Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>D50(3Dプリンター) 第2版
2022.3.27
6年前に業務用3Dプリンターで作ったD50のデータ(→にせD50)を、手持ちの個人用3Dプリンター向きに改造しました。造形はうまくいきました。
データの修正内容などは後のほうに書いてみます。かなり情けない中身です。
以前はカプラー解放テコ、つかみ棒、安全弁などが他からのパーツ移植でしたが、今は自前パーツの一体造形です。この6年間に色々な機関車を作ったため、主要パーツはほとんど自前データがあります。
D50 第2版(個人用3Dプリンター)
D50 第2版(個人用3Dプリンター)
(拡大写真)
不十分な箇所はまだありますが、内製できるようになったので今後はこのデータを基礎にします。
スポーク輪心も自前です。
D50 初代(業務用3Dプリンター)
D50 初代(業務用3Dプリンター)
(拡大写真)
6年前の初代です。今も成型の変化はなく、しっかりしています。
動輪はC12の流用です。
…向こう側のつかみ棒がいつの間にかなくなっているゾ?(このあと直しました)
両方の造形結果を比べますと、寸法的な精度はまだ当時の業務用3Dプリンターのほうがよいように思います。ただ全体的な表現には大きな差を感じませんでした。良くもなっていませんが、このデータに関しては同じように代わりができそうです。
また個人用3Dプリンターの場合、気分的に造形費用はタダです。ただし手元に消耗品が残っている場合ですね。もちろん現実にはタダではありませんが、曖昧に埋没してしまいます。
従台車とテンダー台車はD51の流用です。初代の種車はD51 498だったので台車は黒色ですが、今回の種車はD51標準形なので若干薄い色です。
ナンバープレートは初代がD50 140だったので、てきとうに1引いて139にしました。いずれも実機とは違います。
シリンダーブロックには微妙に傾斜が付いているため、4K液晶のドットサイズ(0.035mm)ごとに段差ができて筋目が入っています。見る角度によっては分からないことが多いですが、ズドンとまっすぐにした方がいいかもしれません。
テンダーのハシゴは以前は壁にべったり一体化させていました。今回は浮かせてみました。十分行けることは他の例からわかっていました。
デッキの標識灯は何も考えずデカ目のものをコピーしてきてしまいました。これは小さいものに替えておこうと思います。
ボイラー上部の異常拡大です。1辺0.035mm(液晶スペック上は)の細かい立方体が敷き詰められています。 液晶パネルを利用した3Dプリンターでは、近い将来これが完全にスベスベになることは難しいのではないかという印象を持っています。
現実的には必要な部分のみヤスリがけ等で対処し、他の部分はこういう素材感であると割り切って付き合うのがよいように思います。レイアウト上にあると全然わかりません。
3Dプリントの車体はデジタル印刷物の一種、市販されていないものを手っ取り早く造形してパッと遊ぶものというのが今の私の考えです。そのため、なるべく後付けのパーツを減らし、造形と塗装だけで済む構造にするのが目標です。
ただD50の場合、どうしても動輪の交換または輪心の改造の問題があるので、一手間かかってしまいます。
今回目をつぶってしまったところもまだあるため、いずれ次のリマスターもしたいです。もうC12の動輪をかき集める必要もなくなったので以前よりは気楽です。
その前に新しいメーカー品が出てほしいのが本音です。
●おもな参考書籍(書籍名のみ・一部)
・蒸気機関車設計図面集 原書房
・蒸気機関車スタイルブック(旧版・新版) 機芸出版社
・TMS設計図シリーズ30 国鉄1D1加熱テンダ機関車 形式9900(D50) 縮尺1/50 鉄道模型趣味1971年11月号 機芸出版社
・直方をねぐらとした蒸機たち D50、D60 鉄道模型趣味1996年11月号〜1997年1月号 機芸出版社
・蒸気機関車の角度 機芸出版社
・蒸気機関車メカニズム図鑑 グランプリ出版
・国鉄蒸機の装備とその表情(上) ネコ・パブリッシング
・国鉄蒸気機関車史 ネコ・パブリッシング
