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C58 239(トミックス)

C58 239

今年トミックスからはC57のバリエーションとしてC55 3次形・北海道仕様が発売されたばかりですが、それから1年も経たずして完全新規作成のC58が登場しました。
C55の発売の翌月の発表でしたから本当に驚きました。もっとも品番はC55よりもC58のほうが若く、企画は先に始まっていたとのことですけども。

2023.12.28

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諸先輩と

C58は今までいくつものメーカーから発売されています。一番有名なのはKATOが1990年に発売した縮尺1/140のプラ製品ではないかと思います。
プラ製品ではマイクロエースからもユニークなスタイルで発売されており、2017年には新たなバリエーションも発表されていますが、その後動きはありません。
今回のトミックス製品は他社のプラ製品が(金属製品も)市場になくなったところに、唯一の存在として登場しました。

トミックス C58 296 トミックス C58

トミックス C58 296
(拡大写真)

2023年デビュー。期待の新人です。

マイクロエース C58 296 マイクロエース C58

マイクロエース C58 296
(拡大写真)

2004年の最終製品です。特徴は背が高い。

KATO C58 KATO C58

KATO C58
(拡大写真)

2013年の最終生産です。

プラ製品のみ並べてみました。
一番新しいトミックス製品が、現在の蒸機製品群の中では最も違和感のないサイズとシルエットかと思います。これを待っていた方は多かったでしょう。
公式サイトの写真は大きく見えますが、12センチ程度の大きさで、とても小さく感じられます。

KATOは縮尺が異なるためこうして並べると大変に長いです。ただし発売当時のKATOの蒸機はすべてこの縮尺でしたし、一番普及していたのもKATO製品だったので、その中で浮いた感じはありませんでした。今でも使われます。

マイクロエースは…マイクロエースですわね。全長がほぼ1/150、全高はKATOとあまり変わらない変形スタイルです。

KATOとマイクロエースの動輪径は約10mmで、ほぼ 実物の1/150になっています。ただしNゲージの走行に必要なフランジ高が実物よりも高いため、動輪同士の間隔も実物からの縮尺よりは広く取る必要があり、動輪部分のホイールベースは実物に比べ長くなっています。

トミックスは動輪軸距離を実物と同程度としており、代わりに動輪直径は他社よりも小さめの直径9.8mm程度になっています。
ランボードの高さやキャブ屋根の高さは実物のほぼ1/150になっているようです。

今回のトミックスは機炭間の距離を相当頑張ったようで、今までに比べれば視覚的にかなり狭く感じられます。
もちろん実物はもっと狭いですが、Nゲージの量産品でここまで詰められれば十分かと思います。これでもC280を通過します。
当時普通だったマイクロエースの機炭間隔がずいぶん広く見えます。もっとも、当時もドローバーを切り詰めて短縮する加工は個人レベルでしばしば行われていたと思います。

C61とC58 機炭間隔

写真上は機炭間の広さが目立ったC61 20、写真下が今回のC58です。感じの差は大きいですね。
C61 20もマイクロエース製品などに比べれば普通でしたが、このころすでにNゲージの蒸気機関車は大変なスピードで進歩していたので(KATOがノリノリ)、目立ってしまった感じです。

そのほか、火室下部と従台車の間も結構狭くなっています。ドローバーが少し厚くなっているぐらいで、特別ものすごい工夫があるようには見えませんが、実物のC58の形状も手伝ってうまい塩梅になっているのではと思います。

全体的に今までの超・保守的なトミックスに比べて攻めの姿勢が感じられ、喜ばれているのではと思います。不具合が出たら次に直せばいいんですし。個人的にはキャブとテンダーなど、カーブや勾配の入り口でガツンガツン当たったとしても構うもんか…という雑な姿勢ですからね(笑)。そういうところを走らせなければよいわけですし、一瞬の出来事と、常に見えることのどちらを取るかという選択でもあります。これは別な考えを持つ方がおられてもまったくおかしくはありません。

なお従台車と火室の隙間に関していえば、トミックスができるだけ「狭く」しようとしているのに対し、KATOのC57などは隙間を「なくす」ことを前提に設計されていますので、目標がそもそも異なるようです。
ちなみにKATOも隙間がまったくないものは一部で、今のC62などは狭い中にあっては広めです。

という感じでちょっと外観を見ていきます。C58 239に興味のあった方はすでに皆さんお持ちでしょうし、メーカーの公式サイトに鮮明な写真がいくつもあるわけで、何かここに貼るほどのものはないのですけども。

