*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【合同会議の協議テーマは?】

 本町では,毎年年末に,社会教育委員と教育委員の合同会議を開いています。協議のテーマを隔年でお互いに持ち寄って,共通理解を図ったり,提案をしたりしています。これまでの会議の結果として,いくつかの事業が実現しました。今年は,双方の委員の日程調整が整わずに,年始の開催になりました。
 今年は社会教育委員の方から協議を持ち出す順ですので,テーマについて予め社会教育委員の会で検討しました。今年度から委員の半数が交代しましたので,教育委員とどのような協議をしたいのか,希望を尋ねてみたいと思ったからです。そのことから,委員としての問題意識が伺えるのではないかという期待がありました。
 最初に出てきた課題は,以前にこの会議の場で話題になった「モンスターペアレント」について,学校の外に支援の機能が必要ではないかというものでした。別の会議の場では,学校側の対応が拙いのではといった意見に封殺されたということです。教育委員はこの点についてどのように考えるか,意見交換してみたいという意向でした。
 次に出てきた課題は,近年社会教育関係団体の中には,加入者が減少していたり,少ないままに増える兆しがないといった状況があるが,教育行政として見過ごしにしていていいのか,何らかの支援をしなくてもいいのかということでした。社会教育委員として社会教育関係団体に対する責務があるのではと,問いかけられたことがあったそうです。この点については,団体に対して補助金を出しているが,その組織のあり方に口出しをすることは許されないという社会教育法の精神が確認されるべきです。ただ,組織の活性化と加入者の増加が相関していると判断されるなら,支援策を考える余地はあります。
 もう一つの課題は,親の養育について格差が現れているというものです。経済的な格差もさりながら,親としての養育意識や未熟さが大きいということで,様々な支援に関する情報を知らないという状況に危惧があるとのことです。養育支援のあり方に対する再考が求められました。
 このような具体的な話題を協議するとして,個別に扱っていては,焦点が散漫になりそうです。協議の核を設定する必要があると感じましたので,「人のつながりを広げるにはどうすれば?」というテーマの設定を提案しました。モンスターペアレントに対しては先生と親のつながりが成り立っていないこと,団体への加入減については余計なつながりを持とうとしない風潮,養育支援についてはつながるべき人とつながりが取れていないことです。いずれも人のつながりの不完全さが根源的な課題であると考えることができます。
 最近の世情を貫く問題として,人とのつながりが希薄になっていることがあります。社会教育の最重要な基盤整備は,人をつなぐことであると考えています。社会教育計画書の指針を「知り合う,助け合う,学び合う」として,今年度から「どうぞが似合う○○町」という目標を掲げています。どうぞという1つの言葉によって,人とのつながりを持とうとする意思を喚起したいと願っています。人とのつながりをありがとうという形で持とうとするから,つながりは収縮していきます。社会はお互い様が原則ですから,お互いがありがとうと言うためには,お互いがどうぞと言わなければなりません。同時に,どうぞという言葉が先にあることが必至です。
 社会教育のみならず,教育全般について,人を社会化することは重要な目標であるはずです。この点について,教育委員の覚悟と識見を聞いてみることもいいのではと思っています。
(2009年12月28日)