現代オイル考


オイルの役目

 オイルの役目とは次のようなものです。

潤滑 冷却 清浄 防錆 密封 応力分散
 この中で最も重要な物は潤滑です。固体同士の接触では必ず摩擦が発生します。
これは固体の表面の凹凸が引っ掛かり合うために発生します。
従って滑らか表面を持つ固体がもし存在すれば摩擦は発生しない事になります。
物理の試験問題にある「滑らかな表面」というのは摩擦が発生しない表面の事です。

 濡れたテーブルの上にコップを置くとツーッと滑る事があります。
これはテーブルとコップの間に出来た水膜がテーブルとコップの直接接触を妨げるために生ずる現象です。
この場合の抵抗力は水膜の粘性抵抗ですから、個体の摩擦に比べてずっと小さなものとなります。

オイル交換の必要性

 オイルに付いて多くの人が疑問に感じている事は、オイルに金を掛け過ぎているんじゃないだろうか?という事ではないでしょうか。
3,000から5,000kmごとに4L6,000円のオイルを入れているというのが平均的な自動車ファンの姿だと思いますが、本当はこんなに頻繁に高いオイルを入れる必要はないんじゃないだろうか、と内心思っている人は多いのではないでしょうか。
とりあえずの結論から言いますが、私はその疑問はかなり当っているのではないかと思います。

 1970年頃に日産チェリーX1(1200ccOHV80ps)に乗っていた頃オイルは一体どれくらい保つのか試した事があります。
当時のオイルはAPI分類のSDというものでメーカーの推奨交換時期は5,000kmくらいでしたが、7,000kmまで無交換でいたところオイルに白い泡状のものが発生しました。
この頃はかなりエンジンを酷使する運転をしていましたが,それでもメーカーの推奨交換時期までは大丈夫という事がわかります。
現代の自動車の推奨交換時期は15,000km程度ですが(ターボ車は5,000km程度)、オイルはAPI-SJでしかもエンジン自体の精度、品質が良くなっていますから10,000kmくらいまでは十分保つ筈だと思います。(限度は20,000kmくらいでしょうか)

 BMW.R100RSに15万km乗っている人でオイルを一度も交換したことがないという人がいます。足りなくなったら継ぎ足し継ぎ足しで乗っているという事でした。
他にもカローラで継ぎ足しだけで数万km乗っているという人の話を聞いた事があります。
(この方法は1,000kmに1L補給するような場合は古いオイルが徐々に新しいオイルに置き換わるという事で、スラッジの除去は出来ないにしろある程度成り立ち得ると思いますが、私のST1100サイドカーのようにオイル消費が全くないという場合にはやはり無理でしょう)

 1967年から3年間S600に乗っていましたが、この頃使っていたオイルはホンダウルトラオイルで粘度は20Wか30Wのシングルグレードでしたが(これは後述しますがおおよそ20W-20、30W-30に相当します)、API規格の等級などは無く今と比べたら全く劣悪なオイルだったと思いますが、それでも4万kmエンジンはなんの異常も無く走りました。

クラウンに乗る知人で4L1000円のオイルを6000キロごとに入れてる人がいますが、10万キロ走った今でもエンジンは快調です。

 こうした事から結論付けられる事は、オイルは現代のSJでありさえすれば一番安いもので大丈夫、10,000kmくらいは十分保つだろうという事です。

ただしこれは十分にテストして売られる現代のクルマについていえることであり、特にスーパーセブンの場合、これはかなりいじったエンジンであったり古いエンジンだったりしますから、現在の常識はそのまま適用できないこともあると思います。オイルの劣化はブローバイガスに含まれるガソリンや窒素酸化物によって進行しますが、ケントエンジンはブローバイガスを除去する装置がありませんからオイルの劣化は早いはずです。

