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日本クモスケ(1999GW・対馬 壱岐)その2

オメガ塔



韓国展望台を後に、比田勝の集落を抜けてから県道を更に南下し、、、、
舟志湾に差し掛かったあたりで、ソレが姿を見せました。
コ、コレですかぁ!!!
なんとも不自然に、そして思わずキョーフを覚えるほどにヒョロヒョロっとそびえ立った紅白の棒!
ハイッ! これがオメガ塔ですよぉ! 的な案内のタグイは全く見当たらないものの、、、
そうぢゃないと言うのであれば、このグロテスクなモノは他にありえません。
つ、ついに現れたな!! まさにコレがオメガ塔に違いない!
もし隣に東京タワーがあれば、それを激しく見下ろす事になるであろう、地上高445mものタワーなのです。
ただし、東京タワーのようにドッシリと大地に足をフンバっている構造ではなく、ホントに一本の棒ですよ。
これだけのモノが、さすがに本体のみで自立するのはムリなのでしょうね。
本体は、四方八方に張り巡らされたド太いワイヤーで支えられているんです。
中には海を通り越して、湾内の対岸の陸地にまで延びているヤツまであるほどですよ!!
何ら飾りっけも無いクセに、アゼンとするような存在感・・・・・
けっして華やかなソレではなく、やたらめったらシュールな光景でした。

近くにビルなどがあれば高さの比較も出来ましょうけれど、あいにく、そういうモノは一切ありません。
事情を知らなければ、コレが東京タワーよりも高いモノだとは誰が想像できましょうか。
でも、ワタクシは事情を知っていましたですとも。知っているどころかコレに会いたくて来たんですって。
もっと間近にニジリよってみたい気はありましたが、塔への道はゲートによって閉鎖され、これ以上の接近はムリでした。
これの正体は海上保安庁が設置した電波塔で、その電波は航行する船舶の位置確認に利用されていたのだそうです。
すでに衛星を使ったGPSに役目を取って代わられて引退し、近々に解体されるサダメとの事でした。
あぶないあぶない。どうやらギリギリに間に合った感じです。
実際、この直後には、土台を残して解体されてしまったそうですから。

ずぅぅっと見つめていると、なんだかタマシイを吸い取られてしまいそうな錯覚すら覚え、、、
とにかく見たぞとココロに言い聞かせつつ、ソソクサと退散する事にしました。
再び南を目指して走り出したものの、、、
行けども行けども、山々のテッペンの頭越しに、まるで見下ろすように姿を見せるオメガ塔・・・・
自らの高さを誇示するような「上から目線」的な存在感に、なんだか背筋が寒くなってくる思いすら感じました。
「東京タワーだぁ? ビルと比べるだぁ? 話にならん!」
そんな誇りに満ちた姿がバイクのミラーから消えたのは、果たしてどれだけ走った後だったでしょうか。


オメガ塔から逃げるように戻った先は、再び一人ぼっちのキャンプ場でした。。
出かけているうちに新しく張られたテントの姿は無く、、今夜も孤独との戦いになる覚悟が出来た頃・・・
夕暮れ時になってから、1台のスクーターがサイトに駆けあがって来たんです。
「こんばんはぁ」
お、おばちゃんぢゃないですか! どう見ても旅をしているようには見えない、その容姿。
「あ・・・こ・こんばんは・・」
「あの〜、管理人なんですが・・使用料を・・・」
ソレはタクマシき原チャリのキャンパーだったりする訳もなく、、、管理人のオバチャンだったのです。
前日には姿を見せなかったので、夏場以外は無人なのかと思っていたのに。。。。
オバチャンは、
「わたしゃホントに管理人なんだからね! いたいけなキャンパーをダマシて小銭を稼ごうとしている、そこらへんのオバチャンじゃないんだからね!!」
とでも言いたげに、、、、
それを証明しようとするかのごとく、用も無さそうなのに、物置のカギを開けたり閉めたりし、意味不明に忙しそうでした。
そんなオバチャンから利用者カードを渡され、ソレを書き始めると・・・
「利用日の欄は、今日の日付を書いてね」
なるオコトバ! ソレでイイんですか?

だって、あたりには空き缶や洗っていないナベ・フライパンが転がっていて、前日から滞在していたのはミエミエなんですよ!
こ、これはサービスなのでしょうか?
いえいえ、前日に巡回をサボった事を闇に葬る作戦なのかもしれません。
いずれにしても、ココは善意に解釈するのがイイに決まっています。
ありがとう、オバちゃん! 旅の情けが身にしみるぅ!!
1泊分の600円を払うと、、、オバチャンは街路灯をつけ、トイレ・水場などの説明を始めました。
まるで、初めてココで泊まる相手に対する口調で。。。
と言うことは・・・
こ、こういう場合は、深い事を考えずにオリコウにしているに限ります。
ヘンに知ったかぶらずに、
「ボク、初めてなんですぅ。何も知らないんですぅ」
などと聞いていればいいのですよ。ソレがイチバン!
「ゴミは気をつけてね。そこいらに放っぽっとくとネコにヤラレるから」
「そ、それって、もしかしたらツシマヤマネコですか?」
「フツーのネコに決まってるでしょ。そんなの」
「さ、さいですか。。そんなのですか。。」

