『イーハトーヴ・オノマトペ症候群』やってます。(^ ^;
      鳥の声があんまりやかましいので                                    一郎は目をさましました。                                                                                by 『ひかりの素足』                 もうすっかり夜があけていたのです。                       小屋の隅から三本の青い日光の棒が                             斜めにまっすぐに兄弟の頭の上を越して                           向うの萱(かや)の壁の山刀やはんばきを                          照らしていました。
         ピュアな「大霊界」しちょるんだなぁぁぁ、これが、『ひかりの素足』。


   
イーハトーヴオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)   .
      小屋のまん中では、ほだが赤く燃えていました。                          日光の棒もそのけむりのために青く見え、                          またそのけむりはいろいろなかたちになって                          ついついとその光の棒の中を通って行くのでした。     「ほう、すっかり夜ぁ明げだ。」                                         一郎はひとりごとを云いながら                                       弟の楢夫の方に向き直りました。

宮沢賢治童話集の私設ファンコーナーです。

               ★宮沢賢治童話集を是非ぜひゼヒ読んでネ★
んで、回目の今回は、


        *** 注文の多い料理店 ***
 
新潮文庫 438円 303p 表紙:加山又造 注解:天沢退二郎 つめくさの道しるべ:井上ひさし .

         短編集なので、目次の紹介をします。
           イーハトヴ童話         楢夫の顔はりんごのように赤く口をすこしあいて                   まだすやすや睡(ねむ)って居ました。
           
『注文の多い料理店』(全)(『鹿(しし)踊りのはじまり』までです。)
             序
──────────────── 2p
             どんぐりと山猫
───────────12p
             狼
(おいの)森と笊(ざる)森、盗(ぬすと)森───12p
             注文の多い料理店
─────────12p
             烏の北斗七星
─────────── 9p
             水仙月の四日
───────────11p
             山男の四月
────────────11p→ ここまでは前々ページです。
             かしわばやしの夜 ───────── 18p
             月夜のでんしんばしら
──────── 9p
             鹿
(しし)踊りのはじまり ──────── 14p
                                         白い歯が少しばかり見えていましたので                            一郎はいきなり指でカチンとその歯をはじきました。
            雪渡り─────────────── 15p
            ざしき童子
(ぼっこ)のはなし────────4p
            さるのこしかけ
──────────── 8p
            気のいい火山弾
─────────── 9p→ ここまではページです。
            ひかりの素足 ──────────── 31p
            茨海
(ばらうみ)小学校────────── 22p
            おきなぐさ
────────────── 7p
            土神ときつね
──────────── 18p
            楢
(なら)ノ木大学士の野宿 ─────── 50p
            なめとこ山の熊
 ─────────── 13p の19短編です。
                   


 
 


『注文の多い料理店』の第十四話です。
      楢夫は返事しないで                                                 何かぼんやり                                                          ほかのことを考えているようでした。                  楢夫はけむそうにめをこすり                                         一郎はじっと火を見ていたのです。      外では谷川がごうごうと流れ                                        鳥がツンツン鳴きました。      その時にわかにまぶしい黄金(きん)の日光が                   一郎の足もとに流れて来ました。      顔をあげて見ますと入り口がパッとあいて                        向うの山の雪がつんつんと白くかがやき                           お父さんがまっ黒に見えながら入って来たのでした。
**** 『ひかりの素足』 31p ****
 

 ピュアな「大霊界」しちょるんだなぁぁぁ、これが、『ひかりの素足』。
  (ええ
え? これ、丹波哲郎のモノマネかよぉ? 似てねぇじゃん。) (^ ^;

 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその14』だよん。(^ ^;

 すぐ眼の前は谷のようになった窪地でしたがその中を左から右の方へ何ともいえずいたまし
いなりをした子供らがぞろぞろ追われて行くのでした。わずかばかりの灰いろのきれをからだ
につけた子もあれば小さなマントばかりはだかに着た子もありました。痩
(や)せて青ざめて眼
ばかり大きな子、髪の赫
(あか)い小さな子、骨の立った小さな膝を曲げるようにして走って行く
子、みんなからだを前にまげておどおど何かを恐れ横を見るひまもなくただふかくふかくため
息をついたり声を立てないで泣いたり、ぞろぞろ追われるように走って行くのでした。みんな一
郎のように足が傷ついていたのです。そして本とうに恐ろしいことはその子供らの間を顔のま
っ赤な大きな人のかたちのものが灰いろの棘
(とげ)のぎざぎざ生えた鎧(よろい)を着て、髪など
はまるで火が燃えているよう、ただれたような赤い眼をして太い鞭
(むち)を振りながら歩いて行
くのでした。その足が地面にあたるときは地面はガリガリ鳴りました。一郎はもう恐ろしさに声
も出ませんでした。
           
(丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその14』でした。


 ひかり素足 漫画紹介

 @樹村みのり:宮沢賢治漫画館(潮出版社)第2巻  .

                       ◆もっと光を! (^ ^;
 

 樹村みのりの漫画版『ひかりの素足』は、光りが足りないのら。

 『あの世イメージ』が、賢治童話のあざやか透明ピュア文章に負けてますね、はっきし云って。(^ ^;
 くどいようだが、樹村みのりなら、『放課後』を読みんしゃい。カッコいいんよ。(^ ^;

 っつーことで、『ひかりの素足』の漫画版、樹村みのり、「もっと光を!」 だにゃぁ。(^ ^;


       ひかり素足 お気に入りオノマトペ
 季節: 冬
          空がまるで青びかりでツルツルして             その光はツンツンと二人の眼にしみ込み             また太陽を見ますと                                                  それは大きな空の宝石のように                                     橙や緑やかがやきの粉をちらし      まぶしさに眼をつむりますと                                           今度はその青黒いくらやみの中に                                   青あおと光ってみえるのです            あたらしく眼をひらいては前の青ぞらに                              桔梗(ききょう)いろや黄金(きん)や                                たくさんの太陽のかげぼうしが                                       くらくらとゆれてかかっています。

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=☆☆☆ 5つが最高。)
55えらえら:【いきが苦しくてまるでえらえらする毒をのんでいるようでした。】

ボクの好きなオノマトペ(再読)=★★5つが最高。)
Lツンツン:【鳥がツンツン鳴きました。】
N
つんつん:【向うの山の雪がつんつんと白くかがやきお父さんがまっ黒に見えながら入って来た
      のでした。】
P
ツンツン:【その光はツンツンと二人の眼にしみ込みまた太陽を見ますとそれは大きな空の宝
      石のように橙や緑やかがやきの粉をちらしまぶしさに眼をつむりますと今度はその青黒
      いくらやみの中に青あおと光ってみえるのです、あたらしく眼をひらいては前の青ぞらに
      桔梗
(ききょう)いろや黄金(きん)やたくさんの太陽のかげぼうしがくらくらとゆれてかかっ
      ています。】
32
ツァリンツァリン:【その人は牽(ひき)づなを持ってあるき出し鈴はツァリンツァリンと鳴り馬は首
      を垂れてゆっくりあるきました。】
34
ちょんちょん:【栗の木が何本か立って枯れた乾いた葉をいっぱい着け、鳥がちょんちょんと鳴
      いてうしろの方へ飛んで行きました。】
47
ヒィウ:【にわかに空の方でヒィウと鳴って風が来ました。】
62
ぺかぺか:【そして向うに一人の子供が丁度風で消えようとする蝋燭の火のように光ったり又
      消えたりぺかぺかしているのを見ました。】

 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

 
えらえらする毒】? 意味わかりましぇ〜ん。(^ ^; ま、雰囲気を楽しむのら。

 
【鳥がツンツン鳴きました。】
 
【向うの山の雪がつんつんと白くかがやき】
 
【その光はツンツンと二人の眼にしみ込み】
 
ツンツンつんつんツンツンの違い? なかなかにビミョーで・す・ね・え。(^ ^;

      お父さんは火を見ながらじっと何か考え、                          鍋はことこと鳴っていました。               向うの山の雪は青ぞらにくっきりと浮きあがり                       見ていますと何だかこころが遠くの方へ行くようでした。       にわかにそのいただきに                                               パッとけむりか霧のような白いぼんやりしたものが                  あらわれました。       それからしばらくたって                                                フィーとするどい笛のような声が聞えて来ました。       すると楢夫がしばらく口をゆがめて                                  変な顔をしていましたがとうとうどうしたわけか                      しくしく泣きはじめました。
**** ひかり素足オノマトペ ****
 