例え少々の無駄があったとしても愛車には出来るだけいい状態でいてほしいというのがスーパーセブンやサイドカーに乗る人の本音ででしょう。

オイルの種類

 オイルはベースオイルと添加剤を調合して作られますが、このベースオイルの作り方によって3種類に区分されます。

鉱物油 原油(鉱物油)を精製してベースオイルを作ったもの。ベースオイルの品質がオイルの品質を左右するため、原油の品質、精製方法が重要となる。
かつては「100%ペンシルバニア産原油使用」などと原油の種類を宣伝に用いていた物もあった(ペンゾイル)。
粘度指数などの諸性能を向上させるには添加剤を入れるが、これが多量になりすぎると炭化物の発生、局所的な粘度低下などの原因となるために限界があり、性能は化学合成油に劣る。
化学合成油 ベースオイルとして望まれる特性の物を原油を主材料に化学的に合成して作ったもの。
通常ポリ・アルファ・オレフィン(PAO=パオ)が多く使用されている。
高粘度指数、低温流動性、蒸発性、熱酸化安定性、燃焼した際のカーボン堆積などベースオイルの段階で種々の特性に優れている。
一方、パオはゴムを収縮させる傾向があるため、これを抑制するためにエステルを混合する形で使用される。鉱物油に比べて価格が高い。
部分合成油 鉱物油の性能を補う目的で化学合成油を20〜30%混合したベースオイルを用いたもの。パートシンセティックあるいはセミシンセティックなどと呼ばれる。

 

オイルの品質の規格

 1970年にAPI(アメリカ石油協会)とSAE(アメリカ自動車技術者協会)が中心となって現在のAPI規格が作られました。

API規格によるオイルの分類
分類   耐磨耗性 酸化安定性 清浄性 分散性 防錆性
SA 1970
SB 1970
SC 1970
SD 1970
SE 1972
SF 1980 ◎◎ ◎◎ ◎◎
SG 1988 ◎◎ ◎◎ ◎◎
SH 1993 ◎◎ ◎◎ ◎◎
SJ 1996 ◎◎ ◎◎ ◎◎
なお日米の自動車工業界で組織するILSACの規格としてGF-1、GF-2がありGF-1はSH、GF-2はSJに相当します。
SFでは現在のオイルにほぼ匹敵する性能となっていますが、SFのオイルでスラッジの固まりが発生してクランクケース内に落下する問題が発生し、これに対処するためにSGが定められ、さらにエンジンの性能向上などに対応して現在のSJに至っています。

オイルの粘度

 粘度に付いて特に重要な物は次の3つです。

1.低温始動時にオイルが良く行き渡る
2.油膜が切れない
3.粘性抵抗による馬力損失が少ない
 
 スーパーセブンやサイドカーに乗っている人にとって重要なのは恐らく1と2でしょう。
粘度の表示はSAEの規格が使われ、15W-50の場合15Wが低温時の粘度、50が高温時の粘度をあらわします。ここで15Wや50は粘度番号と呼ばれ、高温時の粘度番号が50というのは高温時の粘度がSAEの定める試験条件によるSAE50に合致すると言う事であり、高温時の粘度そのものが50だと言う事ではありません。
 外気温に対してどの粘度のオイルが良いかに付いては、

    1.始動時にオイルがオイルポンプで吸い上げられる事
    2.高速回転時に油膜が切れない事

を前提として次のような対応表が知られていますが、これは一つの目安に過ぎません。

 
外気温(℃) −30 −20 −10 10 20 30 40 50
粘度番号 5W 10W 15W 20W 25W 20 30 40 50
 
  SAEに定められている粘度の具体的な数字は下表の通りです。
この規定は1995.12に改定されたもので、同じ粘度番号でもそれ以前のものより低温での粘度は低く、高温での粘度は高く設定されています。
ここで高温時粘度は100℃及び150℃の粘度を指定しています。下表から粘度というものは強度などと同様一つの指標だけでは表せない事が分かります。
SAEによる粘度の規格(SAE J300 1995) 
SAE
粘度番号
   低温時粘度   高温時粘度
CCS粘度
mPa・s
ポンピング粘度
mPa・s
動粘度
mm/s(100℃)
高温高せん断粘度
x106/s(150℃)
0W 3250(-30℃) 60,000(-40℃) 3.8
5W 3500(-25℃) 60,000(-35℃) 3.8
10W 3500(-20℃) 60,000(-30℃) 4.1
15W 3500(-15℃) 60,000(-25℃) 5.6
20W 4500(-10℃) 60,000(-20℃) 5.6
25W 6000(-5℃) 60,000(-15℃) 9.3
20 5.6以上 2.6
30 9.3以上 2.9
40 12.5以上 2.9〜3.7
50 16.3以上 3.7
60 21.5以上 3.7
 オイルは低温では硬く高温では柔らかくなる性質があります。これは鉱物油ではロウ成分の性質です。この性質の小さい物を粘度指数が高いと言います。鉱物油では添加剤により粘度指数を高めますがこれには限界があり、粘度指数の上では化学合成油が勝ります。

