宮部みゆき 52 | ||
チヨ子 |
連作ではない現代物の短編集としては、『人質カノン』以来となる。本作は単行本未収録だった短編5本を収録しているが、ただの寄せ集めではない。ホラータッチの作品ばかりを集めている点に大きな特徴がある。時代物なら怪異を扱った作品集は数多いが、現代物では珍しい。しかも宮部みゆきさんの自選である。
「雪ン子」を改題。うーむ、何て季節外れな。結末は何となく読めたかも。
当初は収録しない予定だったらしい。古き良き商店街を舞台にした幽霊譚。商店街が全国的に寂れる一方のため、古さを感じないのは何たる皮肉か。
本作の一押しはこれだ。大沢オフィス主催の朗読会で、宮部みゆきさんは着ぐるみが着たかったそうである!!!!! そしてそのために書かれた作品がこれ。まいりました。
『理由』で第130回直木賞受賞後の第1作として書かれた。娘からある事件について調べたいと頼まれた父。娘の力作が意外な方向に展開していく、ひねりが光る1編。
本作収録作中最も長いが、最も困った作品。文庫書き下ろしで刊行された『R.P.G.』を彷彿とさせるが、「電波」度はこちらの方がはるかに高い。解説で難物『英雄の書』と関連が指摘されているが、こちらの方がまだわかるような…。
全5編、ボリュームに欠けるのは否めないが、味わい深い作品が揃っている。脳がとろけそうな真夏の読書にはこのくらいがいいかもしれない。なお、解説には宮部さんのインタビューも収録されており、宮部ファンならそちらも見逃せない。超レアショットも必見。