@あんまり:【鳥の声があんまりやかましいので一郎は目をさましました。】
Aすっかり:【もうすっかり夜があけていたのです。】
Bついつい:【日光の棒もそのけむりのために青く見え、またそのけむりはいろいろなかたちになって
      ついついとその光の棒の中を通って行くのでした。】
Cすやすや:【楢夫の顔はりんごのように赤く口をすこしあいてまだすやすや睡
(ねむ)って居ました。】
Dカチン:【白い歯が少しばかり見えていましたので一郎はいきなり指でカチンとその歯をはじきまし
      た。】
Eすうすう:【楢夫は目をつぶったまま一寸
(ちょっと)顔をしかめましたがまたすうすう息をしてねむりま
      した。】
Fぐらぐら:【一郎は云いながら楢夫の頭をぐらぐらゆすぶりました。】
Gぶつぶつ:【楢夫はいやそうに顔をしかめて何かぶつぶつ云っていましたがとうとううすく眼を開き
      ました。】
Hとうとう:【とうとううすく眼を開きました。】
Iぼんやり:【楢夫は返事しないで何かぼんやりほかのことを考えているようでした。】
Jじっ:【楢夫はけむそうにめをこすり一郎はじっと火を見ていたのです。】
Kごうごう:【外では谷川がごうごうと流れ鳥がツンツン鳴きました。】
Lツンツン:【鳥がツンツン鳴きました。】
Mパッ:【顔をあげて見ますと入り口がパッとあいて向うの山の雪がつんつんと白くかがやきお父さん
      がまっ黒に見えながら入って来たのでした。】
Nつんつん:【向うの山の雪がつんつんと白くかがやきお父さんがまっ黒に見えながら入って来たので
      した。】
Oツルツル:【空がまるで青びかりでツルツルしてその光はツンツンと二人の眼にしみ込みまた太陽を
      見ますとそれは大きな空の宝石のように橙や緑やかがやきの粉をちらしまぶしさに眼をつ
      むりますと今度はその青黒いくらやみの中に青あおと光ってみえるのです、あたらしく眼を
      ひらいては前の青ぞらに桔梗
(ききょう)いろや黄金(きん)やたくさんの太陽のかげぼうしがく
      らくらとゆれてかかっています。】
Pツンツン:【その光はツンツンと二人の眼にしみ込みまた太陽を見ますとそれは大きな空の宝石の
      ように橙や緑やかがやきの粉をちらしまぶしさに眼をつむりますと今度はその青黒いくらや
      みの中に青あおと光ってみえるのです、あたらしく眼をひらいては前の青ぞらに桔梗
(ききょう)
      いろや黄金
(きん)やたくさんの太陽のかげぼうしがくらくらとゆれてかかっています。】
Qくらくら:【あたらしく眼をひらいては前の青ぞらに桔梗
(ききょう)いろや黄金(きん)やたくさんの太陽の
      かげぼうしがくらくらとゆれてかかっています。】
Rことこと:【お父さんは火を見ながらじっと何か考え、鍋はことこと鳴っていました。】
Sくっきり:【向うの山の雪は青ぞらにくっきりと浮きあがり見ていますと何だかこころが遠くの方へ行く
      ようでした。】
21パッ:【にわかにそのいただきにパッとけむりか霧のような白いぼんやりしたものがあらわれました。】
22フィー:【それからしばらくたってフィーとするどい笛のような声が聞えて来ました。】
23しくしく:【すると楢夫がしばらく口をゆがめて変な顔をしていましたがとうとうどうしたわけかしくしく泣
      きはじめました。】
24しっかり:【お父さんは立って楢夫の額に手を当ててみてそれからしっかり頭を押さえました。】
25だんだん:【するとだんだん泣きやんでついにはただしくしく泣きじゃくるだけになりました。】
26しくしく:【ついにはただしくしく泣きじゃくるだけになりました。】
27ぞっ:【一郎もなぜかぞっとしました。】
28もりもり:【馬はもりもりかいばをたべてそのたてがみは茶色でばさばさしその眼は大きくて眼の中に
      はさまざまのおかしな器械が見えて大へんに気の毒に思われました。】
29ばさばさ:【そのたてがみは茶色でばさばさしその眼は大きくて眼の中にはさまざまのおかしな器械
      が見えて大へんに気の毒に思われました。】
30ゆっくり:【「家まで丁度一時間半かがらはんてゆっくり行っても三時半にあ戻れる。のどぁ乾ぃでも雪
      たべなやぃ。」】
31ピョンピョン:【楢夫はもうすっかり機嫌を直してピョンピョン跳んだりしていました。】
32ツァリンツァリン:【その人は牽
(ひき)づなを持ってあるき出し鈴はツァリンツァリンと鳴り馬は首を垂れ
      てゆっくりあるきました。】
33たびたび:【みちの雪はかたまってはいましたがでこぼこでしたから馬はたびたびつまずくようにしまし
      た。】
34ちょんちょん:【栗の木が何本か立って枯れた乾いた葉をいっぱい着け、鳥がちょんちょんと鳴いてう
      しろの方へ飛んで行きました。】
35チリンチリン:【そのとき向うから一列の馬が鈴をチリンチリンと鳴らしてやって参りました。】
36どんどん:【楢夫はもう早くうちへ帰りたいらしくどんどん歩き出し一郎もたびたびうしろをふりかえって
      見ましたが馬が雪の中で茶いろの首を垂れ二人の人が話し合って白い大きな手甲
(てっこう)
      がちらっと見えたりするだけでしたからやっぱり歩いて行きました。】
37ちらっ:【一郎もたびたびうしろをふりかえって見ましたが馬が雪の中で茶いろの首を垂れ二人の人
      が話し合って白い大きな手甲
(てっこう)がちらっと見えたりするだけでしたからやっぱり歩いて
      行きました。】
38はあはあ:【一郎もそのうしろからはあはあ息をついて、「よう、坂道、よう、坂道」なんて云いながら進
      んで行きました。】
39くるり:【けれどもとうとう楢夫は、つかれてくるりとこっちを向いて立ちどまりましたので、一郎はいきな
      りひどくぶっつかりました。】
40ずうっ:【来た方を見ると路
(みち)は一すじずうっと細くついて人も馬ももう丘のかげになって見えませ
      んでした。】
41しぃん:【いちめんまっ白な雪、(それは大へんくらく沈んで見えました。空がすっかり白い雲でふさがり
      太陽も大きな銀の盤のようにくもって光っていたのです。)がなだらかに起伏しそのところどこ
      ろに茶いろの栗や柏の木が三本四本ずつちらばっているだけじつにしぃんとして何ともいえな
      いさびしいのでした。】
42ちらっちらっ:【そしてまもなく小さな小さな乾いた雪のこなが少しばかりちらっちらっと二人の上から落
      ちて参りました。】
43せかせか:【そしてまるでせかせかとのぼりました。】
44ゴリゴリ:【だんだんいただきに近くなりますと雪をかぶった黒いゴリゴリの岩がたびたびみちの両がわ
      に出て来ました。】
45ばたばた:【一郎はばたばた毛布をうごかしてからだから雪をはらったりしました。】
46しん:【声がしんと空へ消えてしまいました。】
47ヒィウ:【にわかに空の方でヒィウと鳴って風が来ました。】
48ひやひや:【雪はまるで粉のようにけむりのように舞いあがりくるしくて行きもつかれずきもののすき
      まからはひやひやとからだにはいりました。】
49さらさら:【前より一そうひどく風がやって来ました。その音はおそろしい笛のよう、二人のからだも曲
      げられ足もとをさらさら雪の横にながれるのさえわかりました。】
50よちよち:【うしろはまるで暗くみえましたから楢夫はほんとうに声を立てないで泣くばかりよちよち兄
      に追い付いて進んだのです。】
51ずんずん:【それでも一郎はずんずん進みました。】
52ひゅう:【風がひゅうと鳴って雪がぱっとつめたいしろけむりをあげますと、一郎は少し立ちどまるよう
      にし楢夫は小刻みに走って兄に追いすがりました。】
53ぱっ:【雪がぱっとつめたいしろけむりをあげますと、一郎は少し立ちどまるようにし楢夫は小刻みに
      走って兄に追いすがりました。】
54どんどん:【雪がどんどん落ちて来ます。】
55えらえら:【いきが苦しくてまるでえらえらする毒をのんでいるようでした。】
56だらだら:【そんなことが前からあったのか、いつかからだには鼠いろのきれが一枚まきついてある
      ばかりおどろいて足を見ますと足ははだしになっていて今までもよほど歩いて来たらしく深い
      傷がついて血がだらだら流れて居りました。】
57ひっそり:【ひっそりとして返事もなく空さえもなんだかがらんとして見れば見るほど変なおそろしい気
      がするのでした。】
58がらん:【空さえもなんだかがらんとして見れば見るほど変なおそろしい気がするのでした。】
59ふっ:【ふっと一郎は思い出しました。】
60しいん:【しいんとして何の返事もありませんでした。】
61ぼろぼろ:【一郎はその自分の泣きながらはだしで走って行ってぼろぼろの布が風でうしろへなびい
      ている景色を頭の中に考えて一そう恐ろしくかなしくてたまらなくなりました。】
62ぺかぺか:【そして向うに一人の子供が丁度風で消えようとする蝋燭の火のように光ったり又消えた
      りぺかぺかしているのを見ました。】
63ぐらぐら:【一郎はそばへかけよりました。そしてにわかに足がぐらぐらして倒れました。】
64バリバリ:【一郎は自分の足があんまり痛くてバリバリ白く燃えてるようなのをこらえて云いました。】
65ひらひら:【ふと振りかえって見ますと来た方はいつかぼんやり灰色の霧のようなものにかくれてその
      向うを何かうす赤いようなものがひらひらしながら一目散に走って行くらしいのです。】
66ぐったり:【楢夫はぐったりとして気を失っているようでした。】
67ちらちらちらちら:【一郎はもうあらんかぎりの力を出してそこら中いちめんちらちらちらちら白い火に
      なって燃えるように思いながら楢夫を肩にしてさっきめざした方へ走りました。】
68しっかり:【足がうごいているかどうかもわからずからだは何か重い巌
(いわ)に砕かれて青びかりの粉
      になってちらけるよう何べんも倒れては又楢夫を抱き起して泣きながらしっかりとかかえ夢の
      ように又走り出したのでした。】
69ぞろぞろ:【すぐ眼の前は谷のようになった窪地でしたがその中を左から右の方へ何ともいえずいた
      ましいなりをした子供らがぞろぞろ追われて行くのでした。】
70おどおど:【痩
(や)せて青ざめて眼ばかり大きな子、髪の赫(あか)い小さな子、骨の立った小さな膝を
      曲げるようにして走って行く子、みんなからだを前にまげておどおど何かを恐れ横を見るひま
      もなくただふかくふかくため息をついたり声を立てないで泣いたり、ぞろぞろ追われるように
      走って行くのでした。】
71ぎざぎざ:【そして本とうに恐ろしいことはその子供らの間を顔のまっ赤な大きな人のかたちのものが
      灰いろの棘
(とげ)のぎざぎざ生えた鎧(よろい)を着て、髪などはまるで火が燃えているよう、た
      だれたような赤い眼をして太い鞭
(むち)を振りながら歩いて行くのでした。】
72ガリガリ:【その足が地面にあたるときは地面はガリガリ鳴りました。】
73よろよろ:【楢夫ぐらいの髪のちぢれた子が列の中に居ましたがあんまり足が痛むと見えてとうとうよ
      ろよろつまづきました。】
74ぴくっ:【その恐ろしいものの口がぴくっとうごきぱっと鞭が鳴ってその子は声もなく倒れてもだえまし
      た。】
75ぱっ:【ぱっと鞭が鳴ってその子は声もなく倒れてもだえました。】
76ふらふら:【あとから来た子供らはそれを見てもただふらふらと避けて行くだけ一語
(ひとこと)も云うも
      のがありませんでした。】
77ぴくぴく:【その恐ろしいものは頬をぴくぴく動かし歯をむき出して咆
(ほ)えるように叫んで一郎の方に
      登って来ました。】
78ぐるぐる:【一郎はぐるぐるしながらその鬼の手にすがりました。】
79ぎょっ:【鬼はぎょっとしたように一郎を見てそれから口がしばらくぴくぴくしていましたが大きな声で斯
      
(こ)う云いました。】
80ギラギラ:【その歯がギラギラ光ったのです。】
81シィン:【一郎はせなかがシィンとしてまわりがくるくる青く見えました。】
82くるくる:【まわりがくるくる青く見えました。】
83ガリガリ:【その歩くたびに瑪瑙
(めのう)はガリガリ砕けたのです。】
84ぐらぐら:【その子はぐらぐら頭をふって泣き出しました。】
85びくびく:【一郎の腕はしびれてわからなくなってただびくびくうごきました。】
86しぃん:【どう云うわけか鞭の音も叫び声もやみました。しぃんとなってしまったのです。】
87ぼうっ:【気がついて見るとそのうすぐらい赤い瑪瑙
(めのう)の野原のはずれがぼうっと黄金(きん)いろ
      になってその中を立派な大きな人がまっすぐにこっちへ歩いて来るのでした。】
88ほっ:【どう云うわけかみんなはほっとしたように思ったのです。】
89りん:【その大きな瞳は青い蓮のはなびらのようにりんとみんなを見ました。】
90じっ:【その湖水はどこまでつづくのかはては孔雀石の色に何条もの美しい縞
(しま)になり、その上に
      は蜃気楼のようにそしてもっとはっきりと沢山の立派な木や建物がじっと浮んでいたのです。】
91しん:【それらの建物はしんとして音もなくそびえその影は実にはっきりと水面に落ちたのです。】
92はっきり:【その影は実にはっきりと水面に落ちたのです。】
93チラチラ:【みんなその葉がチラチラ光ってゆすれ互
(たがい)にぶっつかり合って微妙な音をたてるの
      でした。】
94すうっ:【それは一寸
(ちょっと)(な)めたときからだ中すうっと涼しくなりました。】
95チラチラ:【舌のさきで青い蛍のような色や橙いろの火やらきれいな花の図案になってチラチラ見える
      のでした。】
96ピン:【たべてしまったときからだがピンとなりました。】
97ぼうっ:【しばらくたってからだ中から何とも云えないいい匂
(におい)がぼうっと立つのでした。】

 『ひかりの素足』のオノマトペ、これで、おすめえだぁ。まんず、えがっだなす。  スネオ 拝 (^ ^;
      
                                                2006.1.5.

 
 



『注文の多い料理店』の第十五話です。
      ええ、どこの学校って正直に云っちまいますとね、                 茨海狐(ばらうみきつね)小学校です。         愕(おどろ)いてはいけません。                                      実は茨海狐小学校を                                               そのひるすぎすっかり参観して来たのです。      そんなに変な顔をしなくてもいいのです。                           狐にだまされたのとはちがいます。      狐にだまされたのなら狐が狐に見えないで                         女とか坊さんとかに見えるのでしょう。      ところが私のはちゃんと狐を狐に見たのです。            狐を狐に見たのがもしだまされたものならば                        人を人に見るのも人にだまされたという訳です。
ばら.うみ            .
***** 『茨海小学校』 22p *****
 

 狐の小学校がめちゃ愉快だにゃぁ、      武田鉄矢は出て来んのかね。(^ ^;      『茨海(ばらうみ)小学校』。

 狐の先生、第一学年担任:武井甲吉、第二学年担任:武池清二郎、第三学年担任:武原久助、武村君。
 狐の生徒、第一学年:武巣
(たけす)さん、第三学年:武田金一郎。
 狐の名字が武井、武池、武原、武村、武巣、武田と、やたら 『武○』 ばっかしでめっちゃ楽しいやね。
 ん? 武田金一郎?? 武田ぁ???
 どうして武田鉄矢は出て来んのかァァァ、こんこん。
(^ ^; ……あ、金八先生は高校の先生か。(^ ^;

 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその15』だよん。
(^ ^;

 三学年担任の茶いろの狐の先生は、恭
(うやうや)しく礼をして出て行きました。間もなく青い格子縞
(こうしじま)の短い上着を着た狐の生徒が、今の先生のうしろについてすごすごと入って参りました。
 校長は鷹揚
(おうよう)にめがねを外(はず)しました。そしてその武田金一郎という狐の生徒をじっと
しばらくの間見てから云いました。
 「お前があの草わなを運動場にかけるようにみんなに云いつけたんだね。」
 武田金一郎はしゃんとして返事しました。
 「そうです。」
 「あんなことして悪いと思わないか。」
 「今は悪いと思います。けれどもかける時は悪いと思いませんでした。」
 「どうして悪いと思わなかった。」
 「お客さんを倒そうと思ったのじゃなかったからです。」
 「どういう考えでかけたのだ。」
 「みんなで障碍物
(しょうがいぶつ)競走をやろうと思ったんです。」
                              
(丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその15』でした。


 茨海小学校 以降しばらく漫画紹介できましぇん。

           申し訳なか。

 

 おそらく、たぶん、漫画版『茨海(ばらうみ)小学校』はありましぇん。
 おそらく、たぶん、『おきなぐさ』も『土神ときつね』も『楢ノ木大学士の野宿』も『なめとこ山の熊』も
 漫画版はありましぇ〜〜〜ん。

 っつーことで、宮沢賢治童話の漫画紹介は、しばらくシバラク暫く、お待ちくなさい。 スネオ 拝 (^ ^;


        茨海小学校 お気に入りオノマトペ
 季節: 秋
             校長さんの狐は下を向いて二三度                                くんくん云ってから、                                                   新らしく紅茶を私に注(つ)いでくれました。       そのときベルが鳴りました。             午后の課業がはじまる十分前だったのでしょう。             校長さんが向うの                                                    黒塗りの時間表を見ながら云いました。      「午后は第一学年は修身と護身、                                  第二学年は狩猟術、第三学年は食品化学と、                 こうなっていますがいずれもご参観になりますか。」          「さあみんな拝見いたしたいです。                                    たいへん面白そうです。                                              今朝からあがらなかったのが本当に残念です。」

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=5つが最高。)
61もちゃもちゃ:【「正直を云いますと、実は何だか頭がもちゃもちゃしましたのです。」】

ボクの好きなオノマトペ(再読)=5つが最高。)
38がさがさ:【そこへ隣の教員室から、黒いチョッキだけ着た、がさがさした茶いろの狐の先生
      が入って来て私に一礼して云いました。】
39
すごすご:【間もなく青い格子縞(こうしじま)の短い上着を着た狐の生徒が、今の先生のうしろ
      についてすごすごと入って参りました。】
54
ピチン:【「ここの環の所へ足を入れるとピチンと環がしまって、もうとれなくなるのです。」】
58
ガサガサ:【さっきの茶いろの毛のガサガサした先生の教室なのです。】

 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

 
【正直を云いますと、実は何だか頭がもちゃもちゃしましたのです。】
 
【青い格子縞(こうしじま)の短い上着を着た狐の生徒が、今の先生のうしろについてすごすごと入って
参りました。】

 
もちゃもちゃ。すごすご。がさがさ。ガサガサ。狐の先生、狐の生徒……えがっだべ?


