*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【研修会での会長あいさつ集?】

 1市7町という地区の社会教育委員連絡協議会の会長をしておりますが,毎年研修会を開催していますので,会長あいさつが逃れられません。定番のパターンがありますが,どこか訴えるものを盛り込りこめたらと思っています。自らの足跡を振り返り,新たなあいさつに向けて,歩みを進めなければなりません。その時々で,どのような問題意識を持っていたか,その流れを掴むために,過去のものを集めておくことにします。

**********《平成13年度》**********

 平成13年度の○○地区社会教育委員研修会を開催いたしました所,皆様方にはご多忙の中にもかかわらず,ご参集下さいましたことを,主催者として,とても有り難いことと感謝申し上げます。また,ご来賓の各位には,私どもの研修会にご臨席を賜り,心よりお礼を申し上げます。

 さて,開会に当たり,今回の研修会のねらいについて,簡単に述べさせていただきます。趣旨に述べてありますように,私たち社会教育委員が取り組むべき目的は,生涯学習社会の構築によるまちづくりにいささかの寄与をすることだと考えております。
 そこで,まず,町政のトップとして実際にまちづくりを推進して来られた○○町の○○町長様に,その喜びやご苦労の一端をお聞かせいただきたく,講演をお願いしております。まちづくりに関わる者に得難いヒントを示唆していただけることと思います。

 次に,午後からの分科会では,「青少年教育活動と社会教育委員の役割」というテーマで,研究協議を進めていただくことにしております。
 まちづくりという目的を達成するためには,具体的な目標を掲げなければなりません。当面する課題に取り組むことが最も相応しいことは言うまでもありません。まちづくりを考えるとき,「弱者にとってよいことがまちにとってもよいことだ」という原則に従うべきでしょう。では,まちの中で弱者は誰か? それは高齢者と青少年です。

 まちの人々全体を「老若男女」と呼びます。社会生活分野には「男女共同参画」という用語ができました。教育分野に学社融合という言葉がありますが,それに因んで,まちづくりは「老若融合」というキーワードで考えたらと思っております。○○地区からこの言葉を発信できたらと大きな夢を見ています。

 さて,高齢者については,介護による福祉活動が注目され,対応が進められています。この領域は社会教育分野から離れています。では,社会教育は何もできないかというとそうではありません。高齢者にとって大事なことは生きようとする気持ちであり,生涯学習による生きがいづくりという活動が意味を持ちます。

 では,青少年,子どもたちについてはどうでしょうか? 家庭や地域の教育力が眠り込んでいる所に,学校週五日制が刺激剤として注入されようとしています。子どもたちの周りで起こっている多様な問題行動を阻止するために,育成環境のリストラが始まったと考えるべきでしょう。この課題は個々の親や大人が担うべきものです。とはいえ,安眠状態にある大人たちを目覚めさせなければ,子どもたちの健全育成は望めません。そこに社会教育関係団体である育成組織のより一層の活動が期待されています。
 子どもたちの育成環境が整えばそれでいいのでしょうか? 育てられる子どもであれば,従来と何も変わりません。子どもにとって大事なことは育とうという意欲です。育ちたいという気持ちが持てれば,それを可能にしているまちを「この町で育ってよかった」と思うことでしょう。そんなまちにすることが,私たち社会教育委員の目的です。
 高齢者にとっての生きがいと同じように,子どもたちには育ちがいが大事です。そのために社会教育活動は展開されなければならないという大きな視点を,社会教育委員は求められています。

 本日の研修会では,青少年教育活動を一つの目標にして,単に育成環境を整えるに留まらず,子どもに育ちがいを持たせるために,地域の大人たちはどんな子どもに育って欲しいと思っているのか? 大人の願いを素直に子どもに伝えられるような大人自らの活動に向けた舵取りとはどのようなものか? を具体的実践例を通して研究することによって,まちづくりコーディネーターとしての社会教育委員の役割をいくらかなりと実感していただければと願っております。

