西京亂無象, 豺虎方遘患。 復棄中國去, 委身適荊蠻。 親戚對我悲, 朋友相追攀。 出門無所見, 白骨蔽平原。 路有飢婦人, 抱子棄草間。 顧聞號泣聲, 揮涕獨不還。 未知身死處, 何能兩相完。 驅馬棄之去, 不忍聽此言。 南登霸陵岸, 迴首望長安。 悟彼下泉人, 喟然傷心肝。 |
七哀詩 三首之一******************
西京 亂れて 象(かたち) 無く,
豺虎 方(まさ)に 患(わづらひ)を遘(かま)へんとす。
復た 中國を 棄てて 去り,
身を委ねんに 荊蠻に 適(ゆ)く。
親戚 我に對して 悲しみ,
朋友 相ひ追ひて攀(とど)む。
門を出づれば 見る所 無く,
白骨 平原を蔽(おほ)ふ。
路に飢ゑたる 婦人 有りて,
抱(いだ)ける子を 草間に棄つ。
顧りみて 號泣の聲を 聞き,
涕(なみだ)を揮(ぬぐ)ひ 獨(ひと)り 還(かへ)らず。
「未だ 身の 死す處を知らざれば,
何ぞ能(よ)く 兩(ふた)つながら 相(あ)ひ完(まった)ふせん。」
馬を驅(か)って 之(これ)を棄てて 去り,
此(こ)の言 聽くに忍ばず。
南 霸陵の 岸に 登り,
首(かうべ)を迴(めぐら)して 長安を 望む。
悟る 彼(か)の 『下泉』の人を,
喟然として 心肝を 傷(いた)ましむるを。
2003. 2. 9 2.10完 2004.12.23補 2006. 1. 7 |