記事No | : 2384 |
タイトル | : Re^3: サンダカンの海・・・父と母 |
投稿日 | : 2015/10/22(Thu) 01:23:09 |
投稿者 | : 桃青 |
「死後の世界へ一つだけ思い出を持っていけるとしたら、どの思い出を持って行きますか?」
以前、こんな問いかけがテレビ、週刊誌等で流行ったことがあった。
その時、私の「おかあさんは?」という問いかけに、母はこう答えた。
「春の山の田で、赤ん坊だったお前を畑の脇に寝かしつけてね。
おじいさん(舅)と、畑仕事していた、あの時。かなあ。
まだ、お前の父親の横着もはじまってなかったし、あの頃は本当に良かった。」
母は自分が子供の頃の思い出話をよくしていたので、あの世にもって行きたい一つの思い出も、当然、子供だった母と母の両親の思い出かと予想していたのだが、意外だった。
父については、良い話を聞いたことが無かったので、父に関しては嫌な思い出ばかりで、父と暮らしていたころのことなど思い出したくもないのかと想像していたのだが・・・。
母にも新嫁さんとしての幸福な日々が確かにあったのだ。
春の長閑な里山を背景に、ひばりの鳴く田地で、自分を可愛がってくれる舅と好きな畑仕事をする母もまた、サンダカンの海で遊ぶ少女のように、まもなく悲しい運命が待ちうけていることを知らなかったのだ。
初の内孫である私を父の両親である祖父母も同居していた父の弟もずいぶん愛しんでくれたようなので、私を傍に遊ばせて畑仕事する母の幸福そうな笑顔が眼に見えるようだ。
母は何歳だったのだろうと、数えてみたら、この時、24歳。
父は30歳。