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【PTA総会での祝辞4?】
第53号,第72号,第86号の「PTA総会での祝辞」からさらに1年刻みが重なりました。今年も現会長から直々の来賓祝辞の依頼がまいりました。前日まで何をお話ししようかと気になりながら,ぼんやりして日を過ごす始末です。年齢のせいでしょうか,緊張感が薄れてきたようです。結局,前夜に話材を決めて,朝になってあいさつに構成しました。何ともいい加減なことです。以下は,その再現です。
おはようございます。本日は総会が開催されましたことをお喜び申し上げます。ただいまご紹介をいただきました○○です。皆様にお話をする機会をいただきましたので,PTAOBとして一つのメッセージをお話ししたいと思います。
今,子育ての場では「食育」という言葉が聞こえております。PTAでも,それに関連した活動が進められているようです。ところで,食育とは身体の育ちに関わることです。子どもの育ちには,心の育ちも欠かせません。心は人との温かな触れ合いによって育ちます。そこで,食べる食育をさらに広げて,触れあうという「触育」を目指していただくようにお願いしたいのです。食育は食物と優しく触れあうことであり,人との触れ合いにまで広げれば,「触育」と考えることができます。
ところで,皆さんは Dick Bruna というオランダの絵本作家をご存じだと思います。ウサギの登場する絵本です。大人はその絵本を初めて見たとき,何か違和感をおぼえます。しかし,子どもにはとても受け入れやすい絵本です。大人と子どもの間には,感性の違いがあるのです。大人には何か変と思わせながら,子どもには安心感があるのは,絵本に仕掛けがあるからです。どのような仕掛けがあるのか,学んで欲しいのです。
子ども集団の中では,意識しないままにイジメの形が現れることがあります。意識的に悪口をぶつける場合にはイジメと分かりますが,見て見ぬふりをするという隠れたイジメも起こります。シカトといわれる無視することです。ところで,無視することをどうしてシカトというのでしょうか? シカトは漢字で書けばどういう字になるのかご存知ですか? 花札という遊びの札があります。あの花札には紅葉の絵札があり,そこに鹿が描かれています。その鹿は横を向いているように描かれています。つまり,鹿の頭がそっぽ向きであり,鹿頭=シカトというわけです。ご家庭で子どもが話しかけてきたとき,仕事をしながらそっぽを向いて聞いていませんか? やがて子どもは話しかけなくなります。子どもとまっすぐ向き合っていないからです。
ブルーナのウサギの絵本の仕掛け,それはウサギの顔がすべて正面を向いていることです。明らかに横向きであるはずなのに,絵本では正面向きになっている,それが大人には違和感をもたらすのですが,子どもにとってはウサギがいつもこちらを向いていることが心地よいのです。蝕育という触れ合いは,幼いときは直接抱くことになりますが,大きくなってくると真っ直ぐに向き合うという形になります。
今の子どもたちは視聴覚という世界に住んでいて,触覚という世界がとても貧弱になっています。また,人と人が直接触れあうということ,真っ直ぐに向き合うという体験が細くなっています。触れ合いということの大事さを再確認しなければなりません。その機運の兆候として「食育」ということが言われているのです。食物だけではなく,人とも優しく触れあうという「触育」を目指した活動を意識して進めていただくことをお願いして,私からのメッセージといたします。
(2007年04月29日)
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