 上表でWのついた粘度番号は主として低温時粘度を定めており、Wの付いていないものは高温時粘度のみを定めています。
20Wのものは上の外気温との対応表で外気温0℃の時に使用可能のオイルですが、0℃での冷間始動時の問題はないとしても高温時に問題は出ないのか疑問に思うと思いますが、上表で20Wの高温時動粘度は20の物と同じですから、20Wのシングルグレードの物は実際には20W-20にほぼ相当する事が分かります。

20の物では逆に高温時粘度だけを定めており低温時粘度は定めていませんが、これは20℃にもなれば粘度は十分柔らかくなるから大丈夫という事のようです。実際には20の物は上記のように20ー20Wにほぼ相当します。
この粘度の定め方に釈然としない思いがする方もいるかと思いますが、そうした方はSAEに直接お問い合わせ下さい。(もちろん英語で)

 出来るだけエンジンに負担を掛けないようにするには、先ず低温始動時にエンジン内に十分にオイルが行き渡る必要がありますから低温時粘度は15W以下は欲しいところです。(これは東京で使用の場合で、北海道の冬では10Wが必要でしょう)
特にOHCエンジンの場合には一番上にあるカムシャフトにオイルが行きにくいということがあります。ここは最も焼き付きを起こし易い所です。

スーパーセブンBDRでBPコース・クラシック(20W-60)を用いる際には十分に暖気をする必要があるでしょう。
20Wは0℃でも大丈夫という事になっていますが、これはエンジンの個体差もあります。
コース・クラシックではAPIーSJに適合していませんが、SJの評価項目の一つである低温始動性を満たせなかった事が考えられます。

オイルが硬すぎると空気を吸い込んでしまいオイル供給が途絶える事があります。
スーパーセブン・ボクスホールではエンジン始動時に油圧は5kg/cmですが30分ほどすると4kg/cmに落ちてあとは一定です。
と言う事は油温が(つまりエンジン全体の温度が)定常状態になるまでに30分掛かると言う事ですから、この間はフル加速は控えた方が良いでしょう。(暖気終了までのエンジンの磨耗が後述しますがかなり大きいようです)

 高温時粘度は油膜が切れない事が重要ですから50は必要と思います。
ボクスホールでは油圧タペットを採用していますが、この油圧タペットという物はタペット内の気泡が一定の割合になると正常に作動しなくなると言う事もあります。
高速型のJPEではオイルタペットを廃してシム式になっています。

1700SSやBDRなど旧いケントエンジンを用いた物はベアリングなどの精度が最新の物と比べて良くないために油膜が切れやすいという事が考えられますから粘度の高い物が良いと思います。ただしコース・クラシックの20W-60と15W-50とどっちが良いかとなると、50でまだ粘度が足りないと言う事はちょっと考えられないので私は始動時の磨耗を防ぐ意味で15W-50の方が良いのではと思います。
10W-60という物もありますがちょっと高いのと、これは化学合成油なので旧いエンジン内のゴムを痛める心配も少しあります。

サイドカーで空冷エンジンの場合、渋滞でエンジンが過熱気味になる場合がありますからやはり50は必要です。なおエンジンが過熱気味となった場合は熱歪による疲弊が出ますからオイルの粘度だけではこれを防ぐ事は出来ません。

 

BPに見るオイルの種類

ザ・ブリティッシュ・ペトロリアム

 下の表を見ると実に様々のオイルがありメーカーの「何でもいいから好きな物を選んでね」というメッセージが聞こえてきそうですね。
私はしばらくスーパーセブンもサイドカーも部分合成油のVervis Formulaを使用していましたが、現在は化学合成油のモチュール300Vを使用しています。これはお世話になっているお店でこのオイルを取り扱っているからで性能的にはVervis Formulaで問題ないと思っています。

