去年の2月頃からだろうか、右目の瞼が痛みはじめていたのです。瞼だけじゃありません。目の奥、というのか、こめかみの辺りも痛い。でも、いつも痛い訳じゃなかったし、第一病院なんて大嫌いだったので、ちょっぴり自分に嘘をつきながら、「そのうち治るさ・・・」と言い聞かせていたのです。
でも1年にもなるし、歯医者にもいったことだから、ついでに目医者にも行くか(なんで?)ってことで目医者に行ってみました。
目医者は「大したことないよ〜でも、目の粘膜が弱いみたいだからパソコンはほどほどにね〜♪」と目薬をくれました。私は勝手に眼精疲労だと思っていたので、素直に目薬をさしてました。
が、目の痛みは消えません。昔、目医者にコンタクトレンズを売りつけられそうになって以来、眼科不信になっている私は、あの目医者はヤブだったんじゃないかと疑ってました。で、その反面、目が原因じゃないとすると耳かもしれないと思い、耳鼻科へ行ってみたのです。
そして、事態は思わぬ方向に!この目の痛みも、思ってもなかった恐ろしいことが原因だったのです!
ではでは、耳鼻科通院物語、さらには脳神経科体験記をご覧下さい。
耳鼻科で自分の病状を説明した私。「とりあえず右耳見せて。」と言われて見せますが、「なんともないよ」と言われてしまいます。
しかも、しばらく考えた末、恐ろしいことを言い始めたのです。
「交差神経なんとか(覚えてない)症じゃない?脳神経外科に行った方がいいかも。」
・・・脳神経科!?それはまた、口腔外科よりなじみのない病院。しかも神経の病気?そんなの冗談じゃない〜いっそ永遠に自分に嘘をつき続けた方が良かった・・・と後悔しているうちに、耳鼻科の医者は脳神経外科の医者に紹介状を書いてしまった。そして、「行ってらっしゃ〜い!ここから歩いて10分くらいのところだからね〜♪」と送り出されてしまったのです。
ところで右耳を見たついでに掃除をしてくれて、紹介状も書いてもらったけど1550円ってのは高くないですか?
脳神経外科とは一体なんなのか・・・未知の病院へ向かいながら、私の頭の中には色んなことが渦巻いていた・・・。
もしかして神経に異常があるとか?それとも脳に腫瘍とか?手術とかになったらやっぱり頭を開くんだよな?・・・カツラいるやん・・・。
さすがにヘコんだ気分で歩くこと10分ちょい。脳神経外科の看板が見えました。
ドアを開けてびっくり。なんと、ものすごい数の靴があるのです。20人くらい?
「嘘だ〜一体何時間待たなあかんねんっ!」と、違う意味で絶望感に襲われました。
ところが、待合室にはおばちゃんがひとりいるだけ。あれ?じゃああの大量の靴は?と思っていると、妙なことに気付きました。
診察室へ向かうドアらしきものの他にもう一つ、大きなドアがあるのです。どう見ても患者さんだろ、って人達が玄関から入ってきて、受付でカードを出すと勝手にその部屋へ入っていきます。トイレは別にあるし・・・一体あの部屋はなんだろう?そう思っていると、診察室へ呼ばれました。
まずは問診。さっき耳鼻科で説明したことの繰り返しです。右目の目尻の上辺りから目の奥にかけてと、そこから耳の奥にかけて鈍い痛みがする・・・そんな説明を「どうか手術とか言い出しませんように」と祈りながらしてみました。
で、とりあえず簡単な検査。脳なのに何故か血圧から。
私は高校生の頃高血圧で大変だったんですが、今日計って見ると、意外にも上が117で下が78。とてつもなく普通です。
「・・・普通だね・・・。」と先生も沈黙。
次は棒のようなもので顔の右側と左側をあちこち交互に押さえてみて「右と左だと感覚が違ってる?」と聞かれましたが、「別に・・・同じです。」
そう、ちっとも違いが分かりません。
次に取り出してきたのは・・・筆。・・・筆!?
