*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【人権啓発?】

 同和教育審議会において,おわりの言葉を述べる役回りになったときに,一言述べさせていただいたことは次のようなものでした。

 ご審議をいただきありがとうございました。ところで,人権という言葉は大変広がりのある言葉であって,啓発活動においてとらえ所が曖昧になることがあります。人権を考える場合,誰々の人権というように,具体的に人をイメージすることが大切です。今年度から始まった学校週五日制について,地域における活動のリーダーは,その対応に苦慮しているという声も耳に入ります。子どものことであれば,子どもの人権という括りの中で考えると,より具体的な活動を計画しやすくなるでしょう。その他に,婦人の人権とか,歩行者の人権といったものもあり得ます。この一年の人権啓発活動において,誰かの人権をどう考えてきたか,その中から見つかってくる新しい課題を,次回の会議の中に織り込んで頂くことを楽しみに致しております。本日は,ご苦労様でした。


 人権とは,手元にある辞書を引くと,「人間に当然与えられるとされる権利」と記されていました。その権利は生活の隅々にまで想定されるはずのものです。いちいち「与えられるとされる」という理由や経緯を確認することが必要になる場合もあります。
 人の権利は,必ず衝突します。いずれかの権利にある程度の制限を課することが,権利を守ることになります。競合する権利の一方だけを認める根拠について共通理解を図ることが,人権啓発の真髄です。そのためには,具体的な例題をたくさん準備した方がよいでしょう。その意味から,誰々の人権という見方が大切になります。子どもの人権,婦人の人権,高齢者の人権,障害者の人権から,歩行者の人権,静かな環境を求める人権などへと広がっていきます。それと同時に,誰が何を守ればいいのかという努力課題も具体化できてくるはずです。
 社会的活動は,常に人をイメージしておかなければ,実情とのすれ違いを生じるものです。例題をたくさん提供できれば,それぞれの立場に即した理解を深めることができるでしょう。

 おわりの言葉を述べるために,今求められている活動を進める上で最も必要な手法は何かを考えてみました。人権といったとても大きな課題に取り組むためには,自分たちにできることから手をつけていくより他に為す術はありません。それを見つける手法が必要不可欠なのです。


(2002年05月27日)