フクロウ飼育の基礎知識(3)

爪切り 換羽 発情 病気 ロスト その他トラブル
心構え 飼い方 環境 個体
 体重測定 温度 行動 鳴き声 水浴び 掃除

爪切り
・必要性
 フクロウの爪やくちばしは、野生の環境では生活しているうちに自然とほどよく摩滅していくようですが、飼育条件下ではどうしても摩滅しにくく、伸び放題になってしまいます。これを放置しておくと人間にとっても危険ですし、フクロウ自身が怪我をする(足の裏を傷つけてしまうなど)可能性もあります。少なくとも半年に1回程度、爪とくちばしの手入れをしてあげるべきでしょう。
 なお、誰しも考えることかもしれませんが、止まり木に紙ヤスリを貼るという対策はあまりうまくいかないようです(そもそも、くちばしに関しては何の解決にもなっていませんし)

・用意するもの
 それほど特別なものが必要なわけではありませんが……。

爪切り
 一般的な人間用の爪切りでは難しいと思います。犬猫用として売っている、ニッパー式(爪もくちばしもOK)もしくはギロチン式(くちばしは厳しいかも)のものがおすすめです。
爪ヤスリ
 切った後の整形のために。ごく普通のものでかまわないと思います。
 目隠しと保定(暴れないように)を兼ねて、個体を包み込むためのものです。できるだけ爪などが引っかかりにくい生地の方が、作業がしやすいと思います。また、光を通しにくい濃い色のものがいいかもしれません。

・やり方
 まず、個体を布で包み込んでしっかりと押さえます。この時には、羽根が折れてしまわないよう注意しましょう。
 次に、布に切り込みを入れるなどして、足とくちばしを露出させ、爪とくちばしのとがった先端を爪切りで切り落とします。どのくらいの長さに切るかは一概にはいえませんが、爪は深く切りすぎると出血したりすることがあるようなので、くれぐれも切りすぎにはご注意を。
 最後に、切ったところをヤスリで軽く整形します。止まり木などに引っかかったりしないよう、とがったところの面取りをする、くらいのつもりで十分だと思います。

 その他、具体的なやり方についてはどらさん「THE OWL'S BAR」(写真付き)を参考にして下さい。


換羽
・全般
 こちらにも書いていますが、フクロウ(だけではありませんが)は年に1回、羽根の生えかわる時期があります。これが換羽です。
 いつ頃になるかは年によってばらつきがあるようで、例えば我が家のジェフくんの場合、2002年には4月の下旬に始まりましたが、2003年は1月半ばですでに始まっています。だいたい数ヶ月かけて、全身の羽根が少しずつ入れ代わっていきます。

・注意すべきこと
 まずは、栄養不足になることのないよう、体重は高めに保っておく必要があるでしょう。ネクトンバイオなどの栄養剤も与えた方が望ましいと思います。
 換羽の間は、抜け落ちた古い羽根や、新しい羽を包んでいた羽鞘の欠片が飛び散ることになり、人によってはアレルギーの原因になったり、またダニが発生したりすることもあるようなので、特に注意してこまめに掃除をする必要があります。
 また、特に顔のあたりなど、普段よりもかゆそうな様子を見せることが多いので、例えばやや堅めの人工芝マットのように、顔のあたりをこすりつけて掻くことができるものを、止まり木に付けてあげるなどした方がいいかもしれません。


発情
・全般
 フクロウには年に1回の繁殖期があり、個体の状態によっては発情することがあります。具体的な発情の兆候としては、独特の鳴き声(種類によって違います)や、求愛行動(雄の場合:餌のプレゼント/雌の場合:餌鳴き?)などがあるようです。
 特に、ペアで飼育して繁殖を目指している方にとっては重要な現象ですが、それ以外の方には関係ない、というわけではありません。プリント個体の交流型飼育では人間(飼い主)に対して発情することもあるのです。

