◆《授業づくりの基礎・基本は「授業改善」》
授業の基礎・基本とは何か?
それは「授業改善」
子どもたちにとっていい授業をすることができたか?
子どもたちに力をつけることができたか?
指導者は日々このことをふり返らねばならない。
つまり,「指導と評価の一体化」,P→D→C→Aサイクルを確立させること。
そのために大切なことは,目標と内容と方法。
特に目標を意識すること。
そして達成させるための方法を工夫する。
内容は通常の場合教科書だろう。
工夫できるのは方法。
この方法でよかったのかどうか?
これを常にふり返って「授業改善」に務めてほしい。
◆《このパターンの授業が実に多い》
子どもが黒板に問題を解き,そして説明した。
「・・・・で,こうなりました。どうですか?」
「いいで〜っす!」
担任は,「そうですね!これでいいですね」で,次の問題に進んだ。
教師の発問に対し,
「・・・・です。どうですか?」
「いいで〜っす!」
元気のいい返事である。担任もにこにこしながら,「はい,そうです。いいですね」で,授業は進んでいく。
一見,明るく活気ある授業風景。
しかし,わからない子はどうするんだろう?
「いいで〜っす!」とは言えないだろう。
「わかりません」とも言えない。
わかった子だけを相手に授業を進めているのだ。担任の自己満足。
わからない子は置き去り。
1時間の授業の中でも,「指導と評価の一体化」に取り組まねばならない。
常に学級全体の理解度を測りながら,未到達児の把握に努めなければならない。
そして,瞬時に「授業改善」しなければならない。
(もちろん,十分にクリアしている子も)
◆《一緒に考える授業》
「この時間は,このことをぜひ教えなくてはならない」という意気込みをもって授業に臨む教師は多い。
すると,どうしても「教え込み型一斉授業」になりがちだ。
発想を変えてほしい。
教えたいことを一緒に考えるという発想で。
「先生もいっしょに考えるね。」「誰かわかる子いる?」
すると,必ず子どもたちが活躍する。
◆《瞬時の評価》
1時間の授業の中で,理解度を確認することを忘れてはならない。
これも立派な「評価」。誰がわかっていて誰がわかっていないのかを把握しながら授業しなくてはならない。
これが授業の質を高めていく。
「後でノートでチェックします」では,わからない子をその時間内に救っていないことになる。
そのためには,子どもの考えを見えるようにしなくてはならない。
・練習問題を解いている間の巡視指導・・・・間違っている子にその場で指導する。
・教科書やノートに線を引かせる。・・・・「大事だと思うところに線を引きましょう」
・挙手による自己評価・・・・「ここまでの勉強,OKですか?」
◆《まとめ方を工夫しよう》
授業の最後に反省を書かせることは多い。これを,単に書かせるだけではなく,ちょっと工夫したい。
例えば,50字マスの用紙に書く,囲みや矢印などで図示する,マトリクス表にまとめるなど。
こういうことの積み重ねで要約,整理,分類,総合などのスキルを身につけさせたい。
◆《相互評価を大切に》
調べ学習では,意見交換の場をつくりたい。これが相互評価となる。
自分の考えを広げたり,友だちの意見で自分の考えを広げることができる。
話すことが苦手な子はメモでもよい。
意見の交流の場をできるだけ多くもちたい。
◆《板書計画と評価計画》
授業の力量を上げるための近道。それは場面ごとに書き分けた板書計画。
板書は黒板1枚だが,導入の場面,展開の場面,まとめの場面というように場面を意識して板書計画を立てる。
このことで自分自身が学習の流れを構造的に捉えることができる。
留意すべきことは,この中に評価計画を盛り込むこと。
指導者は子どもたちが授業につまずかないように進めるのが原則だが,なかなかそんなわけにはいかない。ときには
板書計画をまったく変えてしまうほどのことも起こりうる。何が起きてもよい対応策をとっておく。
これが評価計画。板書計画と評価計画で,子どもたちの学習の流れに沿ったフレキシブルな授業となる。
◆《授業記録を残す》
授業記録は研究授業でなければとってもらえない。通常の授業の場合,録音が最適だ。
これを通勤途上で車の中で聴く。意外と聴けるものだ。繰り返し聞いているうちに,自分の癖や子どもの癖がわか
ってくる。
発問の仕方や指名の仕方など,気づかない自分の癖など,反省すべき点が見えてくる。
子どもの方も同様だ。あの子はいつも・・・・,など。
もう一ついい方法がある。それは板書を写真に撮っておくこと。累積し分析を重ねることで力がついてくる。
◆《学級通信の活用》
授業記録を残した実践を保護者にも知らせるとよい。学級通信に載せて配付する。
子どもも読むので,授業の振り返りにもなるし意欲にもつながる。
学級通信は,保護者の信頼を得るための比較的簡単で最も有効な方法である。
◆《評価についての話》
「大事なことはわかっているが,毎日忙しくて,やっていられない。」という話をよく聞く。
「あんなむずかしいこと,できるわけがない。」という話も聞く。
果たしてそうだろうか?