外観ツアー

公式側

側面やや上から。
外形がきちんと整っていることがわかり、格好いいです。

前面

ナンバープレートの微妙な位置やサイズによる、239号機の表情がよく表れています。

ライトは静態保存中とは違い国鉄現役最後のLP405に戻されており、模型もそれを再現しています。当時の一般的なスタイルのひとつなので、テンダー石炭の改造程度でそのまま国鉄機として使えるのが嬉しいです(もちろん改造程度は人により底なしですが)。

デフ

除煙板は前側だけ斜めに削いで薄く見せる昔ながらの方法で、特に変わってはいません。
C55に続き、裏側には模様のモールドが付くようになり、KATOでいえば2007年のC62 東海道形(初代)あたりの表現に近いです(まあ定番)。

後方少し上方から

塗装の具合は大変良いと思います。今年発売されたC55北海道形と同様の程よいつや消しです。たとえばKATOのD51標準形と並べてもさほど違和感ありません。何にしても好みの程度は人それぞれかと思います。
塗装は厚塗りを避けており、火室下部の上側など微妙に塗料が回っていないところがありますが、ランボードに隠れて目立ちはしません。

例えばKATOのD51 200の塗装も、黒部分は光沢というよりはつや消し系になっています。金装飾が施されているので一見派手に見えますけども。保存機だからといってピカピカ塗装にされているプラ製品は少ないと思います。

非公式側

ダイキャスト部は同社C57やC61のような赤みがかったものではありませんが、きかんしゃトーマス号のようなピカピカのテカリのあるものです。角度によってはギラついて見えることがあります。
どうせ表面処理するならつや消し黒がいいのになと思いますけど、このほうがよい理由があったのでしょうか、あるいはこれでもいいというぐらいの温度感であったのか。

後方から

全高1/150の強みが生きる、後方からの眺めです。
今まで、客車との高さのバランスがうまく取れるのはワールド工芸ややえもんデザインの金属製品しかありませんでした。

もう少し脂っこい話も交えて、少し部分を見てみます。
模型はレイアウトで走らせて眺める大変小さなものですが、こういう写真にすると異常な近接拡大になってしまい、実際のイメージが正しく伝わりません。
今はPCではなくスマホの小さな画面でご覧になる方が大半だと思いますから、うまく相殺されていればよいのですが。

前面

主灯は点灯式で、煙突の回転でON/OFFできます。説明書の回転方向は逆になっており、注意書きが封入されています。

なお私は無作為に買った中でライトがまったく点灯しないものがありました。基板は正常なのですが、接点の具合がよくなくて通電部に接触していませんでした。類似のことはC11 325(絶版)でも経験したような気がします。

副灯はC55と同様の表現で、どうもこれは透明レンズははめ込まれていて、そのうえで周囲が銀塗装されており、レンズ部にも銀が少し回っているように見えます。間違っていたらごめんなさい。

ランボードの傾斜部とバネ箱の上部で、網目パターンが異なっているのが凝っています。復活蒸機の場合現役時代と同じ網目板がなく、現代の滑り止め板が代用されているために、パターンが変わっていることもあるそうですね。

キャブ周辺

色々思うところのあるキャブ廻り。あとでまた述べます。

今回ついに窓が開きました。窓、ドア窓が全開放の状態です。せっかくきかんしゃトーマス号で開いたのに、C55でまた閉じたので、ちゃんと開いて嬉しいです(全閉が好きな方ごめんなさい)。
ただC55で閉じたのは、C57 135のガラスパーツを共用するためではないかと想像してみます。

開いた窓に微妙にひじ掛けのモールドが付いたことが発表時の動画でアピールされていましたけども、KATOが30年前のC58で、何ならその前のC57や初代C50でもやっていたことなので、最初は動画配信ならではのジョークで仰っているのだと思っていました。公式サイトでもこれがアピールされていたので、本気のアピールだったのかしら…?
ともかく、あるのはいいのではないでしょうか。私はなければプラ板を切って貼っています。

キャブ天窓は従来製品に続いて開閉構造ですが、今回部品精度が悪くて大変ゆるいです。ゆるいだけならいいですが後ろが浮いたりします。写真を撮るたびにブロアーでホコリを吹き飛ばしているのですけども、そのつど天窓の後部が浮いたりしてまあイライラしました。あとで必ず接着するゾ(笑)。