・注意すべきこと
 まず、上の“独特の鳴き声”ですが、通常の鳴き声よりもかなり激しいものになるようなので、環境によっては防音などの対策が必要になるかもしれません。
 また、人間に対して発情した場合には、発情相手以外の人間は排斥(頭に蹴りを入れるなど)されてしまうことがあります。排斥の対象となってしまった場合、解決策としてはできる限り姿を見せないようにするしかないようです。小さなお子さんがいらっしゃるご家族など、特にご注意下さい。


病気
・原因
 フクロウは、様々な病気にかかる可能性があります。ダニ・細菌・糸状菌(カビ)・ウイルスといった病原体によるもの、ストレスによるもの、食事によるもの(栄養不良/過剰)など、色々な原因が考えられます。このような原因には常に気をつけておく必要があります。

・徴候
 病気の徴候が表れていないかどうか、普段から注意して観察することが重要です。外観(ダニの寄生や皮膚病、足の裏の炎症など)や体重の著しい変化(全般)などは比較的わかりやすいところでしょう。また、糞やペレットの状態などにも注意しておくべきでしょう。

・対処
 万一病気にかかってしまった場合には治療しなければなりませんが、残念ながら猛禽類を診てくれる動物病院はあまり多くないようです。いざという時のために、近所で頼りになる病院を見つけておいた方がいいでしょう。
 「OWLs "R" US」飛龍頭さん)のリンクページ「OwL LiNkS」には鳥の病院情報が掲載されていますので、参考になると思います。


ロスト
・危険性
 屋外でのフリーフライトは、常にロスト(行方不明になってしまう)の危険性をはらんでいます。が、室内のみでの飼育であっても、ロストの危険性がないわけではありません。フクロウの体は見た目よりもかなり細いので、わずかな隙間からでも脱出してしまうことがあるのです。
 逃げ出した個体は、野生に戻って幸せに……などということは決してありません。たとえWC個体であっても、本来の生育環境とはまったく違う場合がほとんどなのですから、生き延びるのは難しいでしょう。ましてや、生まれてからずっと人間に飼育されてきたCB個体であればなおさらです。また、仮に生き延びることができたとしても、今度は生態系に悪影響を与える(例えばブラックバスなどのように)という問題が生じてしまいます。

・予防/対処
 まず、外部に通じる隙間はある程度小さなものでも注意して網などで塞いでおく、あるいは個体の状態や気象条件などを考慮して無理なフリーフライトを行わないなど、あらかじめロストの危険性をできるだけ少なくしておくことが重要です。
 それでも万が一ロストしてしまったら、すぐに一生懸命探すしかありません。フクロウは風に逆らって飛ぶのが苦手なようなので、風向きは大きな手がかりとなります。また、長距離を移動して逃げるのではなく、比較的安全と思われる場所を見つけて(しばらくは)そこにとどまるケースが多いようです。いずれにせよ、時間が経てば経つほど回収が難しくなるのは間違いないでしょう。
 もし自力で発見できなくとも、付近の方々に目撃(または保護)されている可能性があるので、ビラを撒いて情報を求めるというのも有効なようです。


その他トラブル
・予防
 上で挙げた病気ロスト以外にも、飼育環境などによっては様々なトラブルが起きてしまうかもしれません。が、フクロウのためにも、また飼い主自身のためにも、トラブルは未然に防ぐに越したことはありません。そのためには、人間側の対応(態度)を含めた飼育環境や個体の状態などを細かくチェックし、可能な限り色々なケースを事前に想定しておく必要があるのではないでしょうか。

・対応
 とはいえ、人間の想像力には限りがあり、往々にして予想もしなかったトラブル(例えばこちら)が起きてしまうものです。そのような時には、できる限り冷静に頭を働かせると同時に、すばやく行動することが重要になると思います(当たり前のことですが)。
 予想できないトラブルに対処するマニュアルはありません(←自戒も込めて)。各自の判断で、うまくトラブルを切り抜けて下さるよう祈ります。




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