スーパーセブンは3.7Lしか抜けないので3,000kmごと、サイドカーは1年半(4,000km)ごとに交換しています。BDRのように7Lも入るものであれば5,000kmで大丈夫でしょう。
下の表で一つ疑問なのはVisco AlphaとVervis Racingを比較すると、Visco Alpaの方が高いのにVervis Racingの方がマルチグレードになっている点です。

品名 粘度 価格 API分類 種類
Visco Zeta 10W−60 12,000 SJ 化学合成油
Visco Gamma 5W−50 9,800 SJ 同上 
Visco Alpha 15W−50 8,400 SJ 同上
Visco Beta 5W−40 8,400 SJ 同上
Vervis Racing 10W−50 5,980 SJ 同上
Vervis Formula 15W−50 4,980 SJ 部分合成油
Vervis Move 10W−30 4,980 SJ/CF 化学合成油
Vervis Strada 5Wー40 4,600 SJ 部分合成油
Vervis Plus 10W−40 3,980 SJ 部分合成油
Vervis Pure 5W−30 3,980 SJ 部分合成油
Vervis Coranda 10W−30 3,480 SJ 鉱物油
Vervis Neo 15W−40 2,980 SJ 鉱物油
Corse Classic  20W−60 5,800 SG/CD 鉱物油

 

 

化学合成油はいいのか?

 化学合成油は初期の性能が良い事は事実ですが、ある段階で急に劣化が進むということがまことしやかに言われています。この件に付いて考えるにその可能性は完全には否定できないように思います。
確かにAPI規格では酸化安定性の試験などもあり化学合成油は鉱物油より性能が良くまた耐熱性でも鉱物油の限界140℃に対し化学合成油は180℃と優れている事は事実です。鉱物油は粘度安定剤で粘度指数を向上させていますが、こうした添加剤は高温で分解してしまうことがあり、添加剤に頼らずに粘度指数が高い化学合成油のほうが性能は高いです。

しかし実験室での酸化と実機での酸化は同じメカニズムで進むとは限りません。
例えば実機では常にオイルに圧力が掛かっており、(オイルに圧力が掛かっていないと言う事は油膜が切れていると言う事です) こうした条件では優劣が逆転するということも有り得ることです。

またオイルは少なからず劣化するものですが、いざ劣化した後でどういう性状になるのかもはっきりしていません。つまり鉱物油は歴史の裏付けがあるのに対し化学合成油の場合には恐らくは大丈夫なのでしょうがわずかの不安もあります。この問題については探しましたが見つかりませんでした。

現在のオイルの性能から言えば部分合成油で十分な性能である事から私はしばらく部分合成油を使っていました。
部分合成油は25%の化学合成油で粘度指数を上げ、万一化学合成油に劣化後の問題があったとしても75%の鉱物油が最低限の性能を受け持つと言うなかなか合理的なオイルだと思います。

 しかし3,000kmでの交換なら劣化後の問題はありませんから、現在は出来るだけ車を大切にする意味で化学合成油を使っています。

 R500Rのようにピストンスピードが26m/secに達する物ではオイルの性能が重要となりますから化学合成油を短いサイクルで使う方が良いでしょう。さらにサーキット走行などをする場合には油温がかなり上昇して部分合成油の添加剤が変質するという問題があるそうですから、やはり化学合成油が良いでしょう。これは油温が上昇する空冷のサイドカーについても言えるでしょう。ただし古い車では化学合成油だとゴムを痛めるという問題もあるようです。

さらに後で書きますが、ドライスタートの問題からも化学合成油のほうが安心と言えます。

オイルに関するよくある疑問

<高いオイルを長く使うのと安いオイルを短く使うのとどちらが良いか>

 4L10,000円のオイルを1万kmごとに入れるとオイルの汚れがひどくなります。オイルが劣化する可能性もあるしこの汚れの中にスラッジの粒子が含まれており、これがベアリングに入ると良い影響はありません。またオイルの通路をふさぐ事もあります。
一方4L3,000円のオイルを3,000kmごとに交換した場合、3,000円のオイルでは性能が悪いですからやはり良くありません。5,000円のオイルを5,000kmごとに入れるのが良いでしょう。

