*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【PTA総会での祝辞5?】

 第53号,第72号,第86号,第111号の「PTA総会での祝辞」からさらに1年刻みが重なりました。今年も総会3日前に現会長から直々の来賓祝辞の依頼がまいりました。これまでは,型通りの祝辞ではなく小さなメッセージをお話してきたのですが,それが意外に好感を持って迎えられているようで,重ねてのご依頼です。というのは,こちらの勝手な思い込みで,先代の会長というだけのことに過ぎないのでしょう。いずれにしても,依頼されれば受けて立つ性分なので,引き受けてしまいました。例によって,前日寝る前にネタを思い出しながら構成した一夜漬けの祝辞は,以下の通りです。

 おはようございます。本日は総会が開催されましたことをお喜び申し上げます。ただいまご紹介をいただきました○○です。皆様にお話をする機会をいただきましたので,PTAOBとして皆様方の今年一年の活動の中で気に留めておいていただきたいメッセージをお話ししたいと思います。

 小学校,学校です。学ぶところです。教え習う教習所ではありません。まずそのことをきちんと意識しておいてください。学ぶところ,何を学ぶのでしょう。いろいろな学科ですね。教える側からいえば,教科です。学科は科を学ぶことです。では,科とは何のことでしょう。科という字は,禾偏に斗と書きます。禾は穀物を意味しています。斗は升で量るという意味です。そこで,科とは穀物を升で量るということです。あるものを物差しを決めて量り分けることです。ご飯を炊くときに,お米を升で量り,5合炊くということをします。数字が出てきますが,数字を扱うのが算数です。
 メロンは果物ですか,野菜ですか。果物屋さんにあるから果物ですね。でも分類上は野菜になります。果物は木になるものです。リンゴの木,柿の木,ミカンの木があります。いろんな食物がある中で,木になるかならないかという基準で分けて,木になるものを果物と呼ぶことにしたのです。分けることで分かります。理科になります。一般には,分かるためには分ければいいのです。分けるためには,物差しや基準が必要になります。それを学ぶのが学科なのです。
 言葉を覚えはじめの子どもに,黄色いチョウチョを見せて,覚えておくようにいいます。そのチョウチョを他の蝶の中に紛れ込ませます。さっき見せたチョウチョはどれかなと尋ねると,すぐに分かる子どもと分からない子どもがいます。分かる子どもは,黄色という言葉を知っている子どもです。見せられたチョウチョを,黄色いチョウチョと覚えます。だから見分けがつきます。一方で,黄色を知らない子どもは,チョウチョとしか覚えられません。チョウチョの中ではチョウチョは見分けることは不可能です。言葉を知らないと見ても記憶できないし,見分けもできないのです。
 言葉は物事を分ける手段であり,分かる手段なのです。言葉は母国語といいます。母の言葉です。どうぞ,お子さんにたくさんの優しく美しい言葉を教えてやってください。賢い子どもというのは,言葉を知っている子どもです。言葉を伝授することを意図して,PTA活動や家庭でのしつけを進めてくださるようにお願いをして,私からの総会メッセージといたします。本日はおめでとうございます。
(2008年04月30日)