子どもではないと思われてしまうのでしょうか。さらに心の豊かなとは。きちんとしたしつけとは。そもそも子育ての目的とは。分からないことばかりです。辞書を引くとこう書いてあるということではなく,私たちの生活実感として確かに捉えられるような生き生きとしたイメージがなければ,地域社会での青少年健全育成には役に立ちません。