 最後になりましたが,この研修会を開催するに当たり,ご後援をいただきました○○地区社会教育振興会,ご指導をいただきます○○教育事務所,会場のご提供をいただきました○○町,事務局業務を担っていただきました○○町教育委員会,その他関係各位に対しまして,厚くお礼を申し上げます。

**********《平成14年度》**********

 今年度の各種の研修会も滞りなく進み,最後の研修会になりました。これにて千秋楽ということですが,本日は最も身近な研修会です。ようこそご出席を頂きました。
 ご来賓の方々には,日頃より社会教育委員の活動にあたたかいご支援を頂いております上に,本日の研修会にご臨席を賜り,重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございます。

 さて,社会教育が今のところ背負っているテーマは,「生涯学習によるまちづくり」です。○○地区でも,それぞれに工夫を凝らして,その推進に邁進されていることと思います。そこで,本日は,自治公民館の活性化に格別の手当をされたりといった,さまざまなまちづくりを進めておられる○○町の○○町長様に,ご講演をお願いしております。貴重な実践事例をお聞かせいただけるものと思います。

 ものごとには旬というのがございます。社会教育において,今が旬であるというテーマには,いくつかのことがあります。その中でも,学校週五日制は歴史的な構造変革です。手直しでは済まなくなっており,今ボタンの掛け違いをすれば,後々歪みを残すことになる大事な時期です。私たち社会教育委員の責任は,一つのピークを迎えていると言うことができるでしょう。
 家庭二日制と捉えれば,家庭の構造改革であり,必然的に男女共同参画に向きあわなければなりません。地域二日制と考えれば,地域の構造改革であり,その先にまちづくりという目標が控えています。
 どんな子どもに育てたいか? それは家庭や地域の教育力のみならず,家庭や地域のあるべき姿の確認という課題になります。
 午後の分科会で,二つの実践報告をしていただき,協議を深めていただくことにしております。
 子どもたちの家庭や地域での暮らしを考えるときに,指標を定めておくことが大切です。それは,大人の方が子どもに向かって「アリガトウ」と言えるかということです。子どもが「アリガトウ」と言うような暮らしをすることは,お客様になるからです。子どもをお客様として迎えようとするから,余計なことをしなければなりません。大人が助かる,そのような役割を子どもが持つこと,それが家庭や地域で学ぶ生きる力だということです。

 本日の研修会が,皆様にとって一つの学びになることを祈念して,あいさつと致します。

**********《平成15年度》**********

 委員の皆様方には,お忙しい中,ご参集をいただきまして,ありがとうございます。さらに,ご来賓の方々には,常日頃より社会教育活動の推進にご尽力をいただき,本日の研修会にもご臨席を賜りご指導をしていただけることに,厚くお礼を申し上げます。

 さて,あるご家庭のお話をします。子どもの参観日に両親ともに出席しませんでした。参観日に両親は揃って出かけていたのです。両親が参観日のことを耳にしたとき,既に予定が決定していたのです。仕方がありません。子どもは考えました。親なら,子どもの参観日がいつあるのか予め確かめておくべきではなかったのかと。なぜなら,学期の始めに参観日の日程は決まっていたのですから。一方で,親は考えました。どうして子どもはもっと早く親にちゃんと伝えていなかったのかと。いちいち気をつけることなど無理なのだから。どちらの言い分に分があるでしょう。お互いのコミュニケーションミスをあげつらっても,事態は改善しません。自分に何ができたかを考えなければなりません。

 今回の研修会では,「生涯学習にもとづく健全育成」という目標を掲げました。現在の地域状況は,住民が世代毎に住み分けるという特徴があり,人のつながりが輪切りにされています。普段がそうであるなら,社会教育活動は世代をつなぐ仕掛けを補完する手だてを講じなければなりません。現状を見て,何ができるかを考えるのが,委員の役割です。
 地域二日制の導入は青少年を地域ぐるみで育てるきっかけにしようという意図をもっていますが,それは異世代間の人間関係を再構成することで実現可能になります。  生涯学習という一生をかけた学びの場では,子どもと大人は同じ「学び人」としてつながりを持つことができます。共に学ぶことは共に生きることにつながり,その一部として育成活動を位置づけることができます。育成しているつもりで実のところ大人も学びをしていますが,学びをしているつもりで実は育成をしていると考えることもできます。