思わず目の前のものを確認しましたが、やっぱり筆です。その筆で先生は私の左右のまゆげをシュッシュッとやって、やっぱり聞くことは同じ。「右と左だと感覚が違ってる?」「・・・同じです・・・。」
筆も敗退しました。次は手です。両手で指圧みたいに顔のあちこちを押さえて、今度は聞くこともちょっと違う。「ここは痛い?」
残念ながら今日は痛くない日でした。というのも、目の痛みはものすごく痛い日と、なんともない日があるのです。「今は痛くないけど、普段は痛い場所です。」と、ちょっとは芸のある答えができました。
と、先生は立ちあがり、私の背後に立ちます。「ちょっと肩さわるよ。」と言って肩もみ(?)を始めた瞬間「うわ!これ凝っとうなあ〜。」のお言葉。
ええ、小学生の頃から肩こりですから。子供のくせに祖母のサロンパスを盗んで貼ってましたから。
しばらく驚いたあと、肩もみ中の手が首のつけね辺りに。
「痛い?」と聞かれましたが、言い終わらない内に跳びあがってました。
何?何が起きた?なんでこんなに痛いの?
「やっぱり痛いか・・・じゃあこれは?」って、次は耳の下辺り。再び跳びあがる私・・・。だって、痛いって!もっのすっごく痛い・・・。
よくテレビで護身術とかやってるじゃないですか。ちょっとどこか押しただけで相手が叫び声あげて倒れちゃうやつ。まさにそれでしたね。ほんの一瞬ちょっと押されただけなのにものすごく痛い。で、よろよろになった私に、「次はそこのベッドに座って。」
座って足をぶらぶらさせてると、取り出した棒は・・・ああ、これは知ってる、脚気を調べるやつだ。
肩のツボを押されてへろへろになったまま、次は膝を叩かれて足をぴょこぴょこ上げる・・・。
この時点で、私はちょっと故障してしまいました。
なんだかもう・・・我ながらおかしくなっちゃったんだな・・・膝上げながら笑い出してしまったんで、先生はえらくびっくりしていました。
唖然とした顔で私を見てるんだけど、手はしっかりあの棒で膝を叩いてて、私の足もぴょこぴょこ上がってるんだな〜それが余計におかしくって止まらなくなってると、「失礼な!人の顔見て笑うなんて!」と、先生はちょっと憮然としています。
で、ここまでで特に異常な部分はなかったらしく「ちょっとレントゲンとCT撮影するから。」と連行されてしまいました。
レントゲン・・・頭蓋骨でも撮るのかな?と思ってると、撮影するのはなぜか首とのこと。なぜ首なのか?まあいいか、と撮影を終えると、次はCT・・・。
そこで私は、故障して忘れていた嫌なことを思い出してしまいました。だって、CTって・・・脳の中を調べるアレです。寝そべってたらカプセルみたいなやつの中に入っていくあの機械。(という説明で分かるでしょうか?分からないよね?)
そういえば私は脳に異常があるかもしれなくてここに来たんだった・・・脚気の検査で喜んでる場合じゃなかった・・・と再びちょっと暗い気分。
ところでこのCTカプセル、テレビなんかだと人が入った状態を外から眺めるのが多いのですが、実際に入ってみるとどうなっているのでしょうか。
なんてことはありません。「きれいな土管」って感じでしょうか。
「力を抜いててね。なんだったら寝てていいから」と言われたので、ありがたく寝ることにしました。部屋の中は暖かいし、病院まで歩いてきて疲れていたし、そんな状態で毛布をかけられたら誰だって寝るさ。
しかし、土管の中は意外にうるさかったです。定期的に「動かないで下さい」とか「リラックスしてください」とか、アナウンスが流れるのです。
寝るんだから邪魔しないでよ〜と思いつつちょっとうつらうつら・・・としかけたところで撮影終了。
そして待つこと約5分。お写真ができました。
産まれて初めてですね、自分の脳みそ見るなんて。なんだかよく分からないけどちょっと面白いぞ〜と思っていると、そうそう、現実は厳しいんだった。一体何の病気なんだと先生の説明を聞き始めます。
「もし腫瘍ができててそれが痛いんなら、ここに何かが映るんだけどね・・・何もないね・・・。」
そう言いながら先生が差したのは細い通路みたいになった部分。セーフ!腫瘍じゃなかった。
「それとね、右側が痛いっていうから脳に異常があるかと思ったんだけど、ほら、左右対称でしょ?きれ〜に左右対称になってるね・・・。」
「・・・はい・・・。」
「・・・というわけで、脳には異常はない。」
おおっ!セーフッ(って何が?)と喜んだのも束の間。だったら何?原因不明だったらもっと嫌なんですけど・・・。
「で、次は首のレントゲン。」
そうそう、首の骨も撮影してたんでした。初体験のCT土管に夢中で忘れてた。
「普通の人は、首の骨が7本あるんだ・・・。」えっらい厳かな先生の声。
な、何、その言い方!まさか私は普通じゃないの?6本とか8本とかなの?
