*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【生きがい探し?】

 生涯学習の進路の一つとして,生きがい探しという分野が考えられています。生涯学習は「私の学習」であるという意味づけに従えば,ごく自然な想定です。ところで,生きがい探しといっても,その内容,あるいは段階についてはさらなる類別が可能です。次のような例が目にとまりましたので,メモしておきました。

 1.自己啓発などの自分探し
 2.人間関係の構築などの仲間探し
 3.自己の存在証明ともいうべき役割探し

 それらしく3つが取り上げられると,確かにそうだな,とうなずかされます。しかし,どうして3つなのか,この3つで済むのか,他には考えられないのか,という疑問が浮かんできます。そこを何らかの形でクリアしなければ,論点が不完全になり,指針めいた結論を探り出しても,バグが含まれてしまいます。常に全体を把握しているという確信がなければ,けりがつけられないのです。その点で,上記の3つの類別は,不完全ということになります。

 そこで,生きがいを考えるために,先ずは生きるということを考えることにします。

 自分はどのように生きていこうとするのか?
   それに対する指標は1.自己啓発です。
   具体的には,自らの可能性を追求し続けることです。
 自分はどこで生きているのか?
   それに対する指標が2.人間関係です。
   具体的には,他分野の人と交流することです。
 自分は何のために生きているのか?
   それに対する指標が3.存在証明です。
   具体的には,社会的な役割に参画することです。

 以上の3つの他にさらに,

 自分はいつ生きているのか?
   それに対する指標が思考成熟です。
   具体的には,知恵の構造化を図り伝達することです。
 自分は誰に生かされているのか?
   それに対する指標は自己確認です。
   具体的には,自らを相対化し共存を喜ぶことです。
 自分はなぜ生きようとしているのか?
   それに対する指標は大志設定です。
   具体的には,よりよき明日のために貢献することです。

 新しく3つのことを追加することによって,生きること,すなわち生きがいの総体的な指標を設定することができます。

 生涯学習活動が生きがい探しにつながるためには,以上の6つの指標を意識的に組み込んだプログラムを作り上げなければなりません。従来のような狭い意味での学習活動に止まっていると,生きがい探しとはかけ離れてしまいます。生涯学習活動を考えるとき,学習成果を生かすという視点が追加されるべきであるという指摘がなされていますが,それは学習だけでは意味がないと直感しているからです。何となく他のことも考えなければいけないということではなくて,上記の6つの指標を想定すれば,学習活動の全体構成が明確になり,生涯学習活動の進展を効果的に推進することができるはずです。

(2007年05月06日)