*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【社会人基礎力?】


 毎月の定例の社会教育委員の会議で,委員二人が5分スピーチをしています。話題は各自自由に選んで,思うこと,感じること,考えることを話しています。今月はその当番が回ってきました。今回は少し含むところがあって,スピーチの機会を利用して提案をしようと目論んでいます。新聞の切り抜きをコピーして配る予定です。

 平成18年5月14日の読売新聞に,「社会人12の基礎力」という記事が載っていました。政府の「再チャレンジ推進会議」が社会人を評価する基準となる能力要素をまとめたということです。能力要素(その内容)を以下に列記します。

 1.主体性・・・・・・・・・・・・・・・・・(物事に進んで取り組む力)
 2.働きかけ力・・・・・・・・・・・・・・(他人に働きかけ巻き込む力)
 3.実行力・・・・・・・・・・・・・・(目的を設定し確実に行動する力)
 4.課題発見力・・・・・・・(現状を分析し目的や課題を明らかにする力)
 5.計画力・・・・(課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力)
 6.創造力・・・・・・・・・・・・・・・・・(新しい価値を生み出す力)
 7.発信力・・・・・・・・・・・・(自分の意見をわかりやすく伝える力)
 8.傾聴力・・・・・・・・・・・・・・・・(相手の意見を丁寧に聴く力)
 9.柔軟性・・・・・・・・・・・(意見の違いや立場の違いを理解する力)
 10.情況把握力・・・(自分と周囲の人びとや物事との関係性を理解する力)
 11.規律性・・・・・・・・・・・・(社会のルールや人との約束を守る力)
 12.ストレスコントロール力・・・・・・(ストレスの発生源に対応する力)

 この記事を見て,委員の皆さんはどのように感じられますか? 第一印象は,こんなことまで国のレベルで面倒見なければならないのかということでした。年配の人であれば,昔は社会の教育力がうまく機能して総合的に人を育てていたのに,近頃はあちこちの教育力が低下し,さらに個性化といった選別が過ぎてバランスを欠いてしまったからとお嘆きでしょう。一方で若い人であれば,昔とは違って世の中の規模が拡大し,求められる資質も多様かつ高度になっているので,今まで通りでは済まなくなったと反論するでしょう。いずれにしても,基礎力が何かを社会が共通認識する時機に入ったということでしょう。

 社会教育の領域では,地域や家庭の教育力が低下しているという認識があります。広く言えば社会教育力が問題になっています。そこで考えておくべきことは,教育が目指す目標の策定です。人が持つことを期待されている力が何かを絞り込むことです。だとすれば,この12の基礎力という提言はどのように受け止めればいいのでしょうか? 社会人向けだから関係ないと等閑視しているわけにはいきません。社会教育の目当てとして,何らかの対応を検討する必要があります。そこで,手始めに子どもたちの養育に翻案してみようと考えています。学校やPTAなどの健全育成に関わる指導者に協力をいただいて,子ども版12の基礎力をまとめることを今年度の活動にしてはどうかと提案します。

 わがまちでは「心豊かな○○の子ども」というスローガンを掲げていますが,心豊かであることの基礎になる資質が共通認識されていません。もちろん,学校では独自にめざす子どもの姿が目標化されていますが,地域や家庭に波及しているかという点では心許ない状況です。子どものことは学校にお任せということの表れです。そこで,地域や家庭が望む子ども像というものを独自に考えてみることも大切ではないかと思慮します。学校は学ぶところ,育てるのは家庭と地域,その協働を実現するためには,社会が期待する基礎力を整理し提示していくプロセスが,学社融合を稼働することになるはずです。

 以上は皆さんにお話しする部分です。その他に密かに抱えている個人的な楽しみがあります。それは記事が目についた一番のポイントですが,12という数字です。基礎力を列挙する考察の結果として,たまたま12になったのかもしれません。10ではなくて12である意味とは? そこが最も知りたい関心事です。以前から,子育てについて12の指針を提案してきましたが,そこでは12という数字に大事な意味を持たせてきたからです。12でなければならない理由を背景として想定しています。総合的な資質要素は12でまとめることが必然であると考えてきたので,この社会人12の基礎力を,後日分析してみようと考えています。
(2006年05月19日)