私の頭は、ものすごく間違った方向にではありますがとっても回転が早かったです。こんな発想に0.001秒くらいで辿りつきましたから。
「じゃあ数えるよ・・・1、2、3、4、5、6・・・7本あるね。」
「・・・7本ですね・・・」
7本あるやん・・・変な言い方せんといてくれ〜
「でもね、普通の人の骨はちょっと曲がってるの。そうでないと頭の重さを支えられないから。でも君の骨は、まっすぐなの。」
見本まで出してくれて説明してくれる先生。あ、本当だ。私の首って比較的カーブが緩やか・・・。
ええっ?じゃあ、骨?骨に異常があるの?矯正しなきゃいけないの!?
そう考えて不安に駆られる私に告げられた世にも恐ろしい「病名」それは・・・
「首の筋肉弱いねん。運動不足!水泳しなさい、水泳。」
?????
そう、散々腫瘍だ神経だって言いながら、原因は運動不足。
解説しよう
運動不足で首の筋肉が弱くなると、首に走っている神経も弱くなり、痛みを感じる。
ところがこの神経は脳の奥の、目の奥と交差する部分と交わっている。そんで、本当は首が凝ってるのにそれが目に連動して、目が痛いように錯覚する・・・。
「運動してるんですけど。よく歩いてるし。」あまりに驚いたのでちょっと口答えをしてみました。
「そうじゃなくて、上半身鍛えないと。水泳が一番いいよ。」
「でも、泳げないんです。水泳の授業もあまり受けたことないし。」
「なんで?喘息だったら水泳とかするんじゃないの?」
「水泳もできないくらいの喘息だったんです。ちなみに体育もよく休んでました。」なぜか勝ち誇っている私。水戸黄門の印籠のように絶対的な権力を振るう「喘息」
「じゃあ、仕方ないね。」とうとう先生も折れました。
「だったら手を交差させてね・・・。」先生は別の運動を教えてくれました。両手を交差させて、伸ばしたまま頭の後ろにくっつけて、待つこと数秒。すでに痛い。
「痛いでしょ?そうやって鍛えて。運動しないと、そのうち腰も痛くなってくるよ。」
お言葉ですが・・・口答え(?)第2号
「とっくの昔に腰も痛いです。」
これを聞いて、先生は頭を抱え込みました。
「腹筋とかしてるんですけど。」と言ってみると、「正しい腹筋してる?ちょっとそこでやって見て。」ってことで、診察用ベッドで腹筋教室が始まりました。
脳神経外科で何をやっているんだろう。
その結果、間違いだらけの腹筋をやっていることが判明。体を起こしすぎだし、手は頭の後ろにやらないといけないし、足は浮かないように何かに引っ掛けとかないといけない・・・。腹筋も奥が深いです。
さて、これで病名も「運動不足」と判明したことだし、めでたしめでたし、さあ帰ろう!そう思った私に、「とりあえず首の治療して帰って。」とお声がかかりました。
治療?運動不足の治療って何をするんだろう?と思っていると、連れていかれたのは最初に疑問に思っていたあの部屋です。
先生は、中にいた看護婦さんに「この子はじめてだから優しくしてあげてね♪」と言い残すと行ってしまいました。
最初、そこはゲームセンターなのかと思いました。音がね。なんだかゲームセンターにありそうな「ピコピコ」「ピュンピュン」「チロリンチロリン」って音がたくさん聞こえるのです。しかもなんだか機械が一杯。そして、あの靴の量を裏付けるかのようなたくさんの人々・・・。
一体ここは何の部屋?と思っていると、私はとある機械の前に座らされました。で、首やら肩やらにたくさんコードをつけられて・・・「低周波流しますから、痛かったら言って下さ〜い♪」
低周波?それは「いいとも」のタモリンピックでたまにやってるあの低周波?