この日も、長い長い夜になりました。
ソソクサとメシを食ったところで、話し相手が居る訳でもありませんですし、もう何もする事は無いんですから。
進まない時間、、、進む酒、、、
イタタマレなくなりテントに、そして寝袋に潜り込むと、、、、、、
無駄に元気な、そしてヤンチャなマフラー音が聞こえてきて、、このキャンプ場の駐車場でソレが止まりました。
やがてバタンバタンとドアの音、それに続いて若い男二人の声・・・・・
これは、あまり嬉しくないシュチュエーションだと思いませんか?
いくら話し相手が欲しいと言っても、あまり、、、いや、思いっきり相応しく無さそうなんですから。
お願い! ワタクシの事はそっとしといてくださいね。。

九州っぽい口調や会話の内容からすると、どうやら連休を利用して島に戻ってきたニイチャン達らしい感じでした。
誰かのウワサ話など、他愛もない世間話が続く中、、、
「えっ? おまえ、まだチェリッコかぁ? 俺もだ。。」
何ともフシギなフレイズが耳に飛び込んできたんです。
チェリッコ? 対馬の言葉なのでしょうか?? 意味がわかりません。
すると、タイミング良くもう一人が聞き返しました。
「チェリッコって何だ?」
「しらねーの? チェリーボーイの事だよ!」
そ、そういう事ですか。方言とかぢゃなくて、勝手に作ったのですね。
なんだか、妙に親しみが湧いてきました。ワタクシはチェリッコではありませんでしたけれど。。

そのまま、なんとなく会話を聞いていると・・・
「おいっ! なんであそこの電気がついてんだ?」
どうやら、ワタクシの存在に気がついた模様です。
「ホントだ! 誰か居るんか?」
ニィチャン達が歩き出した気配! こっちに来ないでくださいよぉ!
「あれ〜バイクが止まってるよぉ!」
き、来たぁ! さ、触るな! それ以上近づくな!
「コレ、カズヒロのバイクと同じか? 400ccじゃん!」
ブゥゥ! ブゥゥ! ハズレです! 正解は200ccですよぉ! 何をシッタカブリこいていやがる!
ハズレたんだから、もう失格です。早く帰りなさい!
「あっ! これ、品川ナンバーだぜ!! 東京だよぉ!!」
「テントもある! もしかしたら女の人が寝てたりして! 覗いてみようぜ!!」
く・く・く・来るなぁ!! おねがい! 来ないでちょうだいっ!
来たところで、アナタ達のチェリッコ卒業には、何の役にも立てませんよぉ!!

こうなったらコチラから顔を出すべきか、、、、そうだとしたら、そのタイミングはどうする?
ワタクシは、ずいぶんアセりました。そして迷いました
このまま寝たフリをしているのがイチバンな気がしつつも、、もし相手が好戦的だったとしたら、、
シュラフに入ったままぢゃ、いざという時に手も足も出せなぢゃないですか。
しかし、アッサリと危機は去ったんです。
「バーカ! 女の人が、こんな所で寝てる訳無いじゃん!!」
そんな笑い声を残して、彼らの足音は遠ざかっていきました。
ホッ・・・

いやいや、まだ安心は出来ません。
駐車場に戻った彼らは、それまでの大声から一変し、声をひそめてボソボソと会話をしはじめました。
ううむ、テントで寝ているらしいヒトへの配慮で、声のボリュームを落としたのでしょうか・・・
まさか、そのヒトに聞こえないように、テント襲撃の為の作戦会議をしているのでしょうか・・・
再びキンチョーのひと時が流れ、、、、やがて・・・
バタンバタンとドアの音に続き、車はニギニギしいマフラー音を残して去っていったんです。
ああ、なんだか判らないけれど、本格的にピンチは去ったと言えましょう。
いやいや、仲間を呼びに行ったとか・・・・
ソコまで考えても仕方なく、もう寝てしまう事にしたのですが、、、
そう言えば、、対馬に上陸以来、一度もフロに入っていない事を思い出しました。
まさかチェリッコどもは、異臭を感じて逃げたんだったりして・・・
そんな訳は無いでしょうね。でも、、、、
これで、翌日になったら壱岐に渡る決心がついたんです。
深夜の襲撃がオソロシかったからですって? ち、違います。
壱岐には温泉があるハズで、ソコでジックリとキレイになりたかったんです。。。

尾浦キャンプ場

【注意】
この文章は、かなり記憶が曖昧な部分が含まれております。
年月も経過しておりますので現状と異なる部分も多く、旅情報としては不適切です。
マヌケな読み物として捉えて頂ければ幸いです。
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