〈夢裡庵先生捕物帳〉泡坂妻夫 |
シリーズ紹介 |
このシリーズは〈宝引の辰捕者帳〉に続いて発表された、捕物帳です。夢裡庵先生は、本名を富士宇衛門という八丁堀の同心で、柔術の達人であると同時に筆も立ち、“空中楼夢裡庵”という雅号を持っていることから、“夢裡庵先生”と呼ばれています。当世風の小細工を嫌う武骨な人物ではありますが、人情には厚く、たびたび犯人を見逃すこともあります。 このシリーズの特徴は、登場人物に関する趣向です。例えば第1作の「びいどろの筆」で謎解きをしている以前先生(赤沢松葉)は第2作の「経師屋橋之助」では視点人物となり、森林木十が謎解き役をつとめています。その森林木十は次の「南蛮うどん」で視点人物となり、今度は蕎麦屋「天庵」の女主人・照月が事件の謎を解いています。つまり、登場人物たちによって謎解き役と視点人物のリレーが行われているのです(詳しくは「主要登場人物一覧表」参照)。 そして夢裡庵先生自身は、シリーズのレギュラーではありますが、それぞれの作品では重要な脇役といった役どころです。事件の真相に気づいている場合もありますが、読者に対する説明は謎解き役に譲り、一歩引いた位置で物語の幕を下ろしています。 |
作品紹介 |
7篇ずつを収録した3冊の短編集が刊行されています。ほぼ年に1篇ずつという気の長いペースで雑誌に書き継がれてきたこのシリーズも、20年ほどかけてついに完結です。 |
びいどろの筆 泡坂妻夫 | |
1989年発表 (徳間書店・入手困難) | ネタバレ感想 |
個人的ベストは、「びいどろの筆」か「芸者の首」。
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からくり富 泡坂妻夫 | |
1996年発表 (徳間文庫 あ19-2) | ネタバレ感想 |
『びいどろの筆』と比べて、謎解きの要素がやや少なくなっているように感じられます。夢裡庵先生の出番が少なくなっているのが残念です。
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飛奴 泡坂妻夫 | |
2002年発表 (徳間書店) | ネタバレ感想 |
シリーズ最終巻です。最後の方では登場人物のリレーがやや乱れているようにも思えますが、完結にふさわしい見事な幕切れです。
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