*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【研修報告書の序文?】

 各年度内でいろんな規模の研修の機会があります。調査研究をする役割も社会教育委員には求められているので,できるだけ出席するようにして,研修の結果を報告書としてまとめるようにしています。報告を義務づけることで,委員の積極的な参加が期待されます。報告書は町長及び教育委員に配布されます。その報告書の巻頭に会長としての「はじめに」という一文を添えています。格別な意図はないのですが,これまでの一文をまとめてみました。毎年書いていると,何を書いているのか分からなくなります。決まり文句は毎年繰り返していますが,流れを眺めたくなったということにしておきます。

*******【平成14年度】*******

 21世紀という人生において希有の節目に立ち会って,100年の計を描いた高揚も落ち着きを見せ始めている中,その21世紀を担う次世代に対する20世紀組からの支援体制は,教育システムの第3次改革によって新しい局面に入りました。
 ○○町が目指す生涯学習によるまちづくりは,第3次教育改革を受けて,より一層の進展が求められています。まちづくりは人づくりと言われますが,まさにその人づくりの概念が変わろうとしています。
 ○○町における生涯学習活動は,行政当局による不断のご支援と町民自らの発意によって,堅実な歩みを続けていることは大変に喜ばしいことです。この活力をまちづくりにつなげるためには,次なるステップに止揚することが必要となります。
 教育改革,特に学校週五日制は,町に対して週二日制をもたらします。○○の子どもという認識によって,大人と子どもがより密接な関係を築くことができれば,町民の中に堅固なネットワークを構築することが可能になります。まちづくりは学習する人々がお互いに温かな関係を結び合うことから始まります。

 私ども社会教育委員は,学習活動の推進を通じて町民一人ひとりの幸せの実現にいささかなりともお役に立てればと願いながら,時代の息吹を学習活動に織り込むように微力ながら邁進しております。
 そのためには,社会教育委員自らが学習を実践する必要があります。大所高所といえば大げさですが,潮の流れを読むマスト上の見張り番として,見聞を広めることも委員の資質の向上につながるものと思慮いたします。

 全国,九州,福岡ブロックという大きな器に参加することによって,先進地の知恵を学ぶことは,今後の○○町における社会教育活動の推進に生かされるはずです。お陰を持ちまして,私どもは研修会に参加する機会を賜り,委員一人ひとりが得難い研修をすることができました。厚くお礼を申し上げるとともに,ここに研修の一端をご報告させていただきます。

*******【平成15年度】*******

 歴史は繰り返すといわれていますが,その周期は尺度の選択で変化します。経済における景気の波,風俗流行の波,思想傾向の波など,相互に絡み合いながら時代の波を撚りあげていきます。繰り返す波を想定する比喩はそれなりの効用もありますが,ミスリードに対する留意もしておくべきです。歴史は決して元には戻らないのです。
 ○○町では生涯学習によるまちづくりをめざし,そのための総合計画は後半期に入り,それなりの成果を区切りとしてまとめる段階を迎えようとしています。計画は時代を設計する一つの周期です。その成果は次の波の初期条件として,新しい局面を切り開く出発点になります。その意味で○○町の歩みも進展することが可能になります。
 まちづくりは人づくりといわれますが,まさにその人づくりの概念自体が変わってきています。世情のありようは,その変化が必ずしも望ましい進展にはなっていないかのような様相を示しています。心の豊かさというスローガンが喧伝されること自体心の貧しさの証明になるというジレンマを抱え込んでいます。
 このような中,○○町における生涯学習活動は,行政当局による不断のご支援と町民自らの発意によって,堅実な歩みを続けていることは大変に喜ばしいことです。この活力をまちづくりにつなげるためには,次なるステップに止揚することが必要となります。
 さらに,時代を担う青少年に対しては,教育改革,特に学校週五日制が地域社会に対して週二日制をもたらすという激変に直面しています。○○の子どもという認識によって,大人と子どもがより密接な関係を築くことができれば,町民の中に堅固なネットワークを構築することが可能になります。まちづくりは学習する人々がお互いに温かな関係を結び合うことから始まります。

 私ども社会教育委員は,学習活動の推進を通じて町民一人ひとりの幸せの実現にいささかなりともお役に立てればと願いながら,時代の息吹を各層の学習活動に織り込むように微力ながら邁進してきました。
 そのためには,社会教育委員自らが学習を実践する必要があります。大所高所といえば大げさですが,潮の流れを読むマスト上の見張り番として,見聞を広めることも委員の資質の向上につながるものと思慮いたします。

