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バラバラのチェロ修復 PartU-5 |
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◇ 低音を左右するバスバー | |
上が元のバー、張力が弱かったガット弦時代の短いもの、実寸で43cm。
厚さも9mmとちょっと薄め。張力が増した現代のスチール弦や、スチール巻き弦を使う、昨今の、チェロの標準はおよそ60cm。
厚さは最大で11mmです。 (使用する板や形により多少差があります。) 置いて比べると、これだけの違いがあります。 |
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カーブの取り方も、古いものは何の根拠もなくただ削ったという感じ。 新しくつくった方は・・・、筆者はそれなりに考えてつくっています。 (その詳細については以下に記述。) |
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バスバーは、駒で受けた弦の張力を表板全体に分散させるという、いわば力木としての働きのほか、 |
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それなら、バスバーはそのことを考慮して削る必要はないのか? かつて雑誌『ストリングス』に連載された「ヴァイオリンの作り方」という岩井孝夫氏の記述の中に、 [バーの長さは270mm、下の板厚が6mm、上はそれより0.5mm細くなるようにする ]と書かれていました。 それは、上述したアッパーとローアの差に対して、うまく対応している根拠になります。 また、横から見て、[ カーブの取り方も左右対称に、同量の圧力がかかるようにする。 その上、中心を押さえたとき、両端に向かって左右均等に、0.5mm程度の隙間をあけ、 バーの上下に対して、やわらかいテンションをかけておく] とも書かれていました。 しかしながら、振動の基点はあくまで駒が乗るストップの位置。 しかも、力学的な圧力がいちばんかかるところもストップ。 それなら、「単純梁構造」から考えても、アーチをいちばん盛り上げるところはストップ付近にあるべきもの。 そうしたことを考慮すると、アーチだって決して左右(というより上下かな?)対称でない方がいい、と私は考えています。 だから、アーチの山が著しく後方になっている、この古いものを、「何の根拠もなく削ったという感じ」と、私は論評したのです。 |
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ヴァイオリンでも、ヴィオラでも、このチェロにしても、
私は、自分が信じる論拠を実践し、ご覧のように、細い棒をストップ位置に置き、そのバランスを見て重心をもってくるように削っています。 この写真では、なんとなく右側だけが表板の先に接しているように見えますが、しっかり浮いていてバランスはとれています。 バーの巾(板厚)は、下が11mm、上が9mmほどにしてバランスをとりました。もちろん、アーチの山は圧力がいちばんかかる、ストップがいちばん高くなるようにしています。 |
多くの作家はバーを貼ってから削っていますが、私はその論理を実践するために、 あえてチェックしながら削り、削り上がったあとから貼るという手順にしています。 |
バーの位置は、チェロもヴァイオリン同様、アッパーとローアの各3/7の位置を、あくまで標準と考えていますが、
ストップ位置に、今回、使う予定の駒を置いて見て、最終位置を決定します。 駒のデザインによる個体差を考慮してのことで、なんでも3/7の位置が正しいとは考えていないからです。 駒の、低弦側の加重がいちばんかかる位置は、決して脚の中心ではありませんからね。 表板のアーチ、駒トップのカーブ、それに、駒の形状そのものなどから、中心よりやや内側にいちばん加重がかかるでしょう。 そのことを想定し、今回は3/7に計測した標準位置より、ほんの少し外側にバーを移動して調整します。 |
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バスバーを貼ると、これで表板はすべて完成。 今回は、リブ・アッセンブリーのボディには表板から貼る予定です。(通常は裏板から貼る。) それは、前ページに書いた通り、リブからネックを外すとリブを割ってしまいそうで、どうしてもできませんでした。 そのため、先にボタンを含む裏板を貼り付けてしまうと、ネックの角度調整が一切できなくなってしまいます。 それで、新作における通常の組立とは逆に、表板から貼っていきます。 そのライニング材を切り出し、2.5mmほどの厚さに削り、準備しました。 |
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ライニング(lining)は、英語の単語通り、「
内張」とか「裏打ち」の意で、薄いリブに裏打ちするように貼り付ける、薄くて、巾の狭い木の部材です。 もともとが薄いリブに、そのまま裏板や表板を貼り付けても弱いので、その強度を増すために貼る、いわば接着補助材になります。 リブの厚さが2mmとします。それに、もう2mmライニングを加えれば、それだけで倍の接着面積となり、 接着強度も単純計算しても倍にはなります。 この左図のように、上からは板が貼利つけられますから、関係のないライニングの下の部分は面を大きくとって、長三角にテーパーをつけます。 |
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ライニングは、本体のカーブに合わせてベンディング・アイロンで曲げ、ニカワで貼ったところ。 いつもの洗濯バサミが、ここでは活躍します。どうしても洗濯バサミだけでは弱いところだけ、小型のクランプで締めつけます。 裁断には、ご覧のような小型の胴突きノコやカッター・ナイフで切っていますが、 100円ショップのキッチン・バサミでもライニング程度のものは簡単に、よく切れます。 |
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多くの製作者は、ライニングは貼ってからテーパーをとるのに削っていますが、私は貼る前に、あらかじめカンナでテーパーをつけておきますから、
後から角を削る必要はありません。 |
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貼るだけ貼り、ニカワが乾いてから、リブよりはみ出している部分を豆カンナで平らにならすだけで、ほぼライニング作業はできてしまいます。 |
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ここで、新しく取り替える黒檀の指板を、ネックにクランプで仮固定し、あらかじめネック角度もチェックしておきます。ストップ位置に置いた、左の低い駒が既存のもの。この差が、今と昔の差? |
右側のものが、現代チェロのやや標準的な高さのもの。左側のものは昔のタイプで、標準よりやや低目でしたから、今度はほぼ標準の高さ(81mm)に上げるよう、ネックの角度を保たせなければなりません。 |
表板の接着は、まずネック側とエンドピン側、その両方をまず固定、それから順次、下に下がっていくように周囲を貼り付けました。 |
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