*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【活性化の引き金?】

 社会教育は行政の一端という性格を帯びています。目的であるまちづくりや地域づくりをかなり公的な立場から進めていきます。その効果が上がり,行政と住民のつながりはかなりの程度多様で広がりもできています。具体的には,住民活動が行政からの補助で賄われているという姿が一般的です。
 ところで,まちづくりは自立した住民活動の成果であるはずです。行政からの支援はそのための助走的な機能に限定されるべき性格のものです。自立した住民活動が育つまでの時限的施策です。実のところ,自立するには行政との密接な関係を住民相互の関係の方にシフトしていかなければなりません。たとえれば,いつまでも親の庇護の下にいるのではなく,友だちづきあいの方を大切にする親離れを果たすべきなのです。

 社会教育関係団体についていえば,運営の細部にまで行政職員に関わってもらっているという体質が見られます。これでは住民が集う形での独り立ちはとうてい覚束ないと判断せざるを得ません。自らの組織を動かす運営を外部委託しているのは,端的に言えばトップが雇われでしかないということです。引き受けようという気概ではなくて,引き受けさせられたというお役目的な気持ちでいるためです。
 このような言いがかりを付けることは簡単です。大事なことは,現状がどうなっているのかという分析をした上で,今後どうすればいいのかということです。団体役員が順番制になっています。組織の存在は一応求められているのですが,住民自らが積極的にこうしたいという展望を持てずにいて,同時に余計なことはしたくないという気持ちもあります。仕方なく順番制でしのいでいるという状況なのです。一期の任期中では役職の何がどうなっているかを知ることで精一杯です。その間は例年通りのことを行政職員などに教わりながら過ごし,分かってきた頃にはバトンタッチとなります。この繰り返しでは,トップとしての力の発揮ができないはずです。

 団体のトップが思い通りに動けるようにするためには,何が可能かを探し出して実行できる形にしなければなりません。まずは,新人のトップを迎える組織自体が,新人でも効果的に動かせるような体制に整えられていればいいのです。一言でいえば,詳細なマニュアルを用意することです。いつ何をどのように差配すればいいのか,運営の流れを把握できる情報の整理をして簡単に利用できる形式にしておくことです。その上で,何を目指せばいいのか,活動目標となる指針を示しておきます。
 もちろん行政側からの最小限の支援も必要です。その部分は,ここまでの支援ができますという具体的な提示をしておかなければなりません。限界を明確にすることによって,お互いの思いこみによる馴れ合いに歯止めを掛けることができます。

 話が進んでいくと,以上のような作業を誰がするのかという最大の問題が浮き上がってきます。行政側にして欲しい,いやそこまでの余裕はない,そうなるのは必定です。一番相応しいのは社会教育委員でしょう。何しろ各界のトップレベルの方の集まりなのですから,すべてを熟知している知恵の宝庫です。それを集約しない手はありません。そして,その最終決断は,社会教育委員会のトップの手に委ねられているのです。

(2003年07月21日)