<異なるオイルを混ぜるとどうなる>

 これまで、ここ5年ほどでもペンゾイル、バルボリン、BPのVisco Alpha、Vervis Formuraと使って現在は化学合成油に至っています。オイルの銘柄を変える際は半端にあまるものが出てきますが、(さらに時々どこかから安い1L缶を貰ってきます) こうした物は全てヤマハセローにぶち込んでいました。(♪ごめんねっセロー)
セローは40,000km走りましたが、エンジン本体はいたって好調でした。
セローで40,000kmなどと言うのは珍しいのです。
(疑う方は街中のセローのオドメーターを見て下さい)

もともとオイルをドレーンなどから抜いても0.3Lほどはエンジン内に留まりますから、他の物と混ぜてはいけないとなると銘柄を変えられない事となります。
昔植物油のカストロールRなどがあった頃には鉱物油と混ぜると問題が発生しましたが、現在市販のオイルでは成分が近接しており、さらに問題が出ないか混合テストをしています。

<あまり走らない場合でも1年に1回交換すべきか>

 エンジンの中というのは密閉されている訳ではありませんが、かといって外気が自由に出入りするものでもありません。走行後にエンジンを止めた際、エンジン内部にはブローバイガスと水蒸気が充満していますが、この水蒸気は冷却されてエンジン内で結露します。

この水蒸気がオイルと反応して無くなれば外から新たに水蒸気が入ってくる事が考えられますが、オイルはこうした条件下では滅法強く常温で水蒸気と反応するような事はありません。

オイルが運転中にさらされる高温高圧高湿度から見れば停止したエンジンの中などはさながら無風状態と同様です。

従って2,3年でオイルが劣化するとは考えられません。ST1100サイドカーでは1年半での交換を10年続けましたが全く問題ありませんでした。ブローバイガスの問題についても、これは運転した回数、つまり距離に依存すると考えられます。

なおオイルの状態をチェックするには抜いたオイルで診るという方法もありますが、フィラーキャップに付着したオイルで見るのが一番有効です。

暖機運転の重要性

 タクシーなど営業車は40万kmも走るのに一般車ではそうは行きません。これはなにが一番違うのかというと一回当りの走行距離が違う(冷間始動の回数はさほど違わない)と考えるのが妥当なように思います。

と言う事はエンジンがまだ十分に温まっていない内の磨耗や疲弊がかなり大きいと言う事でしょう。ピストン・クリアランスで言うと、エンジンを始動すると先ずピストンが加熱されますからクリアランスは小さくなります。その後シリンダーが徐々に加熱されてクリアランスが大きくなり、始動30分位で所定のクリアランスになります。
従ってこの間はフルスロットルを慎むべきです。
この解釈は
「究極のエンジンを求めて」 83頁 (兼坂弘著 三栄書房 1988年) によります。

ただし普通に走る程度では(オイルの供給さえ十分であれば)エンジンはほとんどダメージを受けませんから車を止めたままでの暖気は必要ないというのが私の持論です。

 私の場合始動したらすぐに走り出し、国道に出るまでの10分は出来るだけ穏やかに走り、水温が80℃になったら普通に走ります。始動30分ほどで油圧が下がって一定になったら暖気終了と見て急加速OKとしています。
うちの近所にもいますが車を止めたまま10分ほども暖気をし、その後急加速をして出て行くと言うのは全くまずいやり方です。(必要ない事をやり、やってはいけない事をしている)

ドライスタート

さらにいわゆるドライスタートの問題があります。これは長い間車に乗らずにいた場合に油膜が落ちてしまってエンジンスタート時に固体間接触が起こるという問題です。

これを防ぐには粘度の高いオイルのほうが油膜が落ちにくいということもありますが、油膜が落ちるということよりも蒸発してしまうことがありますから鉱物油よりも化学合成油がいいということになります。

またオイルフィルターを交換する場合にはカラのフィルターをつけてそのままエンジンをかけるとかなり長い時間オイル供給がストップしますから、フィルターの中にオイルを入れてからつけるなどの工夫が必要です。フィルターの交換は必要以上にはしないほうがいいでしょう。

マイクロロンは効くのか

 私は初めはマイクロロンで処理したクルマがオイルなしで走ったという宣伝はでたらめだと思っていました。オイルなしではピストンの冷却が出来ずすぐにピストンが溶けるはずだと思ったからです。

