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2003年 アカデミー賞

2003年3月

楽しい若者の映画の話を用意していたのですが、開戦になってしまい、とても大事故スタントで爆発だ、死が迫って来るなどとエンターテイメントではしゃぐ気分になれず、アップロードを中止しました。

★ 戦争でオスカーどころじゃない

ドイツは開戦にかなり前から反対していて、アメリカの顰蹙を買っていましたが、市民の多数が政治的な意味を持たず、「関係のない人を巻き込むのは行けない(一般市民)」、「必要も無いのに物を壊すのは良くない(環境運動派)」という単純な考えから、超党派で大反対していました。現在の首相は開戦反対に回らなければ選挙に負けたでしょう。

市民が必要も無いのに物を壊すのは行けないと考えるのは、環境保護の大切さを唱える政党があり20年以上の間環境を破壊するなと市民に訴えていたことが大きく影響しています。現在の政権がこの党の協力で成立していることとも関係があるでしょう。 この政党に属さなくても、考え方はこの政党に近い人が多くなり、多数派の政党はどこでも環境問題を政策に取り入れなければやって行けなくなって来ています。この辺の動きは日本の大政党でも環境問題をないがしろにできないのと似ています。 外務大臣をつとめている人は、その党のシンボル的な人物。ですから私は当選した時てっきりこの人が環境庁長官になるのだと思っていました。外務大臣などという専門外の事をやって大丈夫かなあと思っていたのですが、どっこい、最初の任期をこなし、2期目に入ったばかりの時に開戦するかしないかという問題にぶつかっています。横っちょで様子を見ていると今回はどの党が活躍したというより、戦争を始めたくない人が集まって、粘ったという印象です。

はっきり党の方針としてアメリカを支持している大きな政党があるのですが、そこの一般党員がやはり開戦に反対で、党の有力政治家がその人たちを代表して、党首に対してついに口を開いたという記事が週末有名な雑誌に載っていました。超党派で反対という機運が広がっています。ここで反対している人たちも「一般党員」で、自分の利害関係だけで動いているのではない様子です。国民1人1人が政治を司るなどという幻想は持っていなかったので、今回の展開には良い意味で驚いています。

★ でもやっぱりオスカー

そうこうするうちにオスカー。75周年なので23日はどこかの映画館に行って、オスカー・パーティーに参加しようと思っていたのですが、直前に開戦。町中が葬式気分で、とても華やかに騒ごうという気分になれませんでした。知り合いなどで開戦をすんなり受け入れるという意見の人は約1名。 この人の意見は「十万からの兵士が集まった段階でもう開戦は決まっていた。変更の余地はない」というもので、私がカバの浅知恵で「でもまだ政治家が話し合いを続けていたし、イラクは査察をその後も受け入れる姿勢だったから、防げたのでは」と言うと、「いや、あれはもう決まっていた事だから変えられない」という答でした。 晴れ晴れした顔でこういうすっきりした意見を言う人はこの人以外にまだお目にかかったことがなく、地下鉄の駅などでは大勢の人がキオスクに並ぶ新聞の第1面の燃えるバグダッドの写真を、気の毒そうに、心配そうに眺めています。ベルリンでは電車の中でビデオが見られるようになっているのですが、そこに流れるニュースにも皆無言で、深刻な顔をして見入っています。ドイツ語には Schadenfreude といって他の人の不幸を笑う時の喜びを表わす言葉があるのですが、今回は誰の顔にもそういう喜びは見られず、悲しそうです。

★ 日独欠席

さて、オスカーはというと、日本人もドイツ人も受賞したのに、アメリカに行きませんでした。宮崎駿は戦争が始まったことの不幸を直接コメントしたようです。ドイツの受賞者はカロライン・リンクという女性監督で、ナチに追われてアフリカに逃れなければ行けなかったユダヤ人家族を幼い少女の視点から描いた作品を撮っています。原作はシュテファニー・ツヴァイクといい、同じくナチに国を追われブラジルに逃れたシュテファン・ツヴァイクの身内のように見えますが、2人は親戚関係にはありません。ツヴァイクというのは枝という意味でそれほど珍しい名前ではないようです。

