*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【男女共同参画社会?】

 一つの役職に就くと,当て職として他の役職が付随してくることがあります。社会教育の分野も例外ではありません。各層の意見をまとめるという大義名分が作用しているせいでしょう。複数の市町からなる地区の代表を務めていると,関連するいろんな場に来賓としてご招待を頂きます。同じ地区の連合婦人会が主催する活動発表会に,支援団体の会長代理として,副会長の務めを果たす機会がありました。いわゆる来賓の挨拶という次第です。

 婦人会の方に何を訴えればいいのか,何か一つのメッセージをきちんと持って帰って頂くためには,適切な素材を選ばなければなりません。通常は来賓挨拶は印象に残らないものです。建前の言葉が羅列されているという先入観もあります。それが開会式という式典の形式美なのかもしれません。しかし,せっかくお話をするチャンスを頂けるのですから,聞く方に一つの学びを提供することも可能にしたいと考えることができます。そこで,耳にすることがあると思われるキーワードについて,短い解説をしてみようと思い立ちました。それが,以下の来賓挨拶です。

【平成13年度 ○○郡連合婦人会 活動発表会 来賓挨拶】

 本日は,ご招待を頂き,ありがとうございます。

 私は,○○地区社会教育振興会の副会長を務めております ○○ と申します。
 振興会の会長である ○○町の○○町長が公務のために 代行させて頂きます。

 ○○郡の連合婦人会の皆様方には,常日頃より,○○地区の社会教育活動には多くのご支援を賜り,厚くお礼を申し上げます。

 さて,人は様々な姿を背負いながら,こつこつと生きてまいります。その中で,男女共同参画社会を目指すという動きが始まりました。男女共同参画社会と聞けば,そら来たと思われませんでしたか? 漢字の言葉は古来男言葉であり,理念的なので,実行するには今ひとつ分かりにくいところがあります。女文字であったひらがなに直してみましょう。

 男女共同は,男と女が一緒にということです。次の「参画」が問題です。言葉は似た言葉と並べるとわかりやすくなります。参加と参画の違いを考えてみます。
 参加は,すでにある事業に参加すること,参画はある事業の企画段階から関わることです。誰かが決めたものに乗っかるだけが参加,自分たちが決めていくのが参画です。人が意欲を持つためには,この自分たちが決めるということがとても大事なことなのです。
 婦人会の活動においても,会員の参加を願っていては壁に行き当たります。参加ではなくて,参画をしていただくような会議等の運営が必要でしょう。

 男女共同参画社会の社会ですが,ともすれば会社などの組織社会がイメージされてしまいますが,少し違います。人は家庭人であり,職業人であり,そしてもっと広く社会人です。そしてその基盤は地域にあります。
 この地域社会では,皆様方の婦人会がしっかりと活躍されています。男女共同参画社会をかなりの程度実現できていると自信を持って頂きたいと思います。

 しかしながら,世情には,ドメスティックバイオレンスという家庭内暴力や,幼児虐待という課題が出てきております。皆様方の仲間が困っているかもしれないということも考えられます。どうぞ,そのような面でのご活動やご支援も,今後,ご配慮頂ければと思います。

 自分たちの課題を自分たちで見つけて,自分たちでこうしようと決めて実行する,今日の活動発表会がそのような契機になることを祈念して,挨拶といたします。
平成14年2月9日


 組織の代表としてのメッセージは形式として外せませんが,その中に私なりのメッセージを挟み込んだ積もりです。伝えたかったことは,参画とは自分が決める活動という意味であるという一点でした。社会教育の分野では,もっとも大切な要点だからです。積もりがどの程度皆さんに伝わったかは分かりませんが,いつかふっと思い出して頂ければ幸いです。

(2002年02月11日)