 全国,九州,福岡ブロックという大きな器に参加することによって,先進地の知恵を学ぶことは,今後の○○町における社会教育活動の推進に生かされるはずです。お陰を持ちまして,私どもは研修会に参加する機会を賜り,委員一人ひとりが得難い研修をすることができました。厚くお礼を申し上げるとともに,ここに研修の一端をご報告させていただきます。

*******【平成16年度】*******

 未知の領域に踏み込んだとき,人は呆然と立ちすくみます。自分がどこに立っているのか,どちらに向かえばよいのか,どんな目標を見つければいいのか,あらゆる行動指針を喪失しているからです。人は環境から情報を得なければ動けません。最も手短な方法は,既に歩みを進めている人を見つけてついていくことです。
 社会教育の推進を委任される委員は,ある日突然にその職に就きます。暗闇に飛び込んだようなものです。座していては職務が果たせませんし,役職を無為に占有しているわけにもいきません。少しでも活動に関わるためには,同士を見習うことが不可欠です。
 幸いなことに,我が○○町では社会教育委員の研修にご理解を頂き,全国大会と九州ブロック大会に各5名の委員の出席をご支援頂いて参りました。任期が2年なので,任期中に両方の研修が可能になるというご配慮でした。ところが,近年の予算逼迫のために,今年度から参加人数が半減されるという仕儀に至りました。任期中にどちらかの研修会に参加できるという最低限の措置です。
 この貴重な研修の機会を十分に生かすために,出席した委員諸氏は真摯な学習をして参りました。その一端を報告書という形式でまとめさせて頂きました。学び取ったことは報告されていることに留まらず,無形の自信や進むべき道を見極める眼力として委員の資質に組み込まれていると信じます。

 研修の機会を頂いたことへの感謝を込めて,報告書を提出致します。なお,福岡ブロック社会教育委員研修会の報告も添えてあります。

 今後とも,○○町の社会教育委員へのご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。

*******【平成17年度】*******

 わがまちの社会教育委員は,平成17年度に定数の半数である5名の委員が交替をしました。それぞれが社会教育の現場で活躍をされている方々であり,新風を吹き込んでいただけるものと期待をしています。
 ところで,社会教育委員という役職に課せられた責任は,独任制を基本としていることから,個々の委員がそれぞれに専門性,独創性にあふれた活動を展開することによって果たすことになります。そのためには,何ができるかという見極めをすることが委員としての第一歩になります。
 幸いさまざまな社会教育研修の機会があり,各委員さん方は積極的に参加していただきました。これも,教育委員会のご配慮により厳しい行財政状況の中で,委員の研修にご理解をいただいたお陰です。この一年で新任の委員さん方には素晴らしい発見をしていただき,ベテランの委員さん方には社会教育の深さと喜びをいっぱいに蓄えていただくことができました。
 委員さん方による研修の成果を報告書という形式でまとめました。振り返りまとめる作業を通して学び取ったことは報告されていることに留まらず,無形の自信や進むべき道を見極める眼力として委員の資質に組み込まれていると信じます。

 研修の機会を頂いたことへの感謝を込めて,報告書を提出致します。なお,福岡ブロック社会教育委員研修会の報告も添えてあります。

 今後とも,○○町の社会教育委員へのご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。

*******【平成18年度】*******

 太陽と緑の町を目指している○○町では,厳しい財政の中でありながら豊かな環境整備が進められてきました。次の段階として,豊かな人づくりが期待されています。社会教育の分野は生涯学習の推進と相まって,町民の生きる力が最大限に発揮できる体制の整備に向けた活動を推進しなければなりません。
 時代背景の動きは予想以上に速く,社会教育の活動はともすれば後手に回っている感があります。町民のニーズに応えられているのかという反省と同時に,今何が必要な活動なのかという課題を常に突きつけられています。
 わがまちの社会教育委員は,委員の専門性や独創性を基盤にして,衆知を集める委員会活動を展開しているところですが,その過程には学習による資質の向上も欠くことはできません。社会教育活動に関する研修の機会を最大限に活用することが委員に課せられた大事な務めになります。
 各委員さん方は研修会に積極的に参加していただきました。これも,教育委員会のご配慮により厳しい行財政状況の中で,委員の研修にご理解をいただいたお陰であると深く感謝いたします。この一年で委員さん方はさらなる研鑽を積むことができました。

 社会教育委員によるこの一年間の研修の成果を報告書という形式でまとめました。振り返りまとめる作業を通して学び取ったことは報告されていることに留まらず,社会教育活動の意義を深く理解し,今後の進むべき道を提示する指導力として委員の資質に組み込まれていると信じます。