とにかく,できることから少しずつでもいいからやってみることが何より大事。
やってみなければ「無理」なのか「できないこと」なのか話にもならない。
そんなに難しく考えなくてもいいのではないだろうか。私たちは日々の授業でちゃんと評価を行っている。
例えば,
「B君,今日はすごくがんばった。」「C子さん,この問題を見事に解いた。」「D君がきちんと宿題をやってきた。」
これも立派な評価。このような事実を忘れず記録しておけばよい。これが評価資料になる。
何も全員を評価の対象にしなくともよい。まずは,「特に手当の必要な子を見極める」。
具体的に言うと,
「B君はほとんど理解できていない。」「C君は文章題になるとまったくだめだった。」といった具合だ。
次に「十分に達成したことを見極める」こと。
具体的にいうと,
「F君は発言も多かったし,質も高かった。」という子も把握しておく。
つまり,1時間の授業の中で,教師から見て目立った子(未到達の子,十分到達した子)が存在すれば,それが
評価したことの証となる。
そして,到達できていない子への手当を直ちにしなければならない。
未到達が多いようであれば,自分の指導をふり返らなければならない。
これが授業改善。
以上のようなことなら,日常的にできるのでは?
それらをめんどうがらず日々記録しておけば,それが立派な評価資料となる。
そして1単元終わるごとに評価資料をもとに観点別に評価をすませておく。
これを蓄積していけば学期末の評定など,いとも簡単にできてしまう。
「評価はホットに,評定はクールに」というのは北尾氏の言葉。
◆《日々の評価の具体例》
(1)毎時間の評価について
・第1時に単元全体の学習をオリエンテーションする。→ 見通しを持たせる。
・授業開始時に,今日の授業で何がわかればいいのか,何ができるようになればいいのかを明確に伝える。
・「ここまでのところでわからないところがある人?」などと挙手させて子どもの反応を見る。
→毎時間続けると,子どもたちも慣れてくる。
・机間指導でつまずいている子は誰か?十分理解できている子は誰か?を教師の目で把握する。
→意図的にドリルを解いたり,ワークシートを書かせたりする時間をとる。これをもとに本時の学習を修正する
場合もある。
・授業の最後に「今日の授業,よくわかった子?」「よくわからなかったことがある子?」と,挙手で自己評価させ
る。
・全員を評価することは不可能。
重要なことは,「今日の授業が理解できていない子は誰か」「十分理解できている子は誰か」を把握すること。
・そして,これを次時以降の授業に反映させる。
→理解できていればスピードアップ,そうでなければスピードダウン
(2)名簿や活用した記録法
・1単元1枚の名簿を用意する。座席表を使ってもよい。
・授業日別,観点別にチェック欄をつくる。
・1時間終了ごとに,気になる子や光る発言をした子などを観点別にチェックしておく。記号を決めておくと手軽に
できる。
(3)評価資料の収集
・忘れないうちにメモしておく。授業中でも。しかし子どもたちに悟れれぬよう。
・「今日の授業では算数的考え方を評価しよう」というふうに観点を絞って授業に臨み,AとCの子だけを終了
後,直ちに記録しておく。多くて数名であろう。
・子どもの学習の様子をじっくり見ることができる場面では生の資料をとっておく。
・これからはパフォーマンスアセスメントが増えてくるだろう。
発表・行為・作業・ワークシート・作文など
(4)単元ごとに評価をすませておく。
・上記2項目の資料やテスト結果などから,1単元終了時に観点別に評価を完了させておく。
評定をする時期に慌てなくてすむ。
◆《子どもの自己評価を大切に》
(1)自己評価の目的
○児童に学習の見通しをもたせたり,意欲付けをする。→ 見通しを持たせることの大切さ
○児童の自己評価能力そのものの育成を図る。
○教師の指導の反省とする。
○教師の評価の参考資料とする。
(2)事前の準備
1)設定した目標と評価基準を再確認する。
2)観点別の評価基準達成のために指導法を検討する。
3)各観点の評価方法を検討する。
4)上記の評価方法に合わせて自己評価の設問を決定する。
5)学習前に,学習の目標とその達成基準(評価基準)を児童に知らせる。