リンク監督はまだ1歳にもならない娘が病気でドイツを離れることができませんでした。・・・て言うじゃない。

★ 当選者発表

ダグラス家の重要なメンバーになったゼタ・ジョーンズは最初から大キャンペーンを張り、大女優が競う主演をはずし、助演でノミネートされていたので、予想通りの受賞。主演女優は去年惜しくも逃したキッドマン。キッドマンの場合、これがベストかも知れません。去年ですと初めて大きな役に挑戦し、話題を作っただけの受賞だとか、美人でスタイルがいいから得をしているなどと言う人が出るかも知れませんが、その次の年に連続ノミネートされ、地味な作品で受賞となると、運が良くての受賞というイメージから、実力を備えているぞというイメージに変わります。

男性の方は大方の予想をはずし、やはり第2次世界大戦中ナチに追われたピアニストの話で主演を演じた人。ノミネートされた本人も意外だったらしいです。監督ともどもの受賞。監督は開戦とは違う理由で授賞式には出席していません。

全部挙げていたら切りがありませんが、意外な受賞がマイケル・ムーア。この人の作品は以前ナイキという会社を扱ったものを見ていますが、おもしろい人です。「単純な疑問」で勝負する人で、上に書いたドイツの市民のようにごくごく単純に「・・・をしていいのだろうか」式の疑問をぶつけながらドキュメンタリーを撮る人です。受賞を決めた作品ボウリング・フォー・コロンバインでは「カナダ市民はアメリカ人以上に銃器を持っているのに、なぜカナダ人はぶっ放さないか」というような問をぶつけながら、ぶっつけ本番でカメラを回します。本人はどうやらチャールトン・ヘストンが仕切る全米のライフルだか、火器だかの協会に属しているようですが、武器が少年の手に渡って、学校で同級生が多数死んだことに疑問を持ち、ドキュメンタリーを作りました。一部の人には大いに受けたのですが、オスカー投票の時はスクリーニングのスケジュール調整が上手く行かず、投票権を持つ人に投票資格ができないようなスケジュールになってしまい苦戦していました。 にもかかわらず受賞。こういう映画を作る人らしく、オスカー主催者の注意を無視して政局に言及し、最後一言「・・・よ、恥を知れ」と言うまで名文句を吐き、舞台からつまみ出されてしまったようですが、彼らしくて、ファンがさらに増えるでしょう。次の作品も話題をさらいそうです。

だめだと思ったわりに健闘したのがサルマ・ハヤック。彼女はギャラ 2000 ドルでフリーダの主演を演じ、大赤字を出していますが、出来上がった作品は博物館に納めてもいいような秀作。美術面が素晴らしいです。メキシコ出身だということで無視されやすい立場ですが、スタッフが2つオスカーを取りました。主演はキッドマンに持って行かれ、その他にも強敵がおり、あげたいけれど取れないだろうと思っていました。しかしスタッフでも何でも取ってしまえば株は上がります。彼女1人が仕切って作った作品なので、彼女が受賞したのと同じ意味があります。ハヤックをいかがわしいキャバレーで半裸で蛇を肩に乗っけて踊るだけの女優だと思っている方は、自分で主題を選び、金をかき集め、シナリオを何度も書き直させ、主演を演じ、友達を動員して脇を固めた人なので、これを機に見直しましょう。

以下主な受賞作を挙げます。

主演女優

主演男優

助演女優

助演男優

監督

作品

オリジナル脚本

脚色

外国語映画

撮影

編集

美術

作曲

オリジナル歌曲

衣裳デザイン

メイクアップ

長編ドキュメンタリー

短編ドキュメンタリー

短編実写

長編アニメ

短編アニメ

音響

音響効果

視覚効果

音楽の大きな賞だと「イントロ賞」というのがあるのですが、映画には無いんでしょうかね。キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのイントロは美術賞あげたいぐらい良いです。

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