《第3章  子育て心温計の仕様》

 【3.2】子育て心温計の健全発育部
 右側の健全な発育部について順に説明をしていきます。

[(5)自分のモデルを持てるか]
 大人から対等であることを拒否され,未熟であることを知った子どもは,力を持ちたいという欲求から大人を客観的に検討し始めます。観測の結果自分に無いどのような能力を大人が持っているかという疑問に答が得られたとき,自分がそうなろうとするモデルが姿を現し始めます。幼い子どもが大きくなったらパイロットになりたいと思うのとは違います。もっと具体的に考えた上で理想とする将来のモデルを持ちます。そして尊敬する人をモデルに据えたり,あるいはモデルにぴったりの人を尊敬できるようになります。
 子どもにとって最初のモデルはもちろん親です。お父さんはすごいな,お母さんは偉いなと,時々は子どもが見上げることができれば,そこにはモデルが見えています。親が何か仕事を一心にやっているときに感じられるあの近寄り難さといったものが大事です。いつものお父さんとは違っていると感じさせることです。親は家庭でも自分の仕事をする必要があります。趣味的なことであっても構いませんが,できれば誰かのためになるものの方が望ましいと思います。地域社会での仕事などであれば申し分無いでしょう。
 子どもはこのモデルを持とうとするとき,同時に今の自分に対する特徴を意識し始めます。例えば自分は男の子だからお父さんのようになりたいと思います。お兄ちゃんであるとか,妹であるということもあります。つまり自分に○○らしさという色付けを施そうとします。自分を他とは異なるものとして「独立感」に芽生える発端でもあります。
 子どもは父親らしさとその背後にある男らしさ,母親らしさとその背後にある女らしさ,先生らしさとその背後にある先輩らしさ,その他一般の大人らしさと子どもらしさを感じとり,将来の自分がなろうとするモデルを描き,その実現のために今の自分が備えなければならない条件を体得しようと努めます。