・何をどこまで学習するのかを明確にする。
・学習の目標は何なのか。
・何ができるようになればよいのか。
・つまずいたときどうすればよいのか。
学習前に,何を,どこまで,どのように学習すればよいのかを子どもたちに知らせることが大きな前提となる。
子どもたちに,目的意識と見通しをはっきり持たせ,何をどう学習すればよいのかという展望を持たせる。
(3)評価の方法
○学習前に目標とその達成基準(評価基準)を子どもたちに知らせる。
○自己採点も自己評価の一つの方法
・児童でも正誤がはっきり区別できるもの(例:ドリル類)
・模範解答を見ながら自己採点
→間違いの修正とその原因を考える→原因の自己解決と教師の確認
○自己評価表による自己評価
・評価計画に従って様式を決める。教師が評価したいと思うことを具現化。
・毎時記録する方法と単元終了時に記録する方法がある。
・設定した学習目標を達成したかどうかを自分で評価する。
・評価にあたっては「できた,できなかった」という結果のみにとらわれるのではなく,学習の過程に注目させたい。
(4)評価項目の例〈評価基準の裏返し〉
1)授業への参加状況……「がんばってやった」「工夫して取り組んだ」「おもしろかった」
2)向上・成長の状況……「〜ができるようになった」「〜がわかった」「これから〜をやりたい」
3)学習への習慣・態度……「予習や復習をやっている」「難しくてもがんばった」「わかろうとして勉強した」
4)学習後の自分自身……「目標は達成できた」「〜がまだよくわかっていない」「たいへんだったけどがんばっ
た」
ポイントは「指導前に目標とその達成基準を子どもたちに知らせる」というところにある。
これは,子どもたちの自己評価能力を伸ばすためにも大切なことだ。
◆《評価の話いろいろ》
評価についての認識がまだまだ甘い。
その原因は,やはり「多忙」だろう。
しかし,そんな言葉で片付けられてはたまらない。
毎年参加している「指導と評価大学講座」の記録からいくつか紹介したい。
○ 4観点は,バラバラにとらえてはならない。
・「関・意・態」と「思考」「知・理」は結びついている。
→結びつけるのがプロ教師の仕事。
・塾では「関・意・態」なしで「知・理」をつけようとする。
→一昔前の「詰め込み」
○ 評価規準
・評価の対象
→学力の質的特徴を問う。幅の広い質的な基準を示す。
→質的スタンダード
・評価規準とは「達成したい質的レベル」
→これを越えたら達成と認める。
○ 学校の実態
・目標準拠評価への誤解(不勉強)
→甘い評価になっている。(教育的配慮という言葉に惑わされず,具体的事実に着目する)
・到達できていないところは正確に伝えるべき。
○ 絶対評価と個人内評価との混同
・前と比べてどうか
→進歩の状況:縦断的個人内評価
・よいところはどこか
→長所を見つける:横断的個人内評価
○ 評価と評定の違い
・評価は目標の実現のために機能しているかどうかを値踏み,点検,反省すること。
・評定は事象(状態)を明らかにし,あらかじめ設定した基準(評定基準)に従って点数や記号(または文
章)を付与する操作。
○ 観点別評価の考え方
・学力の3要素にあわせた4観点
・「関心・意欲・態度」
→「態度」を強調したい。「態度」とは,その後も使っていける力。一時的でない。
○ 「関心・意欲・態度」の評価の工夫
・「関心」「意欲」は変動しやすい。
・「態度」は身につけた「安定した学習への関わり」。
→持続的,自発的に学んでいるかどうか。
○ 「思考力」の評価
・「表現」と一体として評価を進める。
→言葉に言い表すことで具体的にとらえることができる。
・同時に表現力を伸ばすことにより,いっそう思考力を伸ばすことができる。
○ 思考力・判断力・表現力を育む授業づくり
・問題解決学習の中で頭を使う授業を。
・頭を使いながら思考し,判断することで問題を解決していく。
・身につけた知識を実際の問題解決場面に合わせて柔軟に引き出し,個人の外にもある資源をも用いなが
ら問題解決を行い,それを繰り返すことで知識を使える形で身につける。
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