Nゲージを始めるには(17)

ある程度の大きさのレイアウトなら、坂道や立体交差を作ることができ、色々変化にとんだ風景を作ることができます。大きな街にお住まいの方なら、いくつもの線路が上に下に立体交差しながら走る鉄道風景を再現したくなるでしょう。模型でそれをかなえることは可能ですが、いくつかのルールを知っておく必要があります。


勾配について

Nゲージの勾配はパーセントで表す

Nゲージの線路に坂を作るには、色々な高さの橋脚を用意して、線路を少しずつ持ち上げてやるのが基本です。地形付きのレイアウトなら、路盤をそのように作り、プラスターなどで土手を作って仕上げます。

3%勾配

注意しなければならないのは勾配、つまり坂の傾き具合です。実物の鉄道での勾配は、パーミル(‰)という単位で表します。これは1000mにつき何メートル上るかというもので、1000mにつき10mの勾配は10パーミルとなります。

模型の場合は一般に実物よりも勾配がきついので、パーミルではなくパーセント(%)で表します。つまり100cmにつき何cm上るかということになります。

およそ3〜4%の勾配を上れる

小さいNゲージの車両ですが、ほとんどの機関車は意外と勾配に強く、大手メーカーのプラ製品なら3%程度の勾配は普通の編成を牽いてちゃんと上ってくれます。一般に古い時代の製品は、内部にぎっしりとウエイトが詰まっているため、車輪とレールの粘着が強くて牽引力があります。ただし、最近の電気機関車や電車は、室内の設備を再現したり、フライホイール等の搭載により、ウエイトが少なくなっており、昔ほどの牽引力がない場合があります。

力のある機関車が短編成を牽くのであれば、4%を超える勾配も時として可能です。しかし、坂の前後でスピードが大きく変化したりして落ち着いた運転ができなくなることがあるので、できることならば最大でも3%くらいにしておくことをおすすめします。

なお、高価な金属製の蒸気機関車は、形態重視のため、プラ製品よりも勾配に弱いのが普通です。坂道にはまったく適さないものもありますので、色々な機関車を走らせたい場合は、レイアウトには坂道を作らないほうがよいでしょう。

高く上るには長い距離が必要

立体交差を作る場合、下を走る列車を乗り越えなくてはならないので、列車の高さと線路・道床の高さを余裕でクリアする高さまで上る必要があります。特に電車や電気機関車を走らせる場合は、パンタグラフなどの高さも考慮しなくてはいけません。

一般的な電気機関車の場合、線路に乗せてパンタグラフを上げると、上を通る線路は床から5cmくらいまで持ち上げてやる必要があります。市販の立体交差用の橋脚も、一番高いものでほぼこれくらいの高さになります。

3%勾配の立体交差

3%勾配を保って5cm上るには、どれくらいの距離が必要でしょうか。5cmは3cmの約1.67倍ですから、水平距離も1.67倍となり、約167cm必要になります。もし畳1枚のエンドレスの一部を立体交差させようとすると、上って下るだけでスペースを使い果たしてしまい、安定した水平部が取れず、落ち着いたレイアウトになりません。小さいスペースでは無理は禁物です。

立体交差を作るには

立体交差セットの利用

組立式のフロアレイアウトでも、必要な橋脚を自分で作って立体交差を楽しむことはできます。しかし、普通の道床付き線路をそのまま持ち上げても感じが出ないので、高架橋付き線路と橋脚をまとめたセットを購入すると便利でしょう。2大トータルメーカーであるKATOとトミックスからは、それぞれの線路システムに適合した立体交差セットがいくつか発売されています。下記は一例です。

KATO
20-861 立体交差線路セット(V2) ¥9,500+税
V2セット
トミックス
91027 立体交差化セット(レールパターンC) ¥8,800+税

どちらもセット内容はほぼ同じで、高架橋付きレールを含むエンドレス一式と、橋脚、トラス鉄橋がついています。KATOの立体交差線路セットの場合、これだけではエンドレス運転はできないとされていますが、別途ターミナルユニジョイナーなどのフィーダーを用意すれば一応できます。また、セットを利用せず、必要に応じて橋脚や高架橋付き線路を単品で揃えても結構です。

橋脚を正しく並べる

橋脚セット

立体交差セットには、写真のような一そろいの橋脚が含まれていますので、説明書を見て正しい間隔で並べます。間隔が不ぞろいだったり、狭すぎたりすると、勾配が急になって列車が登れません。写真の橋脚はKATOのV2セットのもので、一般的な使い方ならおよそ3.5〜4%の勾配になります。

橋脚は小さくて倒れやすいので、じゅうたんの上ではなく、なるべく平らな床の上にセットしてください。とはいえ、たくさんある橋脚をまっすぐに並べるのは結構難しいです。また、線路を敷きっぱなしにしていると、足を引っ掛けて倒してしまうこともよくあるので気をつけてください。橋脚同士の間隔も広めで、どうしても不安定な感じになりますので、倒さないよう、機関車が転落しないよう気を配ってください。

蒸気機関車の立体交差

D51(KATO)の客車列車と、9600(マイクロエース)の貨物列車です。十分なスペースをお持ちなら、勾配を小さくして長編成も走らせることができます。

蒸気機関車の立体交差

同じ立体交差でも、電車を走らせると雰囲気ががらりと変わります。色々なビルを並べて都会のレイアウトにしたくなりますね。

機関車が上らないとき

機関車が空転して上らないときは、橋脚の間隔が不ぞろいになっていたり、床に段差ができていることが考えられるので、調べて修正します。厚紙1枚を下に敷いただけで状況が変わることがあるので、特に坂の上り始めはできるだけスムーズな傾斜になるように調整してください。また、使う機関車にとって勾配が急すぎたり、列車が重すぎたりすることもあるので、無理せず客車の数を減らして様子をみてください。あまりパワーパックの出力を上げて勢いをつけると、かえって空転してゴムタイヤ等を傷めることがあります。

狭い場所でのプラン

立体交差のプラン

立体交差というと、すぐAのような8の字型を連想しますが、この場合大部分が勾配となってしまい、駅などを作るのも難しいものです。また、このように左右対称に作ってしまうと、風景としては不自然になります。そのため、どちらかの曲線を延長して非対称に作ったりもします。

Bは8の字を折りたたんだもので、上り・下りがスペースを共有することができるため、水平部分もいくらか長く取れます。単純なエンドレスに比べて一周する距離も長いので、小さなレイアウトでもよく使われます。

狭いスペースでどうしても立体交差が欲しいときは、Cのように地上部と高架部を完全に分離してはいかがでしょう。立体交差があるので見た目にも変化が出ますし、勾配がないので運転も安定します。この場合、パワーパックを2台使って、地上部と高架部でそれぞれ別の列車をコントロールします。新幹線と蒸気機関車がともに現役で活躍していた時代もありました。そういう時代の変わり目を模型で再現してみるのも楽しいと思います。


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