 午前の研修は,「21世紀のまちづくり」という題で,社会教育に造詣の深い当○○町の○○町長に講演をお願いしております。まちづくりに欠かせない指針をご教示いただきます。さらに午後の二つの分科会では,健全育成に関わる具体的な実践活動の発表をしていただき,そこから見えるまちづくりのイメージを協議していただきます。
 この研修会は,社会教育の研修会ではなく,社会教育委員の研修会です。社会教育の可能性を考える委員として,研修を深めていただくようにお願いいたします。

 最後になりましたが,研修会を開催するに当たり,○○町教育委員会のご支援と関係の皆様のご労苦に,心より感謝をいたします。今年度の研修会は,この研修会をもって千秋楽になります。心ゆくまで学びを深めてくださることを願って,会長の挨拶と致します。

**********《平成16年度》**********

 平成16年度の○○地区社会教育委員研修会を開催いたしました所,皆様方にはご多忙の中にもかかわらず,ご参集下さいましたことを,主催者として感謝申し上げます。また,ご来賓各位には,常日頃より○○地区社会教育活動に関して多大なご支援を頂いており,さらに本日は私どもの研修会にご臨席を賜り,心よりお礼を申し上げます。

 さて,開会に当たり,今回の研修会のねらいについて,簡単に述べさせていただきます。趣旨に述べてありますように,私たち社会教育委員が取り組むべき目的は,生涯学習社会の構築によるまちづくりにいささかの寄与をすることだと考えております。

 そこで,まず,町政のトップとして実際にまちづくりを推進して来られた○○町の○○町長様に,その願いやご苦労の一端をお聞かせいただきたく,ご講演をお願いしております。まちづくりに少なからず関わる者に得難いご助言を教示していただけることと思います。
 次に,午後からの分科会では,「地域づくりを目指す社会教育委員の役割」というテーマで,研究協議を進めていただくことにしております。地域づくりという目的を達成するためには,具体的な目標を掲げなければなりません。当面する課題に取り組むことが最も相応しいことは言うまでもありません。

 数日前から,両親殺しというおぞましい凶行がいともあっさりと行われています。いずれも両親との折り合いが悪いという境遇が語られています。ニートと呼ばれる若者が現れているそうです。学校にも行かず仕事にも就かず,何をするでもない宙ぶらりんの境遇をかこっている若者です。親にすれば「だらしない,なんとかしろ」と責めたくなるのも分かります。でも,その前にすることがあります。親子の絆をしっかりと結ぶことです。

 虐待事犯の裁判で,裁判長が被告の女性に「そんなに辛かったら,どうして実の親に相談しなかったのか」と尋ねました。「そんなことをしたら,責められだけじゃないですか」と被告の母親は答えたそうです。年配の人はことある毎に,「今時の若い親は」と責めています。でも,そんな風に責め立てたら若い親はがんばろうという気になるでしょうか? 違うというのは分かります。
 親も世間も責めることで相手を思い通りにしようとしているような気がします。まずやるべきことは,お互いの気持ちを同じにして共感することです。そのためには,お互いを理解することが必要ですが,そこに第三者の存在が欠かせません。仲裁や仲人役になる役割が求められています。昔の地域で言えば,おじさんやおばさんという存在です。人をつなぐことの大事さを思い起こさなければなりません。

 地域づくりも同じです。地域づくりには多くの組織や人が関わっています。その人びとをつなぐことができれば,同じ目標に向けて参集してもらえれば,地域づくりは大きな前進を果たすことができます。社会教育委員の役割は,つなぐというキーワードによって解き明かすことができるはずです。今日の分科会は,人をつなぐということに焦点を合わせて研修をしてくださるようにお願いいたします。