なおゆるいといえばキャブの取り付け自体が緩く、簡単にぐらついたり外れたりします。後部にも傾きがちで、機関車全体が傾いて見えたりするので、これも差し支えないようなら接着したいところ。

ボイラー上部とドーム

もうKATO・トミックスともに普通の表現といえばそうなのですが、各種配管やロッド類が立体的で非常に精密感のあるボイラー表現です。
KATOの現在の製品との顕著な違いは、空気作用管の取り付け部の塗り分けがないぐらいでしょうか。ただしKATOには現行製品のC58はないので厳密には比べられません。

安全弁の金属光沢に対し、逆止弁の金モールドはプラっぽさが目立つので、改めて金か黒を塗ればもっとよくなるかなと思います。

ドーム形状はシルエット的にはとてもよくできていると思います。何度も繰り返して恐縮ですが、C57 1はやっぱりあまりうまくいっていなかったと思うのですよね。
今回、ドームの3D造形的にはちょっと気になるところもあって、写真ではわからないと思いますが裾の近く、加減弁の少し後方から後部に絞り込まれていくあたりの形が、もうちょっと何とかならなかったかなと思います。軽く角のような箇所があったりするんですよね。でもまあ、わからないと思います。

実物のドームはもともと何とも数値化しにくい形なんですよね。数年後には一般の人でも生成系AIを使って、「このあたりヤスリで滑らかに削ったようにして」なんて対話を繰り返しながら3Dモデリングができるようになっているかもしれません。もしかしたら、もう今にも。

テンダー後部

テンダー後部のハシゴや配管などは別パーツで浮いています。写真ではゴツく見えるかもしれませんがそうでもないです。特に上部に出ている2本の曲がった手すりは大変細いです。

後部ライトは大型で、静態保存時にはこれが前側に付いていました。ちなみにこの模型でも前後のライトは差し替えることができますが、一部の分解が必要です。

テールライトはトミックスの好みなのか、レンズ部分が以前から別パーツです。素材感はありますが、周囲のフチが目立ってしまうので形態的には一体モールドのほうがいいかなと思うところ。たとえば前デッキに付いている標識灯は一体モールドですが、あちらのほうが似ていると思うのですよね。でも本当にそのへんは好みの問題でしょうね。

テンダー連結部

連結部を外したところ。脱着式ドローバーはしっかり手ごたえがあって、脱着はしやすいです。この方式はKATOが先ですが、今はKATOのドローバーはより細くなり、連結の手ごたえも結構はっきりしないことが増えてきました(油断するとボトッと取れたり)。

ちなみに実物のC58は初めての密閉キャブだったためか、密閉度がその後の形式に比べて高いです。

購入時はキャブ内にスポンジのスペーサーが挟まっているので、それを抜いてから使います。そのときにキャブの組み立てが甘いことに気付いたりします。
スペーサーを取り忘れても結構走ったりしますが、脱線することもあるので忘れないほうがよいです。

バックプレート

内部にはバックプレートがあり、その中にモーターがあります。現在のプラ製蒸機はモーターが火室部からキャブ内前方に収められているため、実物より後方ではあるものの、バックプレートがあることが普通になっています。

先輪

模型の先台車周辺はかなり苦労の見えるところです。表現上はシンプルで、ダイキャスト前端にも台枠の形状やディテール表現は特になく、先台車との隙間も大きめです。
スノープローはレール面0.5mmぐらいの高さが確保されていますが、線路状態によっては引っかかることがあるようで、そのようなお知らせは2件ありました。
(次の写真でC55と比べると高さは相当違います)

さて、すぐ目に留まるのは先輪の大きさと形状かと思います。直径約5ミリと普通の先輪より小さく、スポークも1本多いです。

C55とC58の先輪

左がC55、右がC58です。実物の先輪はどちらも同じ直径560ミリですが、見ての通りサイズ感はだいぶ違います。フロント周りで何となくこのC58が腰高に見えるのは、根本的には車輪の大きさに起因しています。実際この直径はマイクロエースの先輪と同じです。カーブ通過のためのひとつの対策かと思います。

なおトミックスはフランジの規定サイズがKATOより高いようで、その分不利な部分があります。有利になる条件も色々あると思いますけどね。

ちなみに私は先輪が普通の曲線でどうしても不意に脱線するものがありました。あとで調べました。


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