     「これはアメリカ製で                                                   ホックスキャッチャーと云います。」      「ニッケル鍍金(めっき)で                                              こんなにぴかぴか光っています。」      「ここの環の所へ足を入れると                                       ピチンと環がしまって、もうとれなくなるのです。」      「もちろんこの器械は鎖か何かで                                     太い木にしばり付けてありますから、                                実際一遍足をとられたらもうそれきりです。」      「けれども誰だって                                                      こんなピカピカした変なものに                                        わざと足を入れては見ないのです。」      狐の生徒たちはどっと笑いました。                                  狐の校長さんも笑いました。                                        狐の先生も笑いました。                                             私も思わず笑いました。
  ***** 茨海小学校オノマトペ *****  .
 

@とうとう:【ところが私は、浜茄(はまなす)をとうとう見附けませんでした。】
Aすっかり:【ええ、どこの学校って正直に云っちまいますとね、茨海狐
(ばらうみきつね)小学校です。愕(お
      
どろ)いてはいけません。実は茨海狐小学校をそのひるすぎすっかり参観して来たのです。】
Bちゃん:【ところが私のはちゃんと狐を狐に見たのです。】
Cうっかり:【ですから斯
(こ)う云う旅行のはなしを聞くことはみなさんにも決して差(さし)(つか)えありま
      せんがあんまり度々うっかり出かけることはいけません。】
Dずうっ:【なあにほんとうはあの茨
(いばら)やすすきの一杯生えた野原の中で浜茄(はまなす)などをさが
      すよりは、初めから狐小学校を参観したほうがずうっとよかったのです。】
Eしっかり:【なかなか狐の小学生には、しっかりした所がありますよ。】
Fきらきら:【空がきらきらの白いうろこ雲で一杯でした。】
Gそろそろ:【茨には青い実がたくさんつき、萱
(かや)はもうそろそろ穂を出しかけていました。】
Hぶらぶら:【私は背嚢
(はいのう)の中に火山弾を入れて、面倒くさいのでかけ金もかけず、締革(しめか
      
わ)をぶらさげたまませなかにしょい、パンの袋だけ手にもって、又ぶらぶらと向うへ歩いて行
      きました。】
Iやっぱり:【何べんもばらがかきねのようになった所を抜けたり、すすきが栽
(う)え込みのように見え
      る間を通ったりして、私は歩きつづけましたが、野原はやっぱり今まで通り、小流れなどはな
      かったのです。】
Jしいん:【この野原には、学校なんかあるわけはなし、これはきっと俄
(にわか)に立ちどまった為に、私
      の頭がしいんと鳴ったのだと考えても見ましたが、どうしても心からさっきの音を疑うわけには
      行きませんでした。】
Kがやがや:【それどころじゃない、こんどは私は、子供らのがやがや云う声を聞きました。】
Lふっ:【それは少しの風のために、ふっとはっきりして来たり、又俄かに遠くなったりしました。】
Mはっきり:【はっきりして来たり、又俄かに遠くなったりしました。】
Nわあ:【けれどもいかにも無邪気な子供らしい声が、呼んだり答えたり、勝手にひとり叫んだり、わあと
      笑ったり、その間には太い底力のある大人の声もまじって聞こえて来たのです。】
Oどん:【さるとりいばらにひっかけられたり、窪みにどんと足を踏みこんだりしながらも、一生けん命そ
      っちへ走って行きました。】
Pだんだん:【すると野原は、だんだん茨が少なくなって、あのすずめのかたびらという、一尺ぐらいのけ
      むりのような穂を出す草があるでしょう、あれがたいへん多くなったのです。】
Qどしどし:【私はどしどしその上をかけました。】
Rどたっ:【そしたらどう云うわけか俄かに私は棒か何かで足をすくわれたらしくどたっと草に倒れまし
      た。】
Sくしゃくしゃ:【急いで起きあがって見ますと、私の足はその草のくしゃくしゃもつれた穂にからまってい
      るのです。】
21ばったり:【私はにが笑いをしながら起きあがって又走りました。又ばったりと倒れました。】
22そっ:【なるべく足を横に引きずらず抜きさしするような工合
(ぐあい)にしてそっと歩きましたけれどもま
      だ二十歩も行かないうちに、又ばったりと倒されてしまいました。】
23どっ:【それと一緒に、向うの方で、どっと笑い声が起り、それからわあわあはやすのです。】
24わあわあ:【それからわあわあはやすのです。】
25はあはあはあはあ:【首を横にまげて笑っている子、口を尖
(とが)らせてだまっている子、口をあけて
      そらを向いてはあはあはあはあ云う子、はねあがってはねあがって叫んでいる子、白や茶い
      ろやたくさんいます。】
26しいん:【その時いきなり、狐の生徒らはしいんとなりました。】
27じっ:【黒のフロックを着た先生が尖った茶いろの口を閉じるでもなし開くでもなし、眼をじっと据
(す)
      て、しずかにやって来るのです。】
28ぴたり:【俄かに先生はぴたりと立ちどまりました。】
29しょんぼり:【狐の生徒らはみんな耳を伏せたり両手を頭にあげたりしょんぼりうなだれました。】
30そろそろ:【私たちが過ぎてから、みんなそろそろ立ちあがりました。】
31ふっ:【先生はふっとうしろを振りかえりました。】
32くるくる:【生徒たちはくるくるはねまわってその草わなをみんなほどいて居りました。】
33ちらちら:【校長室の中では、白服の人の動いているのがちらちら見えます。】
34エヘンエヘン:【エヘンエヘンと云っているのも聞えます。】
35きょろきょろ:【私はきょろきょろあちこち見まわしていましたら、先生が少し笑って云いました。】
36じっ:【校長は痩
(や)せた白い狐で涼しそうな麻のつめえりでした。もちろん狐の洋服ですからずぼん
      には尻尾
(しっぽ)を入れる袋もついてあります。仕立賃も廉(やす)くはないと私は思いました。
      そして大きな近眼鏡をかけその向うの眼はまるで黄金
(きん)いろでした。じっと私を見つめま
      した。】
37さあさあ:【「ようこそいらっしゃいました。さあさあ、どうぞお入り下さい。」】
38がさがさ:【そこへ隣の教員室から、黒いチョッキだけ着た、がさがさした茶いろの狐の先生が入って
      来て私に一礼して云いました。】
39すごすご:【間もなく青い格子縞
(こうしじま)の短い上着を着た狐の生徒が、今の先生のうしろについて
      すごすごと入って参りました。】
40しゃん:【武田金一郎はしゃんとして返事しました。】
41きちん:【担任の先生はきちんとまだ立っています。】
42くんくん:【校長さんの狐は下を向いて二三度くんくん云ってから、新らしく紅茶を私に注
(つ)いでくれま
      した。】
43ゆっくり:【「あなたの方の狩猟は私の方の護身にはいり、私の方の狩猟は、さあ、狩猟前業はあなた
      の方の畜産にでも入りますかな、まあとにかくその時々でゆっくりご説明いたしましょう。」】
44がやがや:【がやがや物を言う声、それから「気をつけ」や「番号」や「右向け右」や「前へ進め」で狐の
      生徒は一学級ずつだんだん教室に入ったらしいのです。】
45だんだん:【狐の生徒は一学級ずつだんだん教室に入ったらしいのです。】
46しいん:【それからしばらくたって、どの教室もしいんとなりました。】
47ぱっ:【生徒の狐たちはみんなぱっと立ちあがりました。】
48よろよろ:【私は全くよろよろして泣き出そうとしました。】
49じっ:【先生はみんなの書いてしまう間、両手をせなかにしょってじっとしていましたがみんながばたば
      た鉛筆を置いて先生の方を見始めますと、又講義をつづけました。】
50ばたばた:【みんながばたばた鉛筆を置いて先生の方を見始めますと、又講義をつづけました。】
51ぐらぐら:【私は何だか修身にしても変だし頭がぐらぐらして来たのでしたが、この時さっき校長が修
      身と護身とが今学年から一科目になって、多分その方が結果がいいだろうと云ったことを思
      い出して、ははあ、なるほどと、うなずきました。】
52はあはあ:【武巣
(たけす)という子がまるで息をはあはあして入って来ました。】
53ぴかぴか:【「これはアメリカ製でホックスキャッチャーと云います。ニッケル鍍金
(めっき)でこんなにぴ
      かぴか光っています。」】
54ピチン:【「ここの環の所へ足を入れるとピチンと環がしまって、もうとれなくなるのです。」】
55ピカピカ:【「けれども誰だってこんなピカピカした変なものにわざと足を入れては見ないのです。」】
56だんだん:【そこで私は、これはもうだんだん時間が立つから、次の教室を案内しようかと云うのだろ
      うと思って、ちょっとからだを動かして見せました。】
57しん:【生徒はしばらくしんとしました。】
58ガサガサ:【さっきの茶いろの毛のガサガサした先生の教室なのです。】
59だんだん:【「前業の養鶏奨励の方法は、だんだん詳しく述べるつもりであるが、まあその模範として
      一例を示そう。」】
60びっくり:【「すると向うでは少しびっくりしたらしかったので私はまず斯
(こ)う云った。」】
61もちゃもちゃ:【「正直を云いますと、実は何だか頭がもちゃもちゃしましたのです。」】
62わあわあ:【狐の生徒たちが、わあわあ叫び、先生たちのそれをとめる太い声がはっきり後ろで聞え
      ました。】
63さっぱり:【で結局のところ、茨海狐小学校では、一体どういう教育方針だか、一向さっぱりわかりま
      せん。】

 『茨海(ばらうみ)小学校』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝 (^ ^;
                                                         2006.1.7.