 最後になりましたが,この研修会を開催するに当たり,ご後援をいただきました○○地区社会教育振興会,ご指導をいただきます○○教育事務所,会場のご提供をいただきました○○町,事務局業務を担っていただきました○○町教育委員会,その他関係各位に対しまして,厚くお礼を申し上げます。
 今日の研修会が実りのあるものになりますようにお祈りしております。

**********《平成17年度》**********

 本日,○○地区社会教育委員研修会に,皆様方にはご多忙の中にもかかわらず,ご参集下さいましたことを,主催者として感謝を申し上げます。また,ご来賓各位には,社会教育活動に関して常に多大なご支援を頂いており,さらに本日の研修会にもご臨席を賜り,心よりお礼を申し上げます。

 さて,開会に当たり,今回の研修会のねらいについて,お話しをしておきたいと思います。趣旨にも述べてありますように,現在人の価値観など意識面での変化が速く,社会システムが不適合を起こしてきて,まち,地域,家庭という生活構造の変革が不可欠な状況に至っています。
 例えば,社会教育の全国大会,九州ブロック大会のテーマは共に「地域づくり」であり,○○県大会では「変革期」を取り上げています。また○○ブロック大会では「家庭・地域の教育力」という具体的なテーマを取り上げており,もっとも身近な地域・家庭システムの再構築を目指す意図が見えています。

 このように,さまざまな規模の構造を作り直すことが,私たち社会教育委員が取り組むべき課題であると考えられています。
 そこで,まず,町政のトップとして実際にまちづくりを推進しておられる○○町の○○町長様に,そのプロセスの一端をお聞かせいただきたく,ご講演をお願いしております。
 次に,午後からの分科会では,「青少年健全育成に見るまちづくりの進め方」というテーマで,社会教育委員の在り方について研究協議を進めていただくことにしております。

 社教連会報第57号の巻頭に,文部科学省の三浦春政社会教育課長が「役に立つ社会教育」という一文を発表され,全国大会でも基調講演をされました。その内容はともかく,「役に立つ」というキーワードが特に印象に残りました。
 昨今,生涯学習という言葉に社会教育が飲み込まれているような状況があり,社会教育委員は生涯学習推進委員と改名せざるを得ないような雰囲気です。昨年の全国大会で「社会教育の原点に返る」ということがアピールされましたが,それを受けて今年は「役に立つ社会教育」へとつながっています。この大きな流れを受けて,私たちは自らの任務をどのように受け止めたらいいのでしょうか?
 大づかみをすれば,「自分のためになる生涯学習」,「みんなのためになる社会教育」と言うことができます。生涯学習だけでは個人の豊かさに止まります。学習をみんなのために生かすにはどうしたらいいのか,その課題が社会教育委員の役目であり,結果としてみんなの町,地域,家庭といった構造の再構築が実現すると期待されます。それこそが社会教育の原点であったということです。

 昨年のこの研修会では,皆様に「人びとをつなぐ」というキーワードをお話ししましたが,今年は人びとをつなぐことでみんなのためになる,それが社会教育であると重ねてお願いをさせていただきます。「みんなのためになる」,その気持ちの失われたことが,町や地域や家庭の力を失わせた根源であることを再確認して,委員としての研修をしていただきますようにお願いをいたします。

 最後になりましたが,この研修会を開催するに当たり,ご後援をいただきました○○地区社会教育振興会,ご指導をいただきます○○教育事務所,会場のご提供をいただきました○○町,事務局業務を担っていただきました○○町教育委員会,その他関係各位に対しまして,心よりお礼を申し上げます。
 今日の研修会が実りのあるものになりますようにお祈りしております。


 平成18年度は,一回り大きな地区研修会の開催当番が巡ってきました。これまでの会長あいさつではなく,実行委員長という立場でのあいさつになります。とは言っても,格調が高くなるものでもありません。これまでの流れを進めていきながら,大きな流れとの遭遇を楽しむことにします。

→:研修会での会長あいさつ集(その2)

(2006年05月07日)