*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【発展・推進とは?】

 見聞を広めるという学びの形態があります。委員には視察に出かけるという研修方法があります。何を見届けてくればいいのでしょうか? 説明を聞く中でどこに着目しておけばいいのでしょうか? それは「違い」を見つけることです。自分の領域で行われている組織や活動などと比べて,異なっているところを探し出します。組織構成に一部でも違いがあれば,それは活動が同じであっても内容に大きな違いとなって現れてくるからです。
 人には,慣れ親しんだものを当たり前と思う習性があります。どこでも大して違わないと思い込んでいると,見逃すことがたくさんあります。例えば,同じ活動を冠した組織でも,○○委員会か○○協議会かで,活動内容は様変わりします。言うまでもなく組織の意図が違うから当たり前なのですが,なんとなく同じという気持ちでいると見過ごします。細かいところに大きな違いが現れているのです。
 同じ組織名で同じ目的の活動をやっていても,よそではそんなことをしているのかという発見をすることがあります。そんなことができるんだ,そんなことをしてもいいんだといった発見ができたら,大きな学びになります。それが見聞を広めるということです。自分の中で知らないうちに設定していた限界に気づかされます。
 見聞する意図は新しいものを探すことだと思われているかもしれませんが,その実体は自らが纏っている限界に遭遇することです。新しいものという気持ちであれば,それは自分には関係ないという判定を呼び込むようになります。よそだからできたのであって,自分の所ではできないと決め込むのです。よそ事にしていては,何の学びにもなりません。自分が思い込んでいた限界に気づけば,そこに新しいことをつなぐ可能性を探そうとするでしょう。視察や研修は,自分の殻を破るためにすることです。よそでできるなら,自分の所でもできるはずと考えることから,豊かな実践が生まれます。
 もう一つ補足をしておかなければなりません。考えるという営みの在り方です。できるかどうかについて考えようとすると,必然的にできない理由も挙がってきて,結局はできない方に結論が引きずられていくものです。できるためにこそ考えなければ,考える能力と言えません。考えるとは何事かをなすためにすることです。できない理由探しは,考えても何もしないのですから,考えるだけ無駄なのです。
 そんなことができると学び,どうすればできるか考えていくと,今までになかった余計なものを抱え込むことになります。それが嫌だと思えば,折角の発展を水に流してしまいます。よりよいものにという前向きな気持ちに応えるために学びがあります。殻を破ることこそが,発展,充実や推進という目標キーワードに命を与えることなのです。このことを明確に意識しておかなければなりません。

(2004年01月23日)