 
 


『注文の多い料理店』の第十六話です。
      この花の下を始終往(い)ったり来たりする蟻に                   私はたずねます。                                                    「おまえは、うどのしゅげは好きかい、きらいかい。」         「大すきです。                                                         誰だってあの人をきらいなものはありません。」                     蟻は活溌に答えます。     「けれどもあの花はまっ黒だよ。」           「いいえ、黒く見えるときもあります。                                 けれどもまるで燃えあがってまっ赤な時もあります。」     「はてな、お前たちの眼には                                           そんな工合に見えるのかい。」     「いいえ、お日さまの光の降る時なら                                誰にだってまっ赤に見えるだろうと思います。」     「そうそう、もうわかったよ。                                              お前たちはいつでも花をすかして見るのだから。」
****** 『おきなぐさ』 7p ******
 

 うずのしゅげって呼んだほうが、やさしい若い花っぽいんだべさ、『おきなぐさ』。

 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその16』だよん。
(^ ^;
<イントロ>
 うずのしゅげを知っていますか。
 うずのしゅげは、植物学ではおきなぐさと呼ばれますがおきなぐさという名は何だかあの
やさしい若い花をあらわさないようにおもいます。
 そんならうずのしゅげとは何のことかと云われても私にはわかったような亦
(また)わから
ないような気がします。
 それはたとえば私どもの方ではねこやなぎの花芽をべむべろと云いますがそのべむべ
ろが何のことかわかったようなわからないような気がするのと全くおなじです。とにかくべむ
べろという語
(ことば)のひびきの中にあの柳の花芽の銀びろうどのこころもち、なめらかな
春のはじめの光の工合
(ぐあい)が実にはっきり出ているように、うずのしゅげというときはあ
のキンポウゲ科のおきなぐさの黒繻子
(くろじゅす)の花びら、青じろいやはり銀びろうどの刻
みのある葉、それから六月のつやつや光る冠毛がみなはっきりと眼にうかびます。
 まっ赤なアネモネの花の従兄
(いとこ)、きみかげそうやかたくりの花のともだち、このうず
のしゅげの花をきらいなものはありません。
 ごらんなさい。この花は黒繻子
(くろじゅす)ででもこしらえた変り型のコップのように見えま
すが、その黒いのはたとえば葡萄酒が黒く見えるのと同じです。
                                     
(丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその16』でした。


        おきなぐさ お気に入りオノマトペ
            
   「そしてあの葉や茎だって立派でしょう。」       「やわらかな銀の糸が植えてあるようでしょう。」          「私たちの仲間では誰かが病気にかかったときは                    あの糸をほんのすこうし貰って来て                                  しずかにからだをさすってやります。」      「そうかい。それで、結局お前たちは                                  うずのしゅげは大すきなんだろう。」       「そうです。」          「よろしい。 さよなら。 気をつけておいで。」   
 季節: 春
                      私は去年の丁度今ごろの                                           風のすきとおったある日のひるまを思い出します。

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=5つが最高。)
Gきんきん:【小岩井の野原には牧草や燕麦(オート)がきんきん光って居りました。】

ボクの好きなオノマトペ(再読)=5つが最高。)
Aつやつや:【うずのしゅげというときはあのキンポウゲ科のおきなぐさの黒繻子(くろじゅす)
      花びら、青じろいやはり銀びろうどの刻みのある葉、それから六月のつやつや光る
      冠毛がみなはっきりと眼にうかびます。】
M
せいせい:【「ええ、ありがとう。ああ、僕まるで息がせいせいする。」】
 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

 
【小岩井の野原には牧草や燕麦(オート)きんきん光って居りました。】
 
きんきん光るって一度も使ったことねぇだども、はぁ、えんでねけ?

 ps.
【私どもの方ではねこやなぎの花芽をべむべろと云いますが……。】
   
べむべろという語(ことば)のひびきの中にあの柳の花芽の銀びろうどのこころもち、
       なめらかな春のはじめの光の工合
(ぐあい)が実にはっきり出ているように……。】
 
べむべろっつーのも、岩手っぽぐて、えんでねけ?

      おきなぐさは                                                           その変幻の光の奇術(トリック)の中で                             夢よりもしずかに話しました。         「ねえ、雲が又お日さんにかかるよ。                                 そら向うの畑がもう陰になった。」      「走って来る、早いねえ、                                              もうから松も暗くなった。もう越えた。」      「来た、来た。おおくらい。                                              急にあたりが青くしんとなった。」      「うん、だけど                                                            もう雲が半分お日さんの下をくぐってしまったよ。                   すぐ明るくなるんだよ。」    「もう出る。そら、ああ明るくなった。」         「だめだい。又来るよ、そら、ね、                                      もう向うのポプラの木が黒くなったろう。」
****** おきなぐさオノマトペ ******
 

@はっきり:【とにかくべむべろという語(ことば)のひびきの中にあの柳の花芽の銀びろうどのこころも
      ち、なめらかな春のはじめの光の工合
(ぐあい)が実にはっきり出ているように、うずのしゅげ
      というときはあのキンポウゲ科のおきなぐさの黒繻子
(くろじゅす)の花びら、青じろいやはり
      銀びろうどの刻みのある葉、それから六月のつやつや光る冠毛がみなはっきりと眼にうか
      びます。】
Aつやつや:【うずのしゅげというときはあのキンポウゲ科のおきなぐさの黒繻子
(くろじゅす)の花びら、
      青じろいやはり銀びろうどの刻みのある葉、それから六月のつやつや光る冠毛がみなはっ
      きりと眼にうかびます。】
Bじっ:【山男はお日さまに向いて倒れた木に腰掛けて何か鳥を引き裂いて喰
(た)べようとしているら
      しいのですがなぜあのくろずんだ黄金
(きん)の眼玉を地面にじっと向けているのでしょう。】
Cどんどんどんどん:【まばゆい白い雲が小さな小さなきれになって砕けてみだれて空をいっぱい東
      の方へどんどんどんどん飛びました。】
Dしん:【「来た、来た。おおくらい。急にあたりが青くしんとなった。」】
Eどんどん:【「不思議だねえ、雲なんてどこから出て来るんだろう。ねえ、西のそらは青じろくて光っ
      てよく晴れてるだろう。そして風がどんどん空を吹いてるだろう。それだのにいつまでたって
      も雲がなくならないじゃないか。」】
Fボウ:【「ええ、ひどい風ですよ。大きく口をあくと風が僕のからだをまるで麦酒瓶
(ビールびん)のよう
      にボウと鳴らして行く位ですからね。わめくも歌うも容易なこっちゃありませんよ。」】
Gきんきん:【小岩井の野原には牧草や燕麦
(オート)がきんきん光って居りました。】
Hふさふさ:【春の二つのうずのしゅげの花はすっかりふさふさした銀毛の房にかわっていました。】
Iちらちら:【野原のポプラの錫
(すず)いろの葉をちらちらひるがえしふもとの草が青い黄金(きん)
      かがやきをあげますと、その二つのうずのしゅげの銀毛の房はぷるぷるふるえて今にも
      飛び立ちそうでした。】
Jぷるぷる:【その二つのうずのしゅげの銀毛の房はぷるぷるふるえて今にも飛び立ちそうでした。】
Kばらばら:【「僕たちばらばらになろうたってどこかのたまり水の上に落ちようたってお日さんちゃん
      と見ていらっしゃるんですよ。」】
Lちゃん:【「お日さんちゃんと見ていらっしゃるんですよ。」】
Mせいせい:【「ええ、ありがとう。ああ、僕まるで息がせいせいする。」】
Nふらふら:【うずのしゅげは光ってまるで踊るようにふらふらして叫びました。】

 『おきなぐさ』のオノマトペ、これで、おすめえだぁ。まんず、えがっだなす。  スネオ 拝 (^ ^;
                                                   2006.1.8.

 
 



『注文の多い料理店』の第十七話です。
      一本木の野原の、北のはずれに、                                 少し小高く盛りあがった所がありました。      いのころぐさがいっぱいに生え、                                      そのまん中には一本の                                               綺麗(きれい)な女の樺(かば)の木がありました。      この木に二人の友達がありました。            一人は丁度五百歩ばかり離れた                                  ぐちゃぐちゃの谷地(やち)の中に住んでいる土神で               一人はいつも野原の南の方からやって来る                        茶いろの狐だったのです。      樺の木はどちらかと云えば狐の方がすきでした。            なぜなら土神の方は                                                 神という名こそついてはいましたが、                                 ごく乱暴で髪もぼろぼろの木綿糸の束のよう                      眼も赤くきものだってまるでわかめに似、                            いつもはだしで爪も黒く長いのでした。      ところが狐の方は大へんに上品な風で                             滅多に人を怒らせたり                                                気にさわるようなことをしなかったのです。
      ただもしよくよくこの二人をくらべて見たら                            土神の方は正直で                                                  狐は少し不正直だったかも知れません。
******* 『土神ときつね』 18p *******
 

 気障(きざ)な狐に激しく嫉妬する野暮な土神、ぶ男コンプレックスだにゃぁ、『土神ときつね』。

 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその17』だよん。
(^ ^;

 樺の木は何だか少し困ったように思いながらそれでも青い葉をきらきらと動かして土神の
来る方を向きました。その影は草に落ちてちらちらちらちらゆれました。土神はしずかにや
って来て樺の木の前に立ちました。
 「樺の木さん、お早う。」
 「お早うございます。」
 「わしはね、どうも考えて見るとわからんことが沢山ある、なかなかわからんことが多いも
んだね。」
 「まあ、どんなことでございますの。」
 「たとえばだね、草というものは黒い土から出るのだがなぜこう青いもんだろう。黄や白の
花さえ咲くんだ。どうもわからんねえ。」
 「それは草の種子が青や白をもっているためではないでございましょうか。」
 「そうだ。まあそう云えばそうだがそれでもやっぱりわからんな。たとえば秋のきのこのよ
うなものは種子もなし全く土の中からばかり出て行くもんだ。それにもやっぱり赤や黄いろ
やいろいろある。」
 「狐さんにでも聞いて見ましたらいかがでございましょう。」
 樺の木はうっとり昨夜
(ゆうべ)の星のはなしをおもっていましたのでつい斯(こ)う云ってしま
いました。
 この語
(ことば)を聞いて土神は俄(にわ)かに顔いろを変えました。そしてこぶしを握りました。
 「何だ。狐? 狐が何を云い居った。」
 樺の木はおろおろ声になりました。
 「何も仰
(お)っしゃったんではございませんがちょっとしたらご存知かと思いましたので。」
 「狐なんぞに神が物を教わるとは一体何たることだ。えい。」
                                    
(丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその17』でした。

 
ps.「ぶ男心理コレクター」のボクとしましては、土神のジェラシー、よぉぉぉく、わかります。(^ ^;
    「ぶ男心理コレクター」に興味ある方は、
   
忍法双頭の鷲ボクの忍法帖データ★ランキングpart 脇役の巻 をご覧くなさい。(^ ^;
             
クリックしてネ。


  土神きつね お気に入りオノマトペ
            
       空にはもう天の川がしらしらと渡り                                   星はいちめんふるえたりゆれたり                                     灯(とも)ったり消えたりしていました。      その下を狐が詩集をもって遊びに行ったのでした。             仕立おろしの紺の背広を着、                                      赤革の靴もキッキッと鳴ったのでした。       「実にしずかな晩ですねえ。」             「ええ。」 樺の木はそっと返事をしました。             「蠍(さそり)ぼしが向うを這っていますね。                          あの赤い大きなやつを                                               昔は支那では火(か)と云ったんですよ。」       「火星とはちがうんでしょうか。」
 季節:5月3日と8月と秋
                  「火星とはちがいますよ。                                             火星は惑星ですね、                                                ところがあいつは立派な恒星なんです。」

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=☆☆ 5つが最高。)
59べらべら:【土神は今度はまるでべらべらした桃いろの火でからだ中燃されているようにおもいま
      した。】

ボクの好きなオノマトペ(再読)=5つが最高。)
62ごったごた:【「いいえ、まるでちらばってますよ、それに研究室兼用ですからね、あっちの隅には
      顕微鏡、こっちにはロンドンタイムズ、大理石のシィザアがころがったりまるっきりごった
      ごたです。」】
74
むらむらっ:【土神はむらむらっと怒(おこ)りました。】

 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

 
べらべらした桃いろの火】 べらべら……mmm雰囲気ですねぇ、意味わかんないけど。(^ ^;

 ps.ボクの部屋も
まるっきりごったごたです。(^ ^;

      もうすっかり夜でしたが、                                             ぼんやり月のあかりに澱んだ霧の向うから                          狐の声が聞えて来るのでした。       「ええ、もちろんそうなんです。                                        器械的に対称(シインメトリー)の法則にばかり                   叶っているからって                                                    それで美しいというわけにはいかないんです。                      それは死んだ美です。」       「全くそうですわ。」                                                      しずかな樺の木の声がしました。       「ほんとうの美はそんな固定した化石した                           模型のようなもんじゃないんです。                                  対称(シインメトリー)の法則に叶うって云ったって                 実は対称(シインメトリー)の精神を有(も)っている               というぐらいのことが望ましいのです。」       「ほんとうにそうだと思いますわ。」                                     樺の木のやさしい声が又しました。       土神は今度はまるでべらべらした桃いろの火で                   からだ中燃されているようにおもいました。       息がせかせかして                                                     ほんとうにたまらなくなりました。       高が樺の木と狐との                                                 野原の中でのみじかい会話ではないか、                          そんなものに心を乱されて                                           それでもお前は神と云えるか、                                      土神は自分で自分を責めました。
******* 土神きつねオノマトペ *******
 

