蒼井上鷹 14
	4ページミステリー

　『4ページミステリー』のタイトル通り、すべての作品が4ページ以内に収まっている。収録作品は何と60編。僕が読んだ本の中でも、最多だと思われる。

　僕が蒼井上鷹という作家に惹かれたきっかけは、『九杯目には早すぎる』『二枚舌は極楽へ行く』という素晴らしい短編集に出会ったからである。中でも、短編に挟まれるように配置されたショートショートに、秀逸な作品が多かった。本作は全編がショートショート、しかも文庫オリジナルということで、刊行前から期待は大きかった。

　最初に苦言を呈しておきたい。全60編中、『九杯目には早すぎる』『二枚舌は極楽へ行く』『ホームズのいない町』『11人のトラップミス』からの再録が計17編もある。60編も集めるのはそりゃ大変だろうけど、再録が1/3近いのは多すぎないか?

　とはいえ、蒼井上鷹さんが60編ものショートショートを書いたのは事実である。よくぞ書き上げたものだと思う。一読すると、江坂遊さんのようなバリエーションには欠ける印象を受けるが、それはあくまでミステリーという縛りがあるため。4ページ内に起承転結を入れ、ミステリーとして体裁を整えるのは、決して容易ではないだろう。

　本作を読んで改めて思う。やはり、蒼井上鷹という作家の良さは、短編でこそ発揮される。蒼井作品は構成がごちゃごちゃしがちだが、本作は1編当たり2000字以内という制限を設けたため、結果的に無駄が削ぎ落とされ、シンプルにまとまっている。

　一方で、こうも思う。60編もの一気読みは、どうしても1編1編の印象を薄くする。完成度にもばらつきがあるし、似たようなオチも散見される。短編の間に挟まれてこそ、蒼井上鷹のショートショートは輝きを放っていたとも言えるのだ。また、シンプルな分だけ、蒼井作品独特の奇妙さには欠ける面もある。1ファンとしては何とも悩ましい。

　一気読みできる嬉しさと、個々の印象が薄くなるもどかしさ。本作は1日数編くらいのペースで、細切れの時間でも利用してゆっくり読むべきなのかもしれない。ぐだぐだ書いたが、一般読者にも薦めやすい作品が1つ増えたことは、素直に喜びたい。