ちなみに蒸気機関車スタイルブックの旧版と、新版および1/50のTMS設計図30では、正面図と上面図で端梁の寸法が違っているように見誤りやすいのでご注意を。よーく見ると測っている箇所がちょっと違うんですヨ。
ほか、スタイルブックの旧版の図面は公式側、新版の図面は非公式側になっています。個人的には1/50のTMS設計図30が一番使いやすかったです。情報量はスタイルブック新版と同じですが、サイズが大きいので寸法を測りやすいです(広げると場所を取りますが)。
原書房の蒸気機関車設計図面集はもっと大きい1/40ですが、D50に関しては新たに画き直された図で、ちょっと感じが他と違います。寸法を拾う際には他の書籍も参照してよく調べるのがよいと思います。正面図と側面図でボイラー中心線の高さが少しズレていたりもしますので、直接測り取る際には要注意。
以下はデータのリマスター?や造形の話で、個人的なことになってしまいます。
最初のD50は強度や適切な外板の厚み・配管の太さなど何もわからなかったため、今とはだいぶ違う考えで作っていました。今の自分の3Dプリンターでは細すぎたり太すぎたりするところがあり、全体的に見直すことにしました。
旧データはボイラーが丸ごと1ボディーに結合されており、配管や各種機器に個別のボディーがありません。当時の色々な勘違いで、制作中も常に結合しておかないと正常なSTLデータができないものと思っていました。当時何かのチュートリアルでそう読んだと思うのですが、たぶん私の解釈ミスです。
ランボードは分割出力する可能性もあったため別ですが、最終的にはボイラーと結合して1ボディにしてからSTL出力していました。
このままでは編集に時間がかかるので、まずパーツをバラバラにしました。欠損部が多数できるので作り足します。結局ボイラーをつるつるにして全部付け直すような感じでした。
元のデータはDesiginSpark Mechanicalで作っていました。今はFusion360を使っているためデータ変換が必要で、そこまでは数年前に終えてありました。
→DesignSpark Mechanicalの部品をSTEP形式で書き出す
しかし、よく見ると正しく形状が再現されない箇所があちこちにありました。例えばこのスチームドームの裾が異常なねじれ方をしています。切り取って作り直そうにも、3D CADが強制終了したりして手が付けられません。
この仮っぽいタービン発電機は、面の一部がドーナツ状に落ち込んでいます。変換のどこかの過程で、面の法線の符号が逆になってしまったのかもしれません。これもエラーばかり起きて簡単には切り取れません。
他にも、無理なフィレットを施して結果的にできていた形状を中心に、色々な問題が起きていました。同じ3Dの内部データでも、それをどう解釈するかは3D CADによってあいまいなところがあるのかもしれません。PDFの閲覧ソフトでも、製造メーカーによってデータの解釈が変わることがありますものね。
何だかんだと2週間以上かかり、壊れた箇所・変な部品を作り直しました。
D50のボイラー外形は外から見ると一直線でテーパーが付いていませんが、使ったD51の動力は火室部分の幅が広くなっているため、この模型のボイラーも後部の横幅を少し広げています。しかしテーパーを付けて広げるとすぐバレるため、ボイラーバンドをひとつ通過するごとに直径とボイラー中心を変え、横から見た時に一直線に見えるよう上端を揃えています。
初回作からそういう構造だったのですが、それを6年の間にすっかり忘れていて修正時にハマリました。
空気作用管もセグメントごとに位置を変えて、横から見た時に直線に見えるよう、また斜めの箇所ができないようにしています。厳密にいうと空気が通らないです。
D50はランボード前方が1段下がっているため、シリンダー上部のダイキャストブロックと干渉します。そのため干渉部分のランボードに大穴を開けています。強度的な懸念から穴周辺のディテールも変えています。デフレクターに隠れるのでバレません。
初回作では外部の3Dプリントサービスを利用していたため、個人用の吊り下げ式光造形機に必要なサポート構造は考えられていませんでした。今回は補助的な内部サポートをあちこちに追加したり、うまく造形されるように配管の経路を変えたりしました。