@てかてか:【そのまん中には一本の綺麗(きれい)な女の樺(かば)の木がありました。それはそんなに
      大きくはありませんでしたが幹はてかてか黒く光り、枝は美しく伸びて、五月には白い花を
      雲のようにつけ、秋は黄金
(きん)や紅(あか)やいろいろの葉を降らせました。】
Aぐちゃぐちゃ:【この木に二人の友達がありました。一人は丁度五百歩ばかり離れたぐちゃぐちゃの
      谷地
(やち)の中に住んでいる土神で一人はいつも野原の南の方からやって来る茶いろの狐
      だったのです。】
Bぼろぼろ:【樺の木はどちらかと云えば狐の方がすきでした。なぜなら土神の方は神という名こそつ
      いてはいましたが、ごく乱暴で髪もぼろぼろの木綿糸の束のよう眼も赤くきものだってまるで
      わかめに似、いつもはだしで爪も黒く長いのでした。】
Cしらしら:【空にはもう天の川がしらしらと渡り星はいちめんふるえたりゆれたり灯
(とも)ったり消えた
      りしていました。】
Dキッキッ:【その下を狐が詩集をもって遊びに行ったのでした。仕立おろしの紺の背広を着、赤革の
      靴もキッキッと鳴ったのでした。】
Eそっ:【「ええ。」樺
(かば)の木はそっと返事をしました。】
Fぷらぷら:【詩集はぷらぷらしましたがなかなかそれで落ちませんでした。】
Gぼんやり:【「全体星というものははじめはぼんやりした雲のようなもんだったんです。】
Hしん:【狐はしばらくしんとしながら斯
(こ)う考えていたのでした。】
Iざわざわ:【そして樺の木はその時吹いてきた南風にざわざわ葉を鳴らしながら狐の置いて行った詩
      集をとりあげて天の川やそらいちめんの星から来る微
(かす)かなあかりにすかして頁(ぺーじ)
      を繰
(く)りました。】
Jとろとろ:【そして樺の木は一晩中よみ続けました。ただその野原の三時すぎ東から金牛宮ののぼる
      ころ少しとろとろしただけでした。】
Kゆっくりゆっくり:【その東北のほうから溶
(と)けた銅の汁をからだ中に被(かぶ)ったように朝日をいっ
      ぱいに浴びて土神がゆっくりゆっくりやって来ました。】
Lきらきら:【樺の木は何だか少し困ったように思いながらそれでも青い葉をきらきらと動かして土神の
      来る方を向きました。】
Mちらちらちらちら:【その影は草に落ちてちらちらちらちらゆれました。】
Nやっぱり:【「まあそう云えばそうだがそれでもやっぱりわからんな。」】
Oうっとり:【樺の木はうっとり昨夜
(ゆうべ)の星のはなしをおもっていましたのでつい斯(こ)う云ってしま
      いました。】
Pおろおろ:【樺の木はおろおろ声になりました。】
Qぷりぷりぷりぷり:【樺の木はもうすっかり恐くなってぷりぷりぷりぷりゆれました。】
Rきしきし:【土神は歯をきしきし噛みながら高く腕を組んでそこらをあるきまわりました。】
Sちらちら:【樺の木は折角なだめようと思って云ったことが又もや却
(かえ)ってこんなことになったので
      もうどうしたらいいかわからなくなりただちらちらとその葉を風にゆすっていました。】
21きりきり:【土神はまたきりきり歯噛みしました】
22キリキリ:【土神は日光を受けてまるで燃えるようになりながら高く腕を組みキリキリ歯噛みをしてその
      辺をうろうろしていましたが考えれば考えるほど何もかもしゃくにさわって来るらしいのでした。】
23うろうろ:【その辺をうろうろしていましたが考えれば考えるほど何もかもしゃくにさわって来るらしいの
      でした。】
24とうとう:【そしてとうとうこらえ切れなくなって、吠えるようにうなって荒々しく自分の谷地
(やち)に帰って
      行ったのでした。】
25じめじめ:【水がじめじめしてその表面にはあちこち赤い鉄の渋
(しぶ)が沸(わ)きあがり見るからどろど
      ろで気味も悪いのでした。】
26どろどろ:【あちこち赤い鉄の渋
(しぶ)が沸(わ)きあがり見るからどろどろで気味も悪いのでした。】
27がりがり:【土神はその島に帰って来て祠
(ほこら)の横に長々と寝そべりました。そして黒い瘠(や)せた
      脚
(あし)をがりがり掻(か)きました。】
28よろよろっ:【鳥はびっくりしてよろよろっと落ちそうになりそれからまるではねも何もしびれたようにだ
      んだん低く落ちながら向うへ遁
(に)げて行きました。】
29だんだん:【それからまるではねも何もしびれたようにだんだん低く落ちながら向うへ遁
(に)げて行きま
      した。】
30はっ:【けれども又すぐ向うの樺の木の立っている高みの方を見るとはっと顔色を変えて棒立ちになり
      ました。】
31ぼろぼろ:【それからいかにもむしゃくしゃするという風にそのぼろぼろの髪毛を両手で掻きむしってい
      ました。】
32ぱっ:【土神はそれを見るとよろこんでぱっと顔を熱
(ほて)らせました。】
33ぐるっ:【土神は右手のこぶしをゆっくりぐるっとまわしました。】
34はあはあはあはあ:【する木樵
(きこり)はだんだんぐるっと円くまわって歩いていましたがいよいよひどく
      周章
(あわ)てだしてまるではあはあはあはあしながら何べんも同じところをまわり出しました。】
35おろおろ:【とうとう木樵
(きこり)はおろおろ泣き出しました。】
36ににやにやにやにや:【土神はいかにも嬉しそうににやにやにやにや笑って寝そべったままそれを見
      ていましたが間もなく木樵がすっかり逆上
(のぼ)せて疲れてばたっと水の中に倒れてしまいま
      すと、ゆっくりと立ちあがりました。】
37すっかり:【間もなく木樵がすっかり逆上
(のぼ)せて疲れてばたっと水の中に倒れてしまいますと、ゆっ
      くりと立ちあがりました。】
38ばたっ:【間もなく木樵がすっかり逆上
(のぼ)せて疲れてばたっと水の中に倒れてしまいますと、ゆっく
      りと立ちあがりました。】
39ぐちゃぐちゃ:【そしてぐちゃぐちゃ大股にそっちへ歩いて行って倒れている木樵のからだを向うの草
      はらの方へぽんと投げ出しました。】
40ぽん:【倒れている木樵のからだを向うの草はらの方へぽんと投げ出しました。】
41どしり:【木樵
(きこり)は草の中にどしりと落ちてううんと云いながら少し動いたようでしたがまだ気がつ
      きませんでした。】
42ガサリ:【空へ行った声はまもなくそっちからはねかえってガサリと樺の木の処
(ところ)にも落ちて行き
      ました。】
43はっ:【樺の木ははっと顔いろを変えて日光に青くすきとおりせわしくせわしくふるえました。】
44せわしくせわしく:【日光に青くすきとおりせわしくせわしくふるえました。】
45ばたばた:【土神はひとりで切ながってばたばたしました。】
46ずうっとずうっと:【ずうっとずうっと遠くで騎兵の演習らしいパチパチパチパチ塩のはぜるような鉄砲
      の音が聞えました。】
47パチパチパチパチ:【騎兵の演習らしいパチパチパチパチ塩のはぜるような鉄砲の音が聞えました。】
48どくどく:【そらから青びかりがどくどくと野原に流れて来ました。】
49おずおず:【それを呑んだためかさっき草の中に投げ出された木樵はやっと気がついておずおずと起
      きあがりしきりにあたりを見廻しました。】
50バサリ:【土神はそれを見て又大きな声で笑いました。その声は又青ぞらの方まで行き途中から、バ
      サリと樺の木の方へ落ちました。】
51うろうろうろうろ:【土神は自分のほこらのまわりをうろうろうろうろ何べんも歩きまわってからやっと気
      がしずまったと見えてすっと形を消し融
(と)けるようにほこらの中へ入って行きました。】
52すっ:【やっと気がしずまったと見えてすっと形を消し融
(と)けるようにほこらの中へ入って行きました。】
53ふらっ:【土神は何とも云えずさびしくてそれにむしゃくしゃして仕方ないのでふらっと自分の祠
(ほこら)
      を出ました。】
54どきっ:【本当に土神は樺の木のことを考えるとなぜか胸がどきっとするのでした。】
55はっきり:【そのうちとうとうはっきり自分が樺の木のとこへ行こうとしているのだということに気が付き
      ました。】
56どしどし:【土神は草をどしどし踏み胸を躍らせながら大股にあるいて行きました。】
57よろよろ:【ところがその強い足なみもいつかよろよろしてしまい土神はまるで頭から青い色のかなし
      みを浴びてつっ立たなければなりませんでした。】
58すっかり:【もうすっかり夜でしたが、ぼんやり月のあかりに澱
(よど)んだ霧の向うから狐の声が聞えて
      来るのでした。】
59べらべら:【土神は今度はまるでべらべらした桃いろの火でからだ中燃されているようにおもいました。】
60せかせか:【息がせかせかしてほんとうにたまらなくなりました。】
61まるっきり:【「いいえ、まるでちらばってますよ、それに研究室兼用ですからね、あっちの隅には顕微
      鏡、こっちにはロンドンタイムズ、大理石のシィザアがころがったりまるっきりごったごたです。」】
62ごったごた:【「いいえ、まるでちらばってますよ、それに研究室兼用ですからね、あっちの隅には顕微
      鏡、こっちにはロンドンタイムズ、大理石のシィザアがころがったりまるっきりごったごたです。」】
63ふん:【ふんと狐の謙遜のような自慢のような息の音がしてしばらくしいんとなりました。】
64しいん:【しばらくしいんとなりました。】
65ばったり:【息がつづかなくなってばったり倒れたところは三つ森山の麓
(ふもと)でした。】
66ぼうっ:【今年の夏からのいろいろなつらい思いが何だかぼうっとみんな立派なもやのようなものに変
      って頭の上に環になってかかったように思いました。】
67ぶるぶる:【そしてやっぱり心配そうにぶるぶるふるえてまちました。】
68さっさ:【「まあ、ありがとうございます。」と樺の木が言っているうちに狐はもう土神に挨拶もしないでさ
      っさと戻りはじめました。】
69さっ:【樺の木はさっと青くなってまた小さくぷりぷり顫
(ふる)いました。】
70ぷりぷり:【樺の木はさっと青くなってまた小さくぷりぷり顫
(ふる)いました。】
71キラッ:【土神はしばらくの間ただぼんやりと狐を見送って立っていましたがふと狐の赤革の靴のキラ
      ッと草に光るのにびっくりして我に返ったと思いましたら俄
(にわ)かに頭がぐらっとしました。】
72ぐらっ:【我に返ったと思いましたら俄
(にわ)かに頭がぐらっとしました。】
73ぐんぐん:【狐がいかにも意地をはったように肩をいからせてぐんぐん向うへ歩いているのです。】
74むらむらっ:【土神はむらむらっと怒
(おこ)りました。】
75がたがた:【樺の木はあわてて枝が一ぺんにがたがたふるえ、狐もそのけはいにどうかしたのかと思
      って何気なくうしろを見ましたら土神がまるで黒くなって嵐のように追って来るのでした。】
76さっ:【さあ狐はさっと顔いろを変え口もまがり風のように走って遁
(に)げ出しました。】
77ガラン:【青く光っていたそらさえ俄かにガランとまっ暗な穴になってその底では赤い焔
(ほのお)がどう
      どう音を立てて燃えると思ったのです。】
78どうどう:【その底では赤い焔
(ほのお)がどうどう音を立てて燃えると思ったのです。】
79ごうごう:【二人はごうごう鳴って汽車のように走りました。】
80くるっ:【狐はその下の円い穴にはいろうとしてくるっと一つまわりました。】
81ちらっ:【それから首を低くしていきなり中へ飛び込もうとして後あしをちらっとあげたときもう土神はう
      しろからばっと飛びかかっていました。】
82ばっ:【もう土神はうしろからばっと飛びかかっていました。】
83ぐんにゃり:【と思うと狐はもう土神にからだをねじられて口を尖
(とが)らして少し笑ったようになったま
      まぐんにゃりと土神の手の上に首を垂れていたのです。】
84ぐちゃぐちゃ:【土神はいきなり狐を地べたに投げつけてぐちゃぐちゃ四五へん踏みつけました。】
85ぐったり:【それからぐったり横になっている狐の屍骸のレーンコートのかくしの中に手を入れて見まし
      た。】

 『土神ときつね』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝 (^ ^;
                                                    2006.1.15.