 研修の機会を頂いたことへの感謝を込めて,報告書を提出致します。

 今後とも,○○町の社会教育委員へのご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。

*******【平成19年度】*******

 社会教育の振興は,まちづくりのソフト面に大きく関わっています。大事なものではあるのですが,意識しないと見えない無形のものであることから,認知されにくいために当てにもされないという面があります。そのような特質があるため,社会教育委員も自らの責務を明確に把握しかねているのが実情です。
 町ではさまざまな社会教育分野の活動が実施されています。それらの活動を意味あるもの,価値あるものとして位置づける指標を提案・提示していくことが,当面の社会教育委員に課せられている計画立案の中心的課題です。
 個別の活動をまちづくりという大きな視野の中で配置し支援することが,社会教育委員には期待されています。そのためには,可能な活動に関する情報を集約し選択し,積極的の取り込んでいくことも考えなければなりません。社会教育活動に関する広い知識が求められます。
 幸いさまざまな社会教育研修の機会があり,各委員さん方は積極的に参加していただきました。これも,教育委員会のご配慮により厳しい行財政状況の中で,委員の研修に対する支援の意義をご理解いただいたお陰です。この一年で新任の委員さん方には素晴らしい課題発見をしていただきました。
 委員さん方による研修の成果を報告書という形式でまとめました。研修を振り返りまとめる作業を通して学び取ったことはここに報告されていることに留まらず,無形の自信や進むべき道を見極める眼力として委員の資質に組み込まれているものと信じます。

 研修の機会を頂いたことへの感謝を込めて,報告書を提出致します。
 今後とも,社会教育委員へのご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。

*******【平成20年度】*******

 昭和24年に社会教育法が制定されてから,今年は60年目に当たりますが,その社会教育法が改正されました。これまで地道に進めてきた社会教育活動のテーマが教育基本法の改正によって条項として取り入れられたために,社会教育法の改正は大きなものではありませんでした。
 一方で,生涯学習によるまちづくりという動きが重なってきたあおりを受けて,社会教育はその活動力が鈍くなってきたという側面があります。しかしながら,生涯学習という住民主体の活動力は,期待された効果を発揮できていません。個別の学習活動が必ずしも社会的な活力にはなり得ないということが明らかになってきて,改めて社会教育への見直しが行われ始めました。学習を社会力として結集する仕組みを作るのは社会教育のほかにはないのです。

 ○○町ではさまざまな社会教育分野の活動が実施されています。それらの活動をまちづくりに向けて価値あるものに導く指標を提案・提示していくことが,社会教育委員に課せられている計画立案の中心的課題です。
 個別の活動をまちづくりという大きな視野の中で配置し支援することが,社会教育委員には期待されています。そのためには,可能な活動形態に関する情報を集約し選択し,積極的の取り込んでいく計画を企画しなければなりません。社会教育活動に関する広い識見が求められています。
 幸いさまざまな社会教育研修の機会があり,各委員さん方は積極的に参加していただきました。これも,教育委員会のご配慮により厳しい行財政状況の中で,委員の研修に対する支援の意義をご理解いただいた賜物です。
 委員さん方による研修の成果を報告書という形式でまとめました。研修を振り返りまとめる作業を通して学び取ったことはここに報告されていることに留まらず,無形の自信や進むべき道を見極める眼力として委員の資質に組み込まれているものと信じます。

 研修の機会を頂いたことへの感謝を込めて,報告書を提出致します。
 今後とも,社会教育委員へのご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。

*******【平成21年度】*******

 昨年度は社会教育法が制定されてから60年目に当たっていましたが,人生にたとえると還暦を過ぎたことになります。新しい時代に馴染むように社会教育法も装いを新たにしました。社会教育活動もいろんな面で改革をすべき節目であるという認識を持つ必要があります。
 社会教育とは何であったかという原点返りの議論も行われていますが,それは形の振り返りではなく,何を目指していたかという目的の再確認でなければなりません。ともすれば,社会教育は学校教育を補完する位置に置かれていく傾向にありますが,社会教育はそれ自体としての目指す目的を持たなければなりません。
 今の社会が抱える課題に向かって,どのような教育が不可欠であるのかという信念を持たなければ,明日につながるはずの教育活動はできません。社会教育委員は実践主体ではありませんが,社会教育の目的を社会教育計画書という形で常に提示していくことが期待されています。そのためには,社会教育活動に関する広い識見が社会教育委員には求められています。
 今年度は委員の半数が新しく委嘱されました。委員組織という面からは,新しいメンバーによって新しい思考が導入されることは歓迎すべきことです。新旧の社会に関する感覚が融合できることは,必ず良い結果を生み出すものと信じます。
 さまざまな社会教育研修の機会があり、各委員さん方は積極的に参加していただきました。これも、教育委員会のご配慮により厳しい行財政状況の中で、委員の研修に対する支援の意義をご理解いただいた賜物であり,心より感謝いたします。
 ここに,委員さん方による研修の成果を報告書という形式でまとめました。研修を振り返りまとめる作業を通して学び取ったことは、無形の自信や進むべき道を見極める眼力として委員の資質に組み込まれているものと信じます。

