映画のページ
2004 USA 97 Min. 劇映画
出演者
Halle Berry
(Patience Phillips、キャットウーマン)
Benjamin Bratt
(Tom Lone - 町の刑事)
Sharon Stone
(Laurel Hedare - 化粧品会社社長夫人)
Lambert Wilson
(George Hedare - 化粧品会社社長)
見た時期:2004年8月
ファンタの記事を書いている最中なのですが、頭を冷やした方がいいと言うか、テーマに距離を置いた方がいいかと思うので、ちょっと休憩。
ファンタが終わり、寝坊するぞと思ったのですが、ちゃんと普通に目が覚めてしまいました。その上いつも通りただ券に応募したら、当たってしまいました。それで夕方は映画館へ出動。ただで良かった。
恋をしている監督の作品に出演すると女優は良い描かれ方をするものです。ウォーレン・ビーティーの時の彼女は美しかった。キャットウーマンの役はニコール・キッドマン、アシュレー・ジャッドにも話が行ったそうですが、誰が演じてもこの脚本では救いようが無いなあというのが感想。特にアラが目立つのが衣裳。ポスターを見たとたん「こりゃ、あかん」と思いました。ドイツではベリーが売春婦のように見えるということを何度か聞きました。
ハル・ベリーというのは決して下品な人ではありません。チョコレートでは下層階級の女性を演じるには品があり過ぎ、役に合わなかったぐらいです。X −メンで演じている役もスマートで、コスチュームが決まっていると未来的に見えたりもします。ソードフィッシュでも男をたぶらかす役でしたが、それほど下品だという印象は沸いてきませんでした。
それがどうでしょう。キャットウーマンの衣裳はピープ・ショーかストリップにでも出て来そう。そしてひどいメイク。脇役のランバート・ウィルソンとシャロン・ストーンはまだぱりっとした格好で救われていますが、主人公がこうでは、映画全体の品が落ちます。ミシェル・ファイファーのキャットウーマンはまだポスターしか見たことがないのですが、絵を見た限りではあちらの方が良い出来。
あって無いような筋ですが、ハル・ベリーは最初からキャットウーマンだったわけではなく、元々はペイシェンス・フィリップスというグラフィック・デザイナー。ある化粧品会社の広告を担当しています。ひょんなことから会社の重大な秘密を聞いてしまい、あっけなく消されてしまいます。ペイシェンスは死にますが、その時妙な化学反応を起こしてキャットウーマンが誕生します。このあたりはちょっとネコのミヌースを思い出させます。しかし落ち着いて考えて見ると、キャットウーマンは化け猫話だったんですね。これを見る前私はペイシェンスが死んだとは知らなかったのです。
まだ死んでいない頃のベリーの演技がひどいです。スパイダー・マン 2 でもトビー・マクガイヤーにやたら失敗させて、これでもか、これでもかと彼の人生が上手く行かないところを強調していましたが、キャットウーマンの脚本もそういう風にできています。トビー・マクガイヤーという人は各シーンできっちりした演技をするので、脚本がしつこくても、そのシーンを見ていると、そこだけではちゃんとサマになっています。そこがハル・ベリーは弱かった。ひどい衣裳を着て、みっともない歩き方でドジぶりを強調するというシーンなのですが、無能さの証明になってしまっています。ここはもう少しあっさりとさせ、彼女の運の悪さは観客が想像するという風にした方が良かったかも知れません。俳優が何もかもを見せて歩く必要はありません。
さて、この会社では新製品発売をする寸前。その新しい若返りクリームは中毒を起こし、肌が却って悪くなる危険をはらんでいます。日本に肌の色を不自然に白くする製品というのがあったそうですが、何だか想像をたくましくしてしまうなあ。
死んでしまったペイシェンスは生前町の刑事トムとデートをするような成り行きがあり、猫に生まれ変わってからも彼とはお付き合い。しかし自分の秘密をしゃべるわけには行きません。ペイシェンスを片づけたつもりだった会社の方では、キャットウーマンの登場で業務が混乱。製品の宣伝モデルの奥方はトウが立って来たため首。代わりに若い女性が採用されます。うぬぼれ亭主の関心はそちらの方へ。ランバート・ウィルソンはマトリックスのメロヴィンガーと似たイメージの役を演じています。
シャロン・ストーンをしかと見たのはスフィアとカジノ以来。この人はハリウッドとそりが合わないらしく、役選びでは色々困っていたようです。やっともらえた役ではトウが立ち嫉妬に狂った中年女。大スターが喜ぶ役ではありません。それをスマートにこなしているのには拍手を送りたい。ウィルソンとストーンは悪役ではありますが、存在感のある役で、ひどいシナリオ、だめな主演に比べ、バランスを上手に保っています。美男美女で我の強い夫婦という役。年を取るにつれ惨めな役が回ってくるスターというのを時々見ますが、ストーンのように居直ってスマートな悪人を演じるのは見ていても気持ちがいいです。皺があってもいいではありませんか。
ベリーの空けた穴を2人が何とか繕ったというのが正直な感想。ベリーはなぜオスカーをもらったのでしょう。彼女は黒人を代表わしている人には見えず、白人の一部のような印象を受けてしまいます。黒人に白人の血が混ざっているとその人は黒人扱い。白人に黒人の血が混ざっていると、その人も黒人扱い。で、ハル・ベリーもスモーキー・ロビンソンもパウエル長官も黒人ということになります。そして黒人となると損をする事が多いという不思議な国です。男性がセレナーデを捧げる相手はチョコレート色の肌の人という国ブラジルの人は何と言うでしょう。
それにしてもこの作品タダでなければ見ないぞというタイプ。Pitof のヴィドックをファンタで見て感激したので、キャットウーマンはひどいポスターでしたが見に行きました。彼は美術系の知識が豊富な人。もっと画面でおもしろい効果が見られるかと期待していました。しかしその期待は裏切られました。ベリーは妙な歩き方。キャット・ウォークのつもりなのでしょうが、ひどい出来です。ネコのミヌースの主演女優の方がずっと猫らしく見えました。猫好きの井上さん、子供用の映画ではありますが、ネコのミヌースは一見の価値あります。日本でも公開のようです。なんてここで他の映画の宣伝をしては行けません。
あと一息と思ったのは、キャットウーマンがつい盗んでしまい、後で悪かったと反省して盗品を返すシーン。ここはユーモアがあるので、これをもう少しのばして、ベリー演じるキャットウーマンに人が共感を覚えるように持って行けなかったかと思います。
人材という点で考えると Pitof、ベリー、ウィルソン、ストーンが揃っていたら、もう少し良質の作品が作れると思います。
後記: ベリーは全く別な所で大きさを示しました。キャットウーマンでもオスカーに並び見事に主演女優賞を受賞。
これで上のような有名人と肩を並べました。5度も受賞したマドンナにはかないませんが、1つ大きな違いは、ベリーが授賞式に現われたこと。ただ現われてトロフィーを受け取っただけではなく、オスカーの時と全く同じように大感激、涙の大芝居を見せたこと。女性でここまでユーモアのセンスのある人は少ない。後に授賞式に現われたサンドラ・ブロックより良かったそうです。
さて2011年にはこれぞキャットウーマンという作品が登場。アニメですが、声を担当しているのはサルマ・ハヤック。彼女のイメージにも良く合い、アニメのキャラクターの動きを見ても私がキャットウーマンという名前から想像していた通りでした。
この後どこへいきますか? 次の記事へ 前の記事へ 目次 映画のリスト 映画一般の話題 映画以外の話題 暴走機関車映画の表紙 暴走機関車のホームページ