 
 


『注文の多い料理店』の第十八話です。
     「探してやろう。                                                         僕は実際、一ぺん探しに出かけたら、                             きっともう足が宝石のある所へ向くんだよ。」     「そして宝石のある山へ行くと、奇体に足が動かない。            直覚だねえ。」     「いや、それだから、却(かえ)って困ることもあるよ。」           「たとえば一千九百十九年の七月に、                             アメリカのジャイアントアーム会社の委嘱を受けて、               紅宝玉(ルビー)を探しにビルマへ行ったがね、                    やっぱりいつか足は紅宝玉(ルビー)の山へ向く。」     「それからちゃんと見附かって、                                       帰ろうとしてもなかなか足があがらない。」     「つまり僕と宝石には、                                                 一種の不思議な引力が働いている。」     「深く埋まった紅宝玉(ルビー)どもの、                               日光の中へ出たいというその熱心が、                             多分は僕の足の神経に感ずるのだろうね。」     「その時も実際困ったよ。                                              山から下りるのに、十一時間もかかったよ。                        けれどもそれがいまの                                                バララゲの紅宝玉(ルビー)坑(こう)さ。」
    「ははあ、そいつはどうもとんだご災難でございました。               しかしいかがでございましょう。                                       こんども多分はそんな工合(ぐあい)に参りましょうか。」
な ら                                 .
******** 『楢ノ木大学士の野宿』 50p ********
 

 『楢ノ木大学士の野宿』=(インディ・ジョーンズ+ジュラシック・パーク+ほら男爵)÷3だにゃぁ。

 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその18』だよん。
(^ ^;
<イントロ>
 楢ノ木大学士は宝石学の専門だ。
 ある晩大学士の小さな家
(うち)へ、
 「貝の火兄弟
(けいてい)商会」の、
 赤鼻の支配人がやって来た。
 「先生、ごく上等の蛋白石
(たんぱくせき=オパール)の注文があるのですがどうでしょう、お探しねが
えませんでしょうか。もっともごくごく上等のやつがほしいのです。何せ相手がグリーンランドの途
方もない成金ですから、ありふれたものじゃなかなか承知しないんです。」
 大学士は葉巻を横にくわえ、
 雲母紙
(うんもし)を張った天井を、
 斜めに見上げて聴いていた。
 「たびたびご迷惑で、まことに恐れ入りますが、いかがなもんでございましょう。」
 そこで楢ノ木大学士は、
 にやっと笑って葉巻をとった。
                  
(丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその18』でした。

 ps.「貝の火兄弟(けいてい)商会」、mmm、いとあやしげなるネーミング、いんだにゃぁ。(^ ^;


 木大学士野宿 お気に入りオノマトペ
   
        「それでは何分お願いいたします。                                   これはまことに軽少ですが、                        当座の旅費のつもりです。」       貝の火兄弟(けいてい)商会の                                     鼻の赤いその支配人は、                                           ねずみ色の状袋を、上着の内ポケットから出した。      「そうかね。」                                                            大学士は別段気にもとめず、                                       手を延ばして状袋をさらい、自分のかくしに投げこんだ。      「では何分とも、よろしくお願いいたします。」                       そして「貝の火兄弟商会」の、                                      赤鼻の支配人は帰って行った。       次の日諸君のうちの誰かは、                                       きっと上野の停車場で、       途方もない長い外套を着、                                         変な灰色の袋のような背嚢(はいのう)をしょい、       七キログラムもありそうな、                                           素敵な大きなかなづちを、                                          持った紳士を見ただろう。       それは楢ノ木大学士だ。                                            宝石を探しに出掛けたのだ。
 季節: 4月             
         出掛けた為にとうとう楢ノ木大学士の、                            野宿ということも起ったのだ。                                        三晩というもの起ったのだ。

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=☆☆☆ 5つが最高。)
Iのっきのっき:【山どもがのっきのっきと黒く立つ。】

ボクの好きなオノマトペ(再読)=★★★5つが最高。)
Kぎろぎろ:【一番右はたしかラクシャン第一子、まっ黒な髪をふり乱し、大きな眼をぎろぎろ空に向
      け、しきりに口をぱくぱくして、何かどなっている様だが、その声は少しも聞えなかった。】
26
ふくふく:【「何でもおれのきくところに依(よ)ると、あいつらは海岸のふくふくした黒土や、美しい緑
      いろの野原に行って知らん顔をして溝を掘るやら、濠
(ほり)をこさえるやら、それはどうも
      実にひどいもんだそうだ。」】
30
ぽっかりぽっかり:【そして又長い顎(あご)をうでに載(の)せ、ぽっかりぽっかり寝てしまう。】
45
みりみり:【「お前もこの頃は頭でみりみり私を押しつけようとするよ。」】
50
かやかや:【「はっはっは、ジッコさんというのは磁鉄鉱だね、もうわかったさ、喧嘩の相手はバイ
      オタイトだ。して見るとなんでもこの辺にさっきの花崗岩のかけらがあるね。そいつの中の
      鉱物がかやかや物を云ってるんだね。」】
 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

 えへん。
 
のっきのっき、ぎろぎろ、ふくふく、ぽっかりぽっかり、みりみり、かやかや

 これら、ぜぇぇぇぇぇんぶ、初対面ですよ、アアタ。
 宮沢賢治のオノマトペ・コレクションも、量的はもちろん、質的にも、えへん、って云いたいボク、むふ
ふふふ。
(^ ^;
 自称「ぶ男心理コレクター」のボクでしたが、今日からボクは、「イーハトーヴ・オノマトペ・コレクター」
って自称しちゃうのら、むほほほほ。
(^ ^;

      ラクシャン第一子はやっぱり空へ向いたまま                        素敵などなりを続けたのだ。           「全体何をぐずぐずしてるんだ。                                      砕いちまえ、砕いちまえ、はね飛ばすんだ。                        はね飛ばすんだよ。」      「火をどしゃどしゃ噴(ふ)くんだ。溶岩の用意っ。                   溶岩。早く。畜生。いつまでぐずぐずしてるんだ。                  溶岩、用意っ。」      「もう二百万年たってるぞ。                                           灰を降らせろ、灰を降らせろ。                                       なぜ早く支度(したく)をしないか。」       しずかなラクシャン第三子が                                         兄をなだめて斯(こ)う云った。      「兄さん。少しおやすみなさい。                                       こんなしずかな夕方じゃありませんか。」        兄は構わず又どなる。             「地球を半分ふきとばしちまえ。                                       石と石とを空でぶっつけ合せて                                      ぐらぐらする紫のいなびかりを起せ。                                 まっくろな灰の雲からかみなりを鳴らせ。                            えい、意気地なしども。」      「降らせろ、降らせろ、                                                  きらきらの溶岩で海をうずめろ。                                     海から騰(の)ぼる泡で太陽を消せ、                               生き残りの象から虫けらのはてまで灰を吸わせろ、                えい、畜生ども、何をぐずぐずしてるんだ。」
******** 木大学士野宿オノマトペ ********
 

@なかなか:【「何せ相手がグリーンランドの途方もない成金ですから、ありふれたものじゃなかなか承
      知しないんです。」】
Aにやっ:【そこで楢
(なら)ノ木大学士は、にやっと笑って葉巻をとった。】
Bちゃん:【「それからちゃんと見附かって、帰ろうとしてもなかなか足があがらない。」】
Cとうとう:【宝石を探しに出掛けたのだ。出掛けた為にとうとう楢ノ木大学士の、野宿ということも起っ
      たのだ。三晩というもの起ったのだ。】
Dぶつぶつ:【ひとりぶつぶつ言いながら、からだを深く折り曲げて、眼一杯にみひらいて、足もとの砂
      利をねめまわしながら、兎のようにひょいひょいと、葛丸川の西岸の 大きな河原をのぼっ
      て行った。】
Eひょいひょい:【兎のようにひょいひょいと、葛丸川の西岸の 大きな河原をのぼって行った。】
Fずんずん:【その両側の山どもは、一生懸命の大学士などにはお構いなく ずんずん黒く暮れて行
      く。】
Gちょろちょろ:【それから川筋の細い野原に、ちょろちょろ赤い野火が這
(は)い、鷹によく似た白い鳥
      が、鋭く風を切って翔
(か)けた。】
Hごろり:【そのかわり又大学士が、腕をのばして背嚢
(はいのう)をぬぎ、肱(ひじ)をまげて外套(がいとう)
      のまま、ごろりと横になったときは、外套のせなかに白い粉が、まるで一杯についたのだ。】
Iごう:【水がその広い河原の、向う岸近くをごうと流れ、空の桔梗
(ききょう)のうすあかりには、山ども
      がのっきのっきと黒く立つ。】
Jのっきのっき:【山どもがのっきのっきと黒く立つ。】
Kだんだん:【「それから火山がだんだん衰えて、その原の中まで冷えてしまう。」】
Lぎろぎろ:【一番右はたしかラクシャン第一子、まっ黒な髪をふり乱し、大きな眼をぎろぎろ空に向
      け、しきりに口をぱくぱくして、何かどなっている様だが、その声は少しも聞えなかった。】
Mぱくぱく:【しきりに口をぱくぱくして、何かどなっている様だが、その声は少しも聞えなかった。】
Nじっ:【夢のような黒い瞳をあげて、じっと東の高原を見た。】
Oぐずぐず:【「何をぐずぐずしてるんだ。潰
(つぶ)してしまえ。灼(や)いてしまえ。こなごなに砕いてしま
      え。早くやれ。」】
Pどしゃどしゃ:【「火をどしゃどしゃ噴
(ふ)くんだ。溶岩の用意っ。溶岩。早く。畜生。いつまでぐずぐず
      してるんだ。溶岩、用意っ。もう二百万年たってるぞ。灰を降らせろ、灰を降らせろ。なぜ早
      く支度
(したく)をしないか。」】
Qぐらぐら:【「地球を半分ふきとばしちまえ。石と石とをぶっつけ合せてぐらぐらする紫のいなびかりを
      起せ。」】
Rきらきら:【「降らせろ、降らせろ、きらきらの溶岩で海をうずめろ。海から騰
(の)ぼる泡で太陽を消
      せ、生き残りの象から虫けらのはてまで灰を吸わせろ、えい、畜生ども、何をぐずぐずして
      るんだ。」】
Sのろのろ:【「今こそ地殻ののろのろのぼりや風や空気のおかげで、おれたちと肩をならべている
      が、元来おれたちとはまるで生まれ付きがちがうんだ。」】
21へたへた:【「おれたちの仕事はな、地殻の底の底で、とけてとけて、まるでへたへたになった岩漿
      
(がんしょう)や、上から押しつけられて古綿のようにちぢまった蒸気やらを取って来て、いざと
      いう瞬間には大きな黒い山の塊
(かたまり)を、まるで粉々に引き裂いて飛び出す。」】
22ぐらぐら:【「百万の雷を集めて、地面をぐらぐら云わせてやる。」】
23ひょっ:【「丁度、楢
(なら)ノ木大学士というものが、おれのどなりをひょっと聞いて、びっくりして頭を
      ふらふら、ゆすぶったようにだ。ハッハッハ。」】
24ふらふら:【「びっくりして頭をふらふら、ゆすぶったようにだ。ハッハッハ。」】
25きらきら:【暴
(あら)っぽいラクシャン第一子が このときまるできらきら笑った。きらきら光って笑っ
      たのだ。】
26こそこそ:【「水と空気かい。あいつらは朝から晩まで、世界の平和の為に、お前らの傲慢を削ると
      かなんとか云いながら、毎日こそこそ、俺
(おい)らの耳のそば迄(まで)来て、俺らを擦(こす)
      って耗
(へら)して行くが、まるっきりうそさ。」】
27ふくふく:【「何でもおれのきくところに依
(よ)ると、あいつらは海岸のふくふくした黒土や、美しい緑
      いろの野原に行って知らん顔をして溝を掘るやら、濠
(ほり)をこさえるやら、それはどうも
      実にひどいもんだそうだ。」】
28さらさらさらっ:【「なんだ野火か。地面の埃
(ほこり)をさらさらさらっと掃除する、てまえなんぞに用
      はない。」】
29ぽっ:【ばかなラクシャンの第二子が、すぐ釣り込まれてあわて出し、顔いろをぽっとほてらせなが
      ら、「おい兄貴、一
(ひと)吠えしようか。」と斯(こ)う云った。】
30ぐうぐう:【「一
(ひと)吠えってもう何十万年を、きさまはぐうぐう寝ていたのだ。それでもまだいくらか
      力が残っているのか」】
31ぽっかりぽっかり:【そして又長い顎
(あご)をうでに載(の)せ、ぽっかりぽっかり寝てしまう。】
32べろり:【いたずらの弟はそれを聞かずに 光る大きな長い舌を出して 大学士の額をべろりと嘗
      
(な)めた。】
33がたっ:【大学士はひどくびっくりして それでも笑いながら眼をさまし 寒さにがたっと顫
(ふる)えた
      のだ。】
34すっかり:【いつか空がすっかり晴れて、まるで一面星が瞬
(またた)き、まっ黒な四つの岩頸(がんけ
      