シリンダーブロックはD51の着せ替えです。ロッド一式はD51をそのまま使います。
点検蓋など外見を少し変え、バルブスピンドルガイドも怪しいながら置き換えました。
ピストン尻棒は一体化したので、もし折れたらシリンダーごと交換します。多少の柔軟性があるUVレジンを使うので、それほど折れやすいわけではないです。
モーションプレートとシリンダーブロックの裏側です。
モーションプレートはD51から基本寸法を拾い、形状を着せ替えました。赤い部分にはラジアスロッド、青い部分にはスライドバーを差し込みます。
D50は加減リンク中心と弁中心の高さが同じですから、D51と違ってニュートラル時にラジアスロッドが少し後ろ下がりになります。この模型は今のところD51の着せ替えなので水平です。ただ、シリンダーブロック側の穴の位置を調整するなどして、感じを出すことはできそうです。
各部の形態は色々な資料の寄せ集めです。別に時期や場所を特定するわけではないので、作りやすい形状を適当に選んでいます。
とはいえどうしても保存されている140号機の資料が多いので、部分的に140号機に引っ張られる箇所も出てきてしまいます。完全な平均形?を想定するのはなかなか難しいです。
造形して仮組みしました。ライトは点灯式で、種車のライトを差し込むだけです。今回は種車がD51標準形なので大型ライトになりました。
特に問題なく組み立てられました。ただ、ダイキャスト部にはめたボイラーが0.5mmくらい上方にガタつき、ちょっと気持ち悪いです。はめ合わせの形状をきちんと測れなかったためで、今度使わなくなったD51のボイラーを切り開いてきちんと測ろうと思います。
テンダー台車は前方がステップに当たるので、台車のほうを少し削りました。
造形した部品同士のはめ込み寸法は業務用プリンターのときと同じにしましたが、具合よく合いました。特にテンダーの台車やカプラー、上下組み付けのツメなどはちょうどよくはまりました。もし以前使っていた光造形機と膨張の大きい樹脂でこれを造形すると、まずそのままの寸法にはならず、モデル側の寸法変更に苦労しただろうと思います。
塗装はアクリジョンのブラック:つや消しブラック=3:1程度で、初回よりやや光沢を与えました。すると、どうしてもデフやキャブ側面にできる斜めの線が目立ちそうなので、そこだけ軽くペーパー研ぎしてから塗りました。
(400番で軽く→800番で本作業→1200番で仕上げ)
テンダーは傾けずに造形できたため、軽く入る筋目も真横方向です。これは斜めの筋に比べるとはるかに違和感が少ないので、テンダーは表面処理をしていません。
動力部はスポーク輪心を別途造形して改造し(→KATOの動輪輪心を交換)、加減リンクの上部をカットしてランボードに当たらないようにしています。
個人的な再造形用メモです。露光時間などは長いと感じる方、短いと感じる方がいらっしゃるかも。
・機種 Phrozen Sonic Mini 4K(通常仕様版。グレードアップなし)
・UVレジン xULTRAT Black
・FEPフィルム Peopoly製
・室温 25℃
※3Dプリンター本体、樹脂ボトルも室温に十分馴染ませる
・積層ピッチ 0.035mm
・初期層 6層
・初期層露光時間 35秒
・通常層露光時間 基本4秒。パーツにより変更
・スライサー Chitubox
・ラフト厚 0.2mm
・ラフト高さ 1.0mm
・ラフト傾斜角 45°
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パーツの配置場所がばらばらなのは、なるべく剥離箇所を集中させず、FEPフィルムを長持ちさせようという意図です。
FEPフィルムは剥離性がよく長持ちするPeopoly製を使っています。私は昨年4月にPeopoly製フィルムに張り替えて以来、一度もフィルムを交換していません。今は他社でも改良された剥離性のよいFEPフィルムが出てきているようです。
造形は以前の出力が弱かった3Dプリンターでは大仕事でしたが、今は1日で全部終わります。
以前の機種のようにブレ防止の板を立てたり、板状のサポート形状を追加したりする必要はなく、パーツにサポートの柱を直接ボツボツくっつけても大丈夫です。