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【情報による先導?】
組織活動はメッセージフローが要です。指導する立場にあるものは,細心の注意を払うべきです。このコーナーでも何度も触れてきました。周辺にある組織活動を端から眺めていると,どうしても気になります。会議の席で口答で指示を出すことがありますが,伝達の程度に微妙な差が出ることを想定しておかなければなりません。その上で,その差を最小限に抑え込む手立てを講じることが,指導する者の力量になります。
例えば,「開始時間午前10時」という決定をします。主催する側は,午前9時に集まって用意をしなければなりません。指導者はそんなことは当たり前と思っています。開始時間を伝えたことで,準備のことも伝わったはずと思い込んでしまいます。当日,9時に出てきたのは指導者だけという事態が起こります。どうしてみんな出てこないのかと,責めるようになります。でも,実は出てくるようにとはっきりと伝えていなかったことが原因です。自分が当たり前と思っていることでも,立場が違う人は当たり前とは思わないのです。慣れない指導者は,立場の違い,経験の違い,意識の違い,当事者であるかないかの違い,いろんな違いを想定できません。
例えば,「予定された事業」の期日が迫ってきます。いろんな手配や準備すべき事柄があります。執行部の者はどのように進捗しているのかリーダーからの情報を待っています。全体の中でのそれぞれの役割を果たすためには,必要な情報です。引き継いだり手渡したり,連携をするためには,手配書・設計図が不可欠です。それを提供しないと,チームは動けません。直前になって急に指示されても,やっつけ仕事になり,不都合も起こります。作業情報も大事です。
例えば,「情報の揺らぎ」が組織全体を揺るがす場合があります。リーダーが発信するメッセージは先導という役割を果たします。オーケストラの指揮棒は,一瞬先のタイミングを指示しています。流れるメッセージに導かれて,組織は滑らかな動きを獲得します。ところが,慣れないリーダーが発信するメッセージは,ときどきの思いつきが絡んでコロッと変動することがあります。先の指示で動いていたことが後につながらなくなり,組織活動の統一性が脅かされます。首尾一貫した情報であることを常に自己チェックする習慣がリーダーの資質です。
情報の管理をする最も手軽で確実な方法は,文書化し共有化することです。書き出せばどの情報が足りないかが一目瞭然です。口答よりも確実性が増します。記憶違いや思いこみといった頭の中のメッセージの揺らぎを排除することができます。同じ設計図で活動すれば,組織は一つになります。一糸乱れずに活動が進むはずです。面倒かもしれませんが,その手間を惜しむから,組織がガタガタすることになります。書類を侮ってはいけません。
(2005年06月11日)
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