い)が ただしくもとの形になり じっとならんで立っていた。】
35じっ:【まっ黒な四つの岩頸
(がんけい)が ただしくもとの形になり じっとならんで立っていた。】
36すたすた:【平らな熊出街道を すたすた歩いて行ったのだ。】
37がらん:【俄に道の右側に がらんとした大きな石切場が 口をあいてひらけて来た。】
38こくっ:【学士は咽喉
(のど)をこくっとならし 中に入って行きながら 三角の石かけを一つ拾い、「ふ
      ん、ここも角閃
(かくせん)花崗岩(かこうがん)」とつぶやきながらつくづくと、あたりを見れば石
      切場、石切りたちも帰ったらしく、小さな笹の小屋が一つ、淋しく隅にあるだけだ。】
39にやにや:【大学士は大きな近眼鏡を ちょっと直してにやにや笑い 小屋へ入って行ったのだ。】
40もそもそ:【大学士はマッチをすって 火をたき、それからビスケットを出し もそもそ喰
(た)べたり
      手帳に何か書きつけたりしばらくの間していたが、おしまいに火をどんどん燃して ごろり
      と藁
(わら)にねころんだ。】
41どんどん:【おしまいに火をどんどん燃して ごろりと藁
(わら)にねころんだ。】
42ごろり:【ごろりと藁
(わら)にねころんだ。】
43ばたり:【夜中になって大学士は、「うう寒い」と云いながら、ばたりとはね起きて見たら もうたきぎ
      が燃え尽きて ただのおきだけになっていた。】
44ぼんやり:【ぼんやりたき火をながめながら、わらの上に横になり、手を頭の上で組み うとうとうと
      うとした。】
45うとうとうとうと:【手を頭の上で組み うとうとうとうとした。】
46みりみり:【「お前もこの頃は頭でみりみり私を押しつけようとするよ。」】
47だんだん:【声はだんだん高くなる。】
48そろそろ:【大学士は又そろそろと起きあがり、あたりをさがすが何もない。】
49ほっ:【「僕がやっと体格と人格を完成してほっと息をついてるとお前がすぐ僕の足もとでどんな声
      をしたと思うね。」】
50いよいよ:【声はいよいよ高くなる。】
51かやかや:【「はっはっは、ジッコさんというのは磁鉄鉱だね、もうわかったさ、喧嘩の相手はバイ
      オタイトだ。して見るとなんでもこの辺にさっきの花崗岩のかけらがあるね。そいつの中の
      鉱物がかやかや物を云ってるんだね。」】
52にこにこ:【学士はいよいよにこにこする。】
53じっ:【「一時はあまりの熱と力にみんな一緒に気違いにでもなりそうなのをじっとこらえて来たでは
      ありませんか。」】
54ギギンギギン:【「千五百万年光というものを知らなかったんだもの。あの時鋼
(はがね)の槌がギギ
      ンギギンと僕らの頭にひびいて来ましたね。」】
55パッ:【「そしたら急にパッと明るくなって僕たちは空へ飛びあがりましたねえ。」】
56パチッ:【「それはね、明らかにたがねのさきから出た火花だよ。パチッて云ったろう。そして熱か
      ったろう。」】
57ピチピチ:【その時俄にピチピチ鳴り それからバイオタが泣き出した。】
58キシキシ:【病人はキシキシと泣く。】
59しん:【みんなの声はだんだん低く、とうとうしんとしてしまう。】
60つくづく:【大学士はみかげのかけらを 手にとりあげてつくづく見てパチッと向うの隅へ弾
(はじ)
      く。】
61パチッ:【大学士はみかげのかけらを 手にとりあげてつくづく見てパチッと向うの隅へ弾
(はじ)
      く。】
62つくづく:【つくづく考え込みながら もう夕方の鼠いろの 頁岩(けつがん)の波に洗われる 海
      岸を大股に歩いていた。】
63ぴたっ:【いよいよ今日は歩いても だめだと学士はあきらめて ぴたっと岩に立ちどまり しば
      らく黒い海面と 向うに浮かぶ腐った馬鈴薯
(いも)のような雲を 眺めていたが、又ポケ
      ットから 煙草を出して火をつけた。】
64くるっ:【それからくるっと振り向いて 陸の方をじっと見定めて 急いでそっちへ歩いて行った。】
65じっ:【陸の方をじっと見定めて 急いでそっちへ歩いて行った。】
66もしゃもしゃ:【それからまっくらなとこで もしゃもしゃビスケットを喰べた。】
67ずうっ:【ずうっと向うで一列濤
(なみ)が鳴るばかり。】
68ポツン:【大学士の吸う巻煙草が ポツンと赤く見えるだけ】
69ぽとぽと:【「濤
(なみ)がぽとぽと鳴るばかり」】
70とろとろする:【大学士はすぐとろとろする】
71せっせ:【「ところでおれは一体何のために歩いているんだったかな。ええと、よく思い出せない
      ぞ。たしかに昨日も一昨日
(おととい)も人の居ない処(ところ)をせっせと歩いていたんだ
      が。」】
72はっきり:【所々上の岩のために かくれているが足裏の 皺まではっきりわかるのだ。】
73ぞろっ:【銀座でこさえた長靴の あともぞろっとついていた。】
74どかどか:【どかどか鳴るものは心臓 ふいごのようなものは呼吸、そんなに一生けん命だっ
      たが 又そんなにあたりもしずかだった。】
75にこにこ:【大学士はにこにこ笑い 立ちどまって巻煙草を出し マッチを擦って煙を吐く。】
76ざらざら:【長さ十間、ざらざらの 鼠いろの皮の雷竜
(らいりゅう)が 短い太い足をちぢめ 厭
      らしい長い頸
(くび)をのたのたさせ 小さな赤い眼を光らせ チュウチュウ水を呑んで
      いる。】
77のたのた:【厭らしい長い頸
(くび)をのたのたさせ 小さな赤い眼を光らせ チュウチュウ水を
      呑んでいる。】
78チュウチュウ:【チュウチュウ水を呑んでいる。】
79しいん:【頭がしいんとなってしまった。】
80こっそり:【「僕はいま、ごくこっそりと戻るから。どうかしばらく、こっちを向いちゃいけないよ。」】
81そろりそろり:【そろりそろりと後退
(あとずさ)りして 来たほうへ遁(に)げて戻る。】
82そっ:【その眼はじっと雷竜
(らいりゅう)を見 その手はそっと空気を押す。】
83びちょびちょ:【そして雷竜
(らいりゅう)の太い尾が まず見えなくなりその次に 山のような胴が
      かくれ おしまい黒い舌をだして びちょびちょ水を呑んでいる 蛇に似たその頭がか
      くれると 大学士はまず助かったと いきなり来た方へ向いた。】
84ずんずん:【その足跡さえずんずんたどって 遁
(に)げてさえ行くならもう直きに 汀(みぎわ)
      濤
(なみ)も打って来るし 空も赤くなるし 足もとももう泥に食いこまない 堅い頁岩(けつ
      
がん)の上を行く。】
85ぎくっ:【ところが楢
(なら)ノ木大学士は も一度ぎくっと立ちどまった。】
86がたがた:【その膝はもうがたがたと鳴り出した。】
87うじゃうじゃ:【見たまえ、学士の来た方の 泥の岸はまるでいちめん うじゃうじゃの雷竜
(らい
      
りゅう)どもなのだ。】
88そっ:【学士はそっと岬にのぼる】
89もじゃもじゃ:【まるで蕈
(きのこ)とあすなろとの 合の子みたいな変な木が 崖にもじゃもじゃ生
      えていた。】
90くるっ:【水の中でも黒い白鳥のように 頭をもたげて泳いだり 頸
(くび)をくるっとまわしたり そ
      の厭らしいこと恐いこと 大学士はもう眼をつぶった。】
91ふっふっ:【自分の鼻さきがふっふっ鳴って 暖かいのに気がついた。】
92にゅう:【太さ二尺の四っ角な まっ黒な雷竜
(らいりゅう)の顔が すぐ眼の前までにゅうと突き出
      され その眼は赤く熟したよう。】
93がさがさ:【その頸
(くび)は途方もない向うの 鼠いろのがさがさした胴まで まるで管のように
      続いていた。】
94カーン:【大学士はカーンと鳴った。】
95ざらざら:【「僕がその山へ入ったら蛋白石どもがみんなざらざら飛びついて来てもうどうしても
      はなれないじゃないか。」】
96こくっ:【貝の火兄弟
(けいてい)商会の 鼻の赤い支配人は こくっと息を呑みながら 大学士の
      手もとを見つめている。】

 『楢ノ木大学士の野宿』のオノマトペ、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝 (^ ^;
                                                    2006.1.16.

 
 


『注文の多い料理店』の第十九話です。
   なめとこ山の熊のことならおもしろい。      なめとこ山は大きな山だ。      淵沢(ふちざわ)川はなめとこ山から出て来る。    なめとこ山は一年のうち大ていの日はつめたい霧か雲かを吸ったり吐いたりしている。 まわりもみんな青黒いなまこや海坊主のような山だ。  山のなかごろに大きな洞穴(ほらあな)ががらんとあいている。  そこから淵沢(ふちざわ)川がいきなり三百尺ぐらいの滝になってひのきやいたやのしげみの中をごうと落ちて来る。 中山街道はこのごろは誰も歩かないから蕗(ふき)やいたどりがいっぱいに生えたり牛が遁(に)げて登らないように柵をみちにたてたりしているけれどもそこをがさがさ三里ばかり行くと向うの方で風が山の頂(いただき)を通っているような音がする。 気をつけてそっちを見ると何だかわけのわからない白い細長いものが山をうごいて落ちてけむりを立てているのがわかる。
 それがなめとこ山の大空滝だ。そして昔はそのへんには熊がごちゃごちゃ居たそうだ。
********* 『なめとこ山の熊』 13p *********
 

 猟師の小十郎がせつないにゃぁ、『なめとこ山の熊』。

 っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその19』だよん。
(^ ^;

 淵沢小十郎はすがめの赭
(あか)黒いごりごりしたおやじで胴は小さな臼(うす)ぐらいはあったし
(てのひら)は北島の毘沙門さんの病気をなおすための手形ぐらい大きく厚かった。小十郎は夏
なら菩提樹
(マダ)の皮でこさえたけらを着てはんばきをはき生蕃(せいばん)の使うような山刀とポ
ルトガル伝来というような大きな鉄砲をもってたくましい黄いろな犬をつれてなめとこ山からしどけ
沢から三つ又からサッカイの山からマミ穴森から白沢からまるで縦横にあるいた。木がいっぱい
生えているから谷を遡
(のぼ)っているとまるで青黒いトンネルの中を行くようで時にはぱっと緑と
黄金
(きん)いろに明るくなることもあればそこら中が花が咲いたように日光が落ちていることもあ
る。そこを小十郎が、まるで自分の座敷の中を歩いているという風でゆっくりのっしのっしとやっ
て行く。犬はさきに立って崖を横這いに走ったりざぶんと水にかけ込んだり淵ののろのろした気
味の悪いとこをもう一生けん命に泳いでやっと向うの岩にのぼるとからだをぶるぶるっとして毛を
たてて水をふるい落しそれから鼻をしかめて主人の来るのを待っている。小十郎は膝から上に
まるで屏風のような白い波をたてながらコムパスのように足を抜き差しして口を少し曲げながら
やって来る。そこであんまり一ぺんに云ってしまって悪いけれどもなめとこ山あたりの熊は小十郎
をすきなのだ。
         
(丸写しオシマイ)
 『賢治童話を丸写しシリーズその19』でした。


 なめとこ山の熊 お気に入りオノマトペ
            町の中ほどに大きな荒物屋があって笊(ざる)だの砂糖だの砥石(といし)だの金天狗やカメレオン印の煙草だのそれから硝子(ガラス)の蠅(はえ)とりまでならべていたのだ。  小十郎が山のように毛皮をしょってそこのしきいを一足またぐと店では又来たかというようにうすわらっているのだった。  店の次の間に大きな唐金(からかね)の火鉢を出して主人がどっかり座っていた。    「旦那さん、先ころはどうもありがとうごあんした。」     あの山では主のような小十郎は毛皮の荷物を横におろして丁ねいに敷き板に手をついて云うのだった。    「はあ、どうも、今日は何のご用です。」   
 季節:
春と夏と1月      「熊の皮また少し持って来たます。」     「熊の皮か。この前のもまだあのまましまってあるし今日ぁまんついいます。」  「旦那さん、そう云わないでどうか買って呉(く)んなさぃ。安くてもいいます。」  「なんぼ安くても要(い)らなぃます。」 主人は落ち着きはらってきせるをたんたんとてのひらへたたくのだ。

◆オラが好きなオノマトペ(初読)=5つが最高。)
Iのっしのっし:【そこを小十郎が、まるで自分の座敷の中を歩いているという風でゆっくりの
      っしのっしとやって行く。】
31
しげしげ:【小十郎がすぐ下に湧水(わきみず)のあったのを思い出して少し山を降りかけたら
      愕
(おどろ)いたことは母親とやっと一歳になるかならないような子熊と二疋(ひき)丁度
      人が額に手をあてて遠くを眺めるといった風に淡い六日の月光の中を向うの谷をし
      げしげ見つめているのだった。】
53
つるつる:【小十郎はまっ青なつるつるした空を見あげてそれから孫たちの方を向いて「行
      って来るじゃぃ。」と云った。】


ボクの好きなオノマトペ(再読)=★★★5つが最高。)
28ぐんなり:【けれどもとにかくおしまい小十郎がまっ赤な熊の肝(い)をせなかの木のひつに入
      れて血で毛がぽとぽと房になった毛皮を谷であらってくるくるまるめせなかにしょって
      自分もぐんなりした風で谷を下って行くことだけはたしかなのだ。】
 