ところが数年前に販売元の主催で箱根で実際に公開テストが行なわれたそうで、その時にはオイル無しで最終的にはカムシャフトが焼き付いたそうですが、それなりには走ったそうです。(ピストンは空気だけでも結構冷却されるんですね)
ということは(油膜が切れた時の)摩擦低減という意味でそれなりの効果は確かにあるようです。元自動車技術者のSTO(スーパーセブン代理店)の坂倉さんも特にレースでの効果を認めているようです。
しかしレースはともかくとして一般に公道を走る時にはオイルさえきちんと入っていれば油膜が切れるということはなく、現在の通常の車は10万キロ走れます。したがってマイクロロンを入れたときの弊害はないのかを心配するほうが妥当なように思います。

なおメタルというものはもし直接接触が起きた時には主成分である錫が摩擦熱で溶けて滑りを維持するそうです。

追記(2004.9.5)

最近福野礼一郎さんの 「クルマはかくして作られる」 などを読みましたが、自動車メーカー技術者の考えとして添加剤の類はクルマにはやはり良くないようです。エンジンオイル添加剤、ATF添加剤、ガソリンタンクの水抜き剤、タイヤの艶出し剤全てよくないそうですね。
オイルなどは酸化防止や粘度安定など全ての条件を考慮した上で絶妙のバランスの上でブレンドされていますから、ある特定の添加剤を入れるとそのバランスが崩れて副作用が出る場合が多いそうです。

添加剤などというものは値段そのものはそれほど高いものではないので、入れたほうがいいのであれば最初から入ってるということですね。

硫黄系の添加剤などはベアリングを腐食させるしガソリンタンク水抜き剤のアルコールも腐食の原因となるそうです。
そう言えば昔英国製ビッグツインで二硫化モリブデンの添加剤がオイル経路をふさいで焼きついたという話がありました。

マイクロロンの場合も恐らく(一時的に?)摩擦を減少させる効果はあるのかも知れませんが、長く時間が経った場合にどうなるのかはよく分かりませんね。

あるテフロン系添加剤を入れた例でメタルの下部だけに強く浸透してテカテカに光ってた例もあるそうです。こうなるとメタルのクリアランス寸法が変わりますから油膜の中にシャフトを浮かせて固体の直接接触を防ぐというメタルの本来の働きは阻害される可能性があります。

人間に例えればあるスタミナドリンクを飲んだら飲んだ直後は元気になるが、長い間飲み続けたら内蔵に支障をきたすということもあるかもしれませんね。

一発勝負のレースに使うだけならそれでいいのかも知れませんが・・・。
現在はピストンもスカート部など必要な部分には低μコーティングしてあるそうです。
個人的結論としては余りいろいろ入れないほうが良いように思います。

非ニュートン系オイルはいいのか

非ニュートン系オイルは回転するものに絡みつく性質があるということです。ニュートンの力学の法則に従わないから非ニュートンという訳ですね。これについて疑問に思うことは非ニュートンがそんなにいいのならなぜBPやモービルなど名の通った大手からは出ていないのかということです。現在はごく一部から市販されているだけです。
良く知られていない小さな会社に作れるものをBPやモービルが作れないということは普通に考えればあり難いことです。

オイルというものは単純な潤滑性能だけでなく酸化防止、粘度安定、劣化した後の性状が有害でないことなど実に様々な性能が求められます。名の通ったメーカーからは市販されていないということは潤滑性能以外の部分で何か問題があるのではないかという疑問があります。

肝心の潤滑性能に関しても、回転するものに絡みつくということはカムシャフトの潤滑には確かに有利かもしれませんが、物理的性質が普通のオイルと全然違うということは、メタルやシリンダー内壁の潤滑はどうなのか。こういう部分の潤滑は普通のオイルが持っている物理的性質を前提にクリアランスなどが設計されています。物理的性質が全然異なるオイルの場合大きな問題が出るということもあるのではないかという疑問もあります。

ただし非ニュートン系は油膜保持能力が強くドライスタートに効果があると宣伝されています。これが事実であるとすれば大きな効果があることも考えられます。

結局今の私の判断としては信用できる名の通ったメーカーのものを買ったほうが無難だろうということです。
現在市販されている普通のオイルでほとんど不満はない訳ですから、危険を冒してよりいいものを求める必要はないだろうということですね。

2000.11.27 作成
2004.9.5   追加
2006.5.14  追加
2009.12.23 改訂

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