診察室2 (更年期障害)
(ここでは更年期女性に対して講演した内容を紹介いたします)
更年期と上手につきあう暮らし方 〜更年期の症状を軽くする対策〜
女性の平均寿命は下記の図のように年々伸びております。
平均閉経年齢を50歳とすると更年期を迎えた女性は40年余の人生のちょうど折り返しの時期を迎えることになります。更年期はこれまでの過ごしてきた人生を振り返り、新たな人生の出発の時期でもあります。ここでは更年期と上手につきあう暮らし方についてお話します。
更年期の症状はどんなものがあるでしょうか?
右のグラフはアンケートからの結果です。『ほてり』『のぼせ』などいわゆるホルモン欠乏による自律神経失調症状や肩こり、疲労感、または精神神経症状まで多岐にわたります。更年期で起こった症状がすべて更年期障害によるとはいえませんが、更年期症状を起こす原因は様々でこの時期は多くの要因があります。
更年期の背景因子
・老化 ホルモン環境の変化
・個々の人格、性格
・家庭環境(配偶者、子供、親、その他)
ホルモンの低下による症状は各年齢で欠乏症状は様々です。(下記右図)
加えてホルモンの低下だけでなく環境因子や個人のこれまでの人生の経験が大きく関与してきます
多くの社会心理的ストレスに症状、状態が左右されます。特に家族の状況に影響を受けます。
更年期女性の社会心理的ストレス
家族の問題 配偶者の病気、死、定年、不和
子供の問題行動、受験、自立
病気や障害 ;老人の介護、死など
職場の問題 人間関係
自身の問題 健康に対する自信の喪失、老化の意識、精神と身体のギャップ、空の巣症候群
その他 親しい人の病気や死
更年期に対する治療はそれぞれの個人が環境状態が異なるためその人に合わせた治療が必要になります。
更年期障害に対する治療の特徴
・ 十人十色の治療方法が必要
・ 多数他科に関連する症状、十分な検査が重要、他の疾患の否定
・ 心理療法の重要性(本邦では不十分か)
・ 婦人科受診が最後の砦?
・ 婦人科疾患?精神科疾患? いわゆるテーラーメイドの治療が必要になってきます
更年期婦人の心理は 老化に対する不安、否定
これまでの人生の回顧と残された人生に対する希望
死への恐怖
家族(両親、夫、子供)に対する愛情と不満
女性としてのプライド
自分の理想像と現実の差異
自己心理の共感と肯定
自己の人生感と世相のギャップ などあり
心理療法の重要性が示唆されます。実際外来で診察でもホルモン剤や漢方などの薬を使用せずお話を聞いてその方の状況を整理して本人が理解して症状が軽快するケースが多くあります。
更年期カウンセリング(心理療法)の特徴
- 更年期障害の許容
- うつ状態の自己認識
- ホルモン低下に対する落胆への励まし
- 几帳面な性格の打破
- いい加減な生活のすすめ
- 家族(夫)の認識の確認
- 同世代同胞への相談
特に 几帳面な生活の打破といい加減な生活のすすめを外来では勧めています。『いい加減』は中庸の意味で実は一番難しいかもしれません。
《更年期障害を重くする人》 こんな方は注意してください!!
まじめでNoが言えない人
家族・夫婦との不和がある人
仕事の過度なストレスがある人
肥満傾向
運動不足気味
喫煙している
最後に
更年期を爽やかに過ごす6つのポイント
1 食事 食事は規則正しく栄養バランスを考えて
2 運動 毎日のウォーキングや無理のない柔軟体操を 十分な睡眠をとる事も必要!
3 人間関係 家族とのコミュニケーションを大切に
4 ストレス解消 同じ年代の友人との情報交換を!
5 生き方 物事に対し前向きに、いい加減な心得
完璧主義はストレスのもと気楽な気持ちで
自分自身の楽しみや生きがいを持とう 推し活の推奨
常にチャレンジ精神を持とう
6 健康管理 自分の健康は自分で守ろう、健康診断を
なかなか実際に実践することは難しいことかもしれません。決して『良い妻』『良い母』『良い嫁』になる必要はありません。
これからの人生あなた次第です!!