 研修の機会を頂いたことへの感謝を込めて、報告書を提出致します。
 今後とも、社会教育委員へのご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。

*******【平成22年度】*******

 町では第四次総合計画の後期基本計画を策定しています。そこでは,前期計画の検証から見えてきた課題を解決する方向性として,行政と町民の共同が必至であるという認識が基本的な了解になっています。これまで以上に,町民によるまちづくりという機能の充実が急務であり,その体制の整備に向けた社会教育の役割が一層大きく期待される状況です。住みたくなる,住んでよかったという町は,自分の手で創らなければ,誰も創ってはくれません。総合計画という町の目標に向けて,行政と町民とが共に汗を流す実践方策を企画し推進する一翼を社会教育も担わなければなりません。
 余暇時間の過ごし方に引きずられている感のある社会教育は,人が幸せに生きていくために解決しなければならない切実な課題に目を向けるべきです。社会教育委員は,課題と解決の道筋を調査し研究するために,研修の機会を与えられています。
   財政の引き締めにより,社会教育委員の研修については,16年度から全国もしくは九州大会に毎年5人の委員の出席が予定されていましたが,本年度からは九州大会に全員という予定に縮小をされました。全国大会は距離的にも内容的にも遠いという判断がなされたと思われます。(国の事業仕分けで問われた「1番でなければ駄目ですか,2番では駄目ですか」という意向と類似しています。)
 研修の機会は全国を除いても,九州大会をはじめとして,県大会,福岡ブロック研修会,糟屋地区研修会が,毎年開催されます。お陰様で,社会教育委員は最大限の努力を払って調査研究活動を行うことができました。委員一人ひとりがどのような形でまちづくりに関わっていけばよいのか,今後の活動の中に生かされることと思います。

 研修の機会をいただいたことへの感謝と,委員の義務として,報告書を提出いたします。
 今後とも、社会教育委員へのご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。

*******【平成23年度】*******

 3.11。歴史的な節目として,昨年の3月11日は,特別な日になりました。社会教育計画書の冒頭に「無縁社会」という世情を表すキーワードが登場したことを記しているとき,一挙に方向逆転を促す揺り返しが訪れるとは想定外のことでした。昨年末に行われた恒例の一年を表す漢字では「絆」が選ばれました。無縁から絆に大転換です。
 昨年度の報告書では,社会教育とは何であったかという問題意識から原点返りを呈しているが,何を目指してきたかという目的の再確認であるべきであると述べていました。社会教育は社会による社会のための社会の教育であると考えると,目指すべき社会のイメージを描き出さなければなりません。委員の任務である社会教育計画書は,目指す社会を想定しなければ策定できません。その目指す社会,そこでは絆があふれているはずです。
 絆という字を選んで期待しても,一人一人が自らの絆を意識して持とうとしなければ,実現できません。人の生きる力が発揮される方向を少しばかり修正するような教育,絆を結ぶように意識を向ける教育,それが社会教育の役割と考えることができます。
 社会教育の領域では,ひと・もの・ことをつなぐというテーマが陰に陽に現れて議論されています。情報化グローバル化といった世界は人がつながるために作り上げられてきたはずですが,どこか方向がずれていたようです。大まかにいうと,これまでは同じ願いや趣味,価値観を持つなど,同質の人を結びつけてきました。一方で,異質なものとは断絶することになり,無縁であるならまだしも,やがて排除敵対する意識も現れてしまうまでになっています。
 社会教育が目指す絆社会,有縁社会は,異質な人をつなぐというものでなければなりません。こどもと大人,若者と高齢者,女性と男性,みんな違ってみんないい,あらゆる違いのあるものがつながる,そのような社会に導く計画が,目指す計画です。そのためには,社会教育活動に関する広い識見が社会教育委員には求められています。

 社会教育の研修に参加することで,委員としての資質を向上するだけではなく,目指す社会のイメージを確かめることができます。そのような大切な機会を与えていただいたことに深く感謝致します。
 ここに,委員による研修の成果を報告書という形式でまとめました。研修を振り返りまとめる作業を通して学びが完成します。同時に,社会教育が今何をしようとしているのかを御理解いただく一助にしていただければ幸いです。

(2011年01月06日,2012年02月23日)