*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【児童生徒の安全確保?】

 最近,小中学生の児童生徒に対する不届きな所業が全国的に流行っています。幼気な子どもを対象にした鬱憤晴らしは,家庭内では虐待であり,家庭外では暴行です。大人たちがモラルの低下を来しているのは,何とも不甲斐ない限りです。ご多分に漏れず,わが町でも教育委員会が把握するだけで,今年度40件以上の不審行為が発生してます。特段の被害に至るような事犯はまだ起きてはいませんが,憂慮される状況に直面しています。
 これまでの全国的な事例を総括すると,いくつかの特徴があるようです。校内への侵入による危害例では,小学低学年がねらわれています。下半身露出などの事例は,中学生女子に向けて起こりやすく,自宅から100m以内の場所が多くなっています。これは自宅が人通りのある場所から少し閑静な場所に入り込んでいるということと関連があるようです。小学生では集団下校から離れて孤立する所でもあります。さらに,単独犯ではなく,複数の者によるものと思われ,自転車,バイク,車といった交通手段を利用しています。一瞬の間に仕掛けるという危うさが防止対策を困難にしています。

 わが町では,子どもたちを守るために,やれることから始めるということで,教育委員会主導でいくつかのことが実施されてきました。
○発生したとき
 ・発生状況を近隣の幼稚園保育園小中学校と警察に即座に連絡する。
 ・教育委員会から総務課に連絡,各地域世話人にファックス,地域放送をする。
 ・児童生徒には集団下校をさせる。
○普段からの見回り
 ・広報車公用車等で巡回をする。
 ・PTA役員が車に「パトロール」ステッカーを貼って日常の行動をする。
 ・交通指導やあいさつ運動をしながら,見守りをする。
 ・老人クラブなどの協力で,散歩がてら見守ってもらう。
 ・青少年指導員へ特別な活動を依頼する。
 ・高校生への協力を依頼する。
 ・親に外まで出て出迎えをするように指導している。
○児童生徒への普段の指導
 ・まず大声を上げて逃げる,学校や近くの家などに知らせて,110番をする。
  (警察署や交番に連絡すると,出動に時間が掛かる。)
 ・PTAなどが,発生場所のマップを作成し,住民に周知する。
 ・希望者に防犯ブザーを携帯させ,訓練を実施する。

 以上のような対応の下で,さらなる展開の必要があるとの判断に基づき,地域総掛かり的な取り組みを喚起する手だてが講じられました。それは,「健全育成町民の会」という組織への協力要請でした。この会は児童生徒の非行防止や健全育成の目的を持った組織であり,防犯という機能は持ち合わせてはいないと考えられます。しかしながら,改めて防犯組織を立ち上げることになると,行政上総務課の管轄に移ることになります。ところが,総務課には実働組織が存在しません。そこで,子どものためにする活動ですから,子どものために組織化された町民の会(教育委員会管轄)が動かざるを得ないという状況があります。ということで,町民の会に提案がなされました。
 町民の会役員会で意見交換を行ったところ,何かの動きをすることについては異論はありませんでした。現状の課題を話し合うことができて,具体的な活動に向かうための共通認識が図られました。その際に出た意見は以下のようなものでした。

・子どもの心配に対して,親はどう考え何をしているのかが見えない現状では,地域の支援は難しい。親は忙しいと何もせずに地域に押し付けられても困る。
・パトロール標識をPTA役員の車,親の自転車に貼って見回っているということだが,全く見かけたことがない。徹底していないのでは。
・昔に比べて駐在所が減少し警察の抑止力が低下しているので,パトロールの強化を要望する。
・中学の部活練習が大会前には遅くまでやられているが,この間だけ自転車通学を認めてやれないか。
・学習塾に出かけているときにも起こっている。塾の管理者にも通報等の要請をすべきでは。
・集団登校時,忘れ物をして取りに帰る途中で車に連れ込まれた例もあり,対応の漏れが危険である。
・発生時の情報伝達のスピードアップが図れないと,特定し検挙することにはつながらないのでは。
・情報の伝達について,同じものが発信元を違えて届けられるが,一元化できないか。
・各種社会教育団体にも情報を知らせ,できる協力を仰ぎ,全町的な取り組みにするプログラムが必要ではないか。
・防犯ベルを持たせることも必要では。さらにいざというときの訓練も不可欠であろう。今は親に一任しているので携帯する生徒は少ない。

 今後の運びは,学校・PTAを中心として親自らが立ち上がる姿を見せることから始めなければなりません。それに地域の各組織・団体が支援をする体制を整えることです。連絡網や具体的な対応マニュアルを整備し,周知徹底することができれば,これまでの取り組みが生かされ,かなりの抑止効果は期待できるはずです。もちろん,地域ごとに特別な環境事情があるので,例えば校区毎に相応しい対応策を考えて実践する必要もあります。そのための連絡協議ができる組織を作るべきです。最新の状況を多くの人が共有できれば,協力は自然に得られるものと思われます。
 町民の会の事務局等で具体的な活動方策をまとめ,早急に体制を整えて実行に移すことができるようにすべきです。役職指定で,社会教育委員の会会長は町民の会の部長であり,この問題に関わることになっていますので,流れの一端を書き留めておきました。

(2004年02月24日)