*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【家庭週二日制?】

 古巣であるPTAの総会に来賓として招かれ,挨拶をする機会がありました。まず,そのときの挨拶を再現しておくことにします。


 学校週五日制が始まった年の記念すべき総会です。一つの歴史が始まります。皆様の先輩として,心よりお祝いを申し上げます。さて,新しい制度に向かって,子どもに何かをさせようとすると,親は一々教えなければならない,手間暇がかかるという心配をされている向きもあるかもしれません。そこで,私たちは間違いを犯してしまいます。一から教えてはいけないのです。
 一という数字を,私たちは普段どういう風に考えているでしょう? 「一から出直す」と言いますが,出直しができるのは経験者なのです。未経験者であるもの,子どもは出直しではできませんから,0からの出発です。今,五日制に直面している私たちと同じです。何をどうしたらいいのか見当がつきませんね。子どもはいつもこの0からの出発に遭遇しています。
 学校教育は一から始まります。家庭・地域では0から一までの教育を担っています。どういうことでしょうか? 例えば,先生の話を大人しく聞くことができる,それが一までの教育であり,そこから学校教育が始まるのです。
 これまで,この0からの教育を疎かにしてきました。0からの出発,それは創造性というものとも表裏一体です。日本の技術がマネ技術といわれるのは,一からの技術だからです。0から一まで,そこにオリジナリティがあります。
 学校週五日制という言葉は学校が用いる言葉であり,親は家庭週二日制と言わなければなりません。家庭教育の機会が倍増したのですから,大きなチャンスです。我が子をどう育てたいのか,そこから考えなければならないときです。
 今年度入学した一年生は,家庭週二日制を当たり前として育っていきます。どのような育ちをしてくれるか,これからがとても楽しみです。とてもよいときに巡り合わせた皆様の活躍を,期待しながら,先輩としてのエールと致します。ありがとうございました。


 挨拶を終えたときの拍手は,心なしかパラパラでした。この人は何を言っているのだろうという反応と感じました。多分そうだろうなと思いましたが,いささか先を急ぎすぎた話であったことを反省しています。人の思いこみを軌道修正することは至難のことです。
 案の定,議事の最後に設けられているその他で,学校週五日制に対する学校の対応を問う質問が飛び出しました。学校が何かするべきだという思いこみは無意識のレベルにまで食い込んでいます。家庭は,親は,どうしたいという発想が微塵もありません。先は長いと実感させられた経験でした。


(2002年04月29日)