思わず身構えました。だってタモリンピックでみんなのたうちまわってるやん。
実際には痛くはないけど、くすぐったいですね。私が再び故障して笑い出してしまったんで、看護婦さんは周波数を下げてくれました。
それにしても他の皆様はもう慣れたものです。隣の人は低周波が終わると、さっさと自分で外して別の機械の前に座り、自分でセットしています。機械が開いてないときは、真中に並んだ椅子にじっと座っているのです。
約10分の低周波が終わると、次に案内されたのは首吊り機の前。天井から、ブランコの小さいやつ、みたいなのがぶらさがっていて、そこに顎を乗せるのです。
「顎を吊りますからね〜。」
そう言われてスイッチ・オン・・・何も起こりません。
あれ?なんともないけど、と思った矢先、顎を乗せていたブランコがぐぐぐーっと上がり始めたのです。
ぎゃあ〜死ぬ〜〜死ぬ〜〜と思いながら必死で戦いましたとも。引っ張ろうとする力に対抗して(だってそのまま引っ張り上げられたら首吊り自殺だし・・・)必死で顎を押さえるのです。で、一定の時間引っ張り上げようとする力は続いているのですが、しばらくすると大人しくなります。
「やった、勝った!」そう思ったのも束の間、また間を置いて、ブランコは上へ上がろうとします。フェイントだ、フェイント〜と必死で機械に戦いを挑む私。・・・で、この戦いは一体いつ終わるのか?これと戦ったらもう帰れるのか、とちょっとずつ飽きて行きます。
ついでに死の危機(え?)を迎えて、目医者さん、ヤブなんて思ってごめんなさい。そうだよね、眼科で運動不足かどうかなんて分からないよね、と懺悔をして天国へ行く準備。
・・・違うって^^;
無事にくびつりブランコも終わり、しばらく椅子に座って待つことに。暇だな〜と思って他の患者さんを見渡すと、あることに気付きました。
みんな、腕組をしているか足を組んでいるかしてるのです。何かの番組で、腰が弱い人は足を組む傾向があるし、上半身が弱い人は腕を組む傾向にある、というのを見たことがあります。
かくいう私も腕を組んで待ってました。そう、この部屋は足腰の弱い人や肩こりのひどい人達が、電気を流したりマッサージしたり矯正する機械を使ったりする広場でした・・・今ごろ気づいたんか・・・。
ちなみにこのお部屋の名前は「リハビリ室」そっか、そういう部屋だったのか。でも脳神経外科でそういうのがあるのは意外でした。肩こりとか腰痛って整形外科かと思ってました。
さて、次はツボ押し機。ドライヤーくらいの大きさの機械で首とか肩とかのツボを看護婦さんが押してくれるのです。
これは別にどうってこともなく・・・というか、いい加減飽きてきたので寝てました。確かに気持ちいいのです。おまけにあったかいし、ゲーム機のような音は、慣れると電車のガタゴトいう音と同じで眠気を誘うのです。
しかし、私には一つ、大きな心配がありました。
お金、足りるだろうか・・・
脳神経外科ってだけで高そうじゃないですか。しかもレントゲン3枚撮って、いかにも高そうなCT土管にも入って、ついでにマッサージ三昧。
足りなかったらどうしよう・・・とだんだん不安になってくる。
整体とかが5000円くらいからだし、それよりは安いだろうけど診察料が・・・と悶々と考えていると、ついに終わりました、ツボ押し機。
これで終わりだと言われたのでいよいよ清算です。一体いくらかかるのか・・・。
が、その前にリハビリ室の説明です。「また来てくださいね」と言われました。どうやら好きなときに来て、好きなマッサージをして(そうでもないか)帰って行くらしい。
面倒くさがりの私にそんなことを言うと、よっぽど首が凝らない限り行かなくなるのに・・・
で、診察代はというと、6710円。やっぱ高い・・・足りたからよかったけど。
でも、リハビリ室の分だけだと350円くらいだそうです。やっぱりCT土管が高かったってことですね。
こうして、重い病気ではないことが判明し、行きとは違って気分も軽く帰途に着きました・・・が、耳鼻科も入れると8千円ちょい・・・たかが運動不足に8千円!?ついでに自分では結構体を動かしてるつもりだったんだけど・・・いくら歩こうが上半身じゃあ関係なかったらしい・・・。
こうして、私の長かった2時間が終わりました。本当に長かった。
そして分かったことと言えば、「首をなめるな」ただそれだけ・・・。
今日から正しい腹筋しま〜す。
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