*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【会議の策略?】

 人が集まって何事か始めようとすると,会議になります。どんな組織でも会議は不可欠です。ところで,会議については,集まって衆議を決することだと思われています。当面する課題に対して皆で考えてより良い解決策を見つけだす方法であり,皆が納得できるような方向付けをする目的を持って,会議は開催されています。
 会議には議決が付き物です。大部分の会議には決定機関という役割が付与されているはずです。その通りなのですが,会議を開催する側には,全く別の意図が隠されています。なぜ会議が持たれるのかという理由に関わることです。そのことに気付いていないと,会議の出席者は無駄な時間ばかり費やしてという感想しか持たなくなります。会議の出席者には何が期待されているのでしょうか?
 会議とは,人の集まりが組織として動くために,組織の意志決定をする機関です。そのことは組織の構成員の一人ひとりにとっては自らの意志を揃えることです。言い換えれば,自分が決めたということに大きな意味があります。決定に関わったという実感がそれです。
 人が行動するときに,人に言われてする場合と,自分がこうと決めてする場合では,熱意の持ち出し方が違います。自分が決めたことに対しては最後まで責任を持とうとするものです。組織が活性化しているかどうかは,まさに一人ひとりが自らの行動であると自覚するかどうかにかかっています。もちろん組織の規模に応じて,決定に関われる範囲には濃淡があります。しかし,少なくとも,自分が引き受ける仕事の範囲では自分の意思で決めたという納得があればいいでしょう。いろんな段階での会議を開くことで,出席者が自分の仕事を決定できること,それが会議を開く本当の理由です。
 確かに会議を取り巻く状況は選択肢を狭め,せざるを得ないことばかりで,何かしらさせられているような感じになることが多いでしょう。そのように意図的に参加者を追いつめていく議事運営の仕方もあります。しなければならないと無理矢理引っ張っていく上意下達です。言われて仕方なしにしていると,それなりの責任を果たしておけばいいという中途半端な気持ちになりやすいものです。
 出席者に決定権があるということを明確に意識させる運営をすることが,会議を開く者の心すべきことです。いい仕事をしたいという気持ちは,自分の仕事だと思えるから出てきます。何かを議決したいとき,よく根回しということをします。根回しは決定するのはあなたですよというメッセージです。自分が決めたという了解によって,人は力を出すスイッチをオンにできるのです。会議の席でも,最低どちらを選ぶかという二者択一の選択肢を用意することが大切です。会議とは,決めたのはあなた方ですよという了解の場なのです。

(2001年10月20日)