 「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」

ぐんなり:【自分もぐんなりした風で谷を下って行くことだけはたしかなのだ。】

 
ぐんなり』っつーの、初対面だぁ。意味わがらないな。んだども、雰囲気あるべ? (^ ^;

 小十郎はまるでその二疋(ひき)の熊のからだから後光が射すように思えてまるで釘付けになったように立ちどまってそっちを見つめていた。        すると小熊が甘えるように云ったのだ。     「どうしても雪だよ、おっかさん谷のこっち側だけ白くなっているんだもの。どうしても雪だよ。おっかさん。」       すると母親の熊はまだしげしげ見つめていたが                      やっと云った。                                                        「雪でないよ、                                                           あすこへだけ降る筈(はず)がないんだもの。」       小熊はまた云った。                                                 「だから溶けないで残ったのでしょう。」  「いいえ、おっかさんはあざみの芽を見に昨日あすこを通ったばかりです。」    小十郎もじっとそっちを見た。       月の光が青じろく山の斜面を滑っていた。     そこが丁度銀の鎧(よろい)のように光っているのだった。     しばらくたって子熊が云った。                                       「雪でなけぁ霜だねぇ。きっとそうだ。」
********* なめとこ山の熊オノマトペ *********
 

@がらん:【山のなかごろに大きな洞穴(ほらあな)ががらんとあいている。】
Aごう:【そこから淵沢
(ふちざわ)川がいきなり三百尺ぐらいの滝になってひのきやいたやのしげ
      みの中をごうと落ちて来る。】
Bがさがさ:【中山街道はこのごろは誰も歩かないから蕗
(ふき)やいたどりがいっぱいに生えた
      り牛が遁
(に)げて登らないように柵をみちにたてたりしているけれどもそこをがさがさ
      三里ばかり行くと向うの方で風が山の頂
(いただき)を通っているような音がする。】
Cごちゃごちゃ:【そして昔はそのへんには熊がごちゃごちゃ居たそうだ。】
Dべろべろ:【だからもう熊はなめとこ山で赤い舌をべろべろ吐いて谷をわたったり熊の子供ら
      がすもうをとっておしまいぽかぽか撲
(なぐ)りあったりしていることはたしかだ。】
Eぽかぽか:【熊の子供らがすもうをとっておしまいぽかぽか撲
(なぐ)りあったりしていることはた
      しかだ。】
Fごりごり:【淵沢小十郎はすがめの赭
(あか)黒いごりごりしたおやじで胴は小さな臼(うす)ぐらい
      はあったし掌
(てのひら)は北島の毘沙門さんの病気をなおすための手形ぐらい大きく
      厚かった。】
Gぱっ:【木がいっぱい生えているから谷を遡
(のぼ)っているとまるで青黒いトンネルの中を行く
      ようで時にはぱっと緑と黄金
(きん)いろに明るくなることもあればそこら中が花が咲い
      たように日光が落ちていることもある。】
Hゆっくり:【そこを小十郎が、まるで自分の座敷の中を歩いているという風でゆっくりのっしのっ
      しとやって行く。】
Iのっしのっし:【そこを小十郎が、まるで自分の座敷の中を歩いているという風でゆっくりのっし
      のっしとやって行く。】
Jざぶん:【犬はさきに立って崖を横這いに走ったりざぶんと水にかけ込んだり淵ののろのろした
      気味の悪いとこをもう一生けん命に泳いでやっと向うの岩にのぼるとからだをぶるぶる
      っとして毛をたてて水をふるい落しそれから鼻をしかめて主人の来るのを待っている。】
Kのろのろ:【淵ののろのろした気味の悪いとこをもう一生けん命に泳いでやっと向うの岩にの
      ぼるとからだをぶるぶるっとして毛をたてて水をふるい落しそれから鼻をしかめて主
      人の来るのを待っている。】
Lぶるぶるっ:【からだをぶるぶるっとして毛をたてて水をふるい落しそれから鼻をしかめて主人
      の来るのを待っている。】
Mぽちゃぽちゃ:【その証拠には熊どもは小十郎がぽちゃぽちゃ谷をこいだり谷の岸の細い平ら
      ないっぱいにあざみなどの生えているとこを通るときはだまって高いとこから見送って
      いるのだ。】
Nすっかり:【けれどもいくら熊どもだってすっかり小十郎とぶっつかって犬がまるで火のついた
      まりのようになって飛びつき小十郎が眼をまるで変に光らして鉄砲をこっちへ構えるこ
      とはあんまりすきではなかった。】
Oごうごう:【けれども熊もいろいろだから気の烈
(はげ)しいやつならごうごう咆(ほ)えて立ちあが
      って、犬などはまるで踏みつぶしそうにしながら小十郎の方へ両手を出してかかって
      行く。】
Pぴったり:【小十郎はぴったり落ち着いて樹
(き)をたてにして立ちながら熊の月の輪をめがけ
      てズドンとやるのだった。】
Qズドン:【熊の月の輪をめがけてズドンとやるのだった。】
Rがあっ:【すると森までががあっと叫んで熊はどたっと倒れ赤黒い血をどくどく吐き鼻をくんくん
      鳴らして死んでしまうのだった。】
Sどたっ:【熊はどたっと倒れ赤黒い血をどくどく吐き鼻をくんくん鳴らして死んでしまうのだった。】
21どくどく:【赤黒い血をどくどく吐き鼻をくんくん鳴らして死んでしまうのだった。】
22くんくん:【鼻をくんくん鳴らして死んでしまうのだった。】
23とうとう:【何せこの犬ばかりは小十郎が四十の夏うち中みんな赤痢にかかってとうとう小十郎
      の息子とその妻も死んだ中にぴんぴんして生きていたのだ。】
24ぴんぴん:【何せこの犬ばかりは小十郎が四十の夏うち中みんな赤痢にかかってとうとう小十
      郎の息子とその妻も死んだ中にぴんぴんして生きていたのだ。】
25すうっ:【それから小十郎はふところからとぎすまされた小刀を出して熊の顎(あご)のとこから
      胸から腹へかけて皮をすうっと裂いて行くのだった。】
26ぽとぽと:【けれどもとにかくおしまい小十郎がまっ赤な熊の肝
(い)をせなかの木のひつに入れ
      て血で毛がぽとぽと房になった毛皮を谷であらってくるくるまるめせなかにしょって自分
      もぐんなりした風で谷を下って行くことだけはたしかなのだ。】
27くるくる:【毛皮を谷であらってくるくるまるめせなかにしょって自分もぐんなりした風で谷を下って
      行くことだけはたしかなのだ。】
28ぐんなり:【せなかにしょって自分もぐんなりした風で谷を下って行くことだけはたしかなのだ。】
29ずうっ:【ある年の春はやく山の木がまだ一本も青くならないころ小十郎は犬を連れて白沢をず
      うっとのぼった。】
30へとへと:【なんべんも谷へ降りてまた登り直して犬もへとへとにつかれ小十郎も口を横にまげ
      て息をしながら半分くずれかかった去年の小屋を見つけた。】
31しげしげ:【小十郎がすぐ下に湧水
(わきみず)のあったのを思い出して少し山を降りかけたら愕
      
(おどろ)いたことは母親とやっと一歳になるかならないような子熊と二疋(ひき)丁度人が
      額に手をあてて遠くを眺めるといった風に淡い六日の月光の中を向うの谷をしげしげ
      見つめているのだった。】
32じっ:【小十郎もじっとそっちを見た。】
33ちらっ:【小十郎はなぜかもう胸がいっぱいになってもう一ぺん向うの谷の白い雪のような花と
      余念なく月光をあびて立っている母子の熊をちらっと見てそれから音をたてないように
      こっそりこっそり戻りはじめた。】
34こっそりこっそり:【それから音をたてないようにこっそりこっそり戻りはじめた。】
35そろそろ:【風があっちへ行くないくなと思いながらそろそろと小十郎は後退
(あとずさ)りした。】
36すうっ:【くろもじの木の匂いが月のあかりといっしょにすうっとさした。】
37どっかり:【店の次の間に大きな唐金
(からかね)の火鉢を出して主人がどっかり座っていた。】
38たんたん:【主人は落ち着きはらってきせるをたんたんとてのひらへたたくのだ。】
39にかにか:【主人はだまってしばらくけむりを吐いてから顔の少しでにかにか笑うのをそっとかく
      して云ったもんだ。】
40そっ:【そっとかくして云ったもんだ。】
41だんだん:【それから主人はこんどはだんだん機嫌がよくなる。】
42わくわく:【小十郎はこの頃はもううれしくてわくわくしてる。】
43ちゃん:【小十郎はちゃんとかしこまってそこへ腰掛けていかの切り込みを手の甲にのせてぺろ
      りとなめたりうやうやしく黄いろな酒を小さな猪口
(ちょこ)についだりしている。】
44ぺろり:【いかの切り込みを手の甲にのせてぺろりとなめたりうやうやしく黄いろな酒を小さな猪
      口
(ちょこ)についだりしている。】
45どしどし:【けれどもどうして小十郎はそんな町の荒物屋なんかへでなしにほかの人へどしどし
      売れないか。】
46ばちゃばちゃ:【小十郎が谷をばちゃばちゃ渉
(わた)って一つの岩にのぼったらいきなりすぐ前
      の木に大きな熊が猫のようにせなかを円くしてよじ登っているのを見た。】
47どたり:【すると樹
(き)の上の熊はしばらくの間おりて小十郎に飛びかかろうかそのまま射(う)
      れてやろうか思案しているらしかったがいきなり両手を樹からはなしてどたりと落ちて
      来たのだ。】
48じっ:【小十郎は変な気がしてじっと考えて立ってしまいました。】
49ぼんやり:【小十郎はやっぱりぼんやり立っていた。】
50ゆっくりゆっくり:【熊はもう小十郎がいきなりうしろから鉄砲を射ったり決してしないことがよく
      わかってるという風でうしろも見ないでゆっくりゆっくり歩いて行った。】
51ちらっ:【そしてその広い赤黒いせなかが木の枝の間から落ちた日光にちらっと光ったとき小
      十郎は、う、うとせつなそうにうなって谷をわたって帰りはじめた。】
52どきっ:【丁度二年目だしあの熊がやって来るかと少し心配するようにしていたときでしたから
      小十郎はどきっとしてしまいました。】
53つるつる:【小十郎はまっ青なつるつるした空を見あげてそれから孫たちの方を向いて「行っ
      て来るじゃぃ。」と云った。】
54はあはあ:【犬はもう息をはあはあし赤い舌を出しながら走ってはとまり走ってはとまりして行
      った。】
55ちらちら:【小十郎は自分と犬との影法師がちらちら光り樺
(かば)の幹の影といっしょに雪にか
      っきり藍いろの影になってうごくのを見ながら遡って行った。】
56かっきり:【樺
(かば)の幹の影といっしょに雪にかっきり藍いろの影になってうごくのを見ながら
      遡って行った。】
57ギラギラ:【やっと崖を登りきったらそこはまばらに栗の木の生えたごくゆるい斜面の平らで雪
      はまるで寒水石という風にギラギラ光っていたしまわりをずうっと高い雪のみねがにょ
      きにょきつったっていた。】
58にょきにょき:【まわりをずうっと高い雪のみねがにょきにょきつったっていた。】
59ぴしゃ:【ぴしゃというように鉄砲の音が小十郎に聞えた。】
60があん:【と思うと小十郎はがあんと頭が鳴ってまわりがいちめんまっ青になった。】
61ちらちらちらちら:【そしてちらちらちらちら青い星のような光がそこらいちめんに見えた。】
62ちらちら:【すばるや参
(しん)の星が緑や橙(だいだい)にちらちらして呼吸をするように見えた。】
63じっ:【その栗の木と白い雪の峯々にかこまれた山の上の平らに黒い大きなものがたくさん
      環になって集って各々
(おのおの)黒い影を置き回々(フイフイ)教徒の祈るときのように
      じっと雪にひれふしたままいつまでもいつまでも動かなかった。】
64冴
(さ)え冴(ざ)え:【思いなしかその死んで凍えてしまった小十郎の顔はまるで生きてるときの
      ように冴
(さ)え冴(ざ)えとして何か笑っているようにさえ見えたのだ。】

 『なめとこ山の熊』のオノマトペ、まんず、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。 スネオ 拝 (^ ^;
                                                     2006.1.22.

 
     
 

      ええ、どこの学校って正直に云っちまいますとね、                 茨海狐(ばらうみきつね)小学校です。

 
       
 

  トップページも支離滅裂だなす。(^ ^;                                             ♪恥のギャグ塗り♪

 

トップページに戻ります。ヒマな人、ご覧くなさい。 スネオ 拝 (^ ^;

       
 

新編 風の又三郎

  次回配本は『新編 風の又三郎』です。


   狐を狐に見たのがもしだまされたものならば                        人を人に見るのも人にだまされたという訳です。                                                   by 『茨海(ばらうみ)小学校』