白居易　長相思　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩

　　
白居易
　　　長相思 BaiJuyi BaiLetian　Bai Juyi Bai Letian　baijuyi bailetian　bai juyi bai letian

汴水流，
泗水流，
流到瓜州古渡頭。
呉山點點愁。

思悠悠，
恨悠悠。
恨到歸時方始休。
月明人倚樓。

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長相思

汴水(べんすゐ)　流れ，
泗水( しすゐ)　流る，
流れて到るは　瓜州(くゎしう)の　　古き渡頭。
呉山　點點(ひとつひとつ)に　愁ふ。

思(おも)ひ　　悠悠，
恨(うら)み　　悠悠。
恨み　歸れる時に到らば　　方(まさ)に　始めて　休(をは)らん。
月明に　　人　樓に倚(よ)る。

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◎　私感註釈

※長相思：詞牌の一。詳しくは下記の「構成について」を参照。この詞は実にリズミカルである。

※汴水流：汴水（べんすい）は流れ。　・汴水：昔の川の名で、当時、汴京を流れていた。河陰県（現・河南省

陽県）から開封を通り泗水に注いでいた。当時は中原から東南方向への物流の幹線。晋以後汴水の呼び名だったが唐代には汴河となる。金元以降は黄河に取り込まれた。

※泗水流：泗水（しすい）は流れる。　・泗水：山東省泗水県蒙山の南に四ヶ所の水源があって名が付いたという。徐州を経て淮河へ注ぐ。

※流到瓜州古渡頭：流れて、瓜州（かしゅう）の古ぼけた渡し場に着いた。　・瓜州：長江と大運河の接点にある町の名。長江の北岸で大運河の入口にあたる

。　・渡頭：渡し場。

※呉山点点愁：呉の山々が、点々と（見えるのが）かなしい。　・呉山：江南の呉地方の山。普通名詞。現・浙江省の杭州に「呉山」という名称の小山があるが、それかどうかは不明。　・點點：一点一点。一つひとつ。　・愁：うれえる。悲しむ。

※思悠悠：思慕の念が遥かに遠く。　・悠悠：〔いういう；you1you1○○〕遠くはるかなさま。限りないさま。長く久しいさま。うれえるさま。また、行くさま。ひまのあるさま。ここは、前者の意。『詩經・王風』の『黍離』に「彼黍離離，彼稷之苗。行邁靡靡，中心搖搖。知我者，謂我心憂，不知我者，謂我何求。悠悠蒼天，此何人哉。」

とあり、『詩經』・周南』の『關雎』に「關關雎鳩，在河之洲。窈窕淑女，君子好逑。　　參差荇菜，左右流之。窈窕淑女，寤寐求之。求之不得，寤寐思服。悠哉悠哉，輾轉反側。　　參差荇菜，左右采之。窈窕淑女，琴瑟友之。參差荇菜，左右芼之。窈窕淑女，鐘鼓樂之。」

とあり、『古詩十九首之十一』に「廻車駕言邁，悠悠渉長道。四顧何茫茫，東風搖百草。所遇無故物，焉得不速老。盛衰各有時，立身苦不早。人生非金石，豈能長壽考。奄忽隨物化，榮名以爲寶。」

とあり、盛唐・高適の『宋中』に「梁王昔全盛，賓客復多才。悠悠一千年，陳迹惟高臺。寂寞向秋草，悲風千里來。」

とあり、崔顥（さいかう：Cui1Hao4）の七律『黄鶴樓』に「昔人已乘白雲去，此地空餘黄鶴樓。黄鶴一去不復返，白雲千載空悠悠。晴川歴歴漢陽樹，芳草萋萋鸚鵡州。日暮鄕關何處是，煙波江上使人愁。」

とある。

※恨悠悠：恨みの思いが遥かに遠く。　・恨：うらみ。心に強く感じること。

※恨到歸時方始休：（大事な人が自分の許に）帰ってきた時になって、ちょうどやっと（恨みの気持ちを）やめることができて。　・到歸時：（大事な人が自分の許に）帰ってきた時になって。　・方始休：はじめてやめることができる。　・方：ちょうど。　・始：やっと。　・休：とめる。やめる。停止する。

※月明人倚楼：月明かりの夜に、（愛しい人の帰りを待って、その）人（＝女性）は高殿（たかどの）に拠って（遠くを眺めやり物思いに耽って、愛しい人を待っている）。　・月明：月明かりの夜。　・人倚樓：（愛しい人の帰りを待っている）人（＝女性）が高殿（たかどの）に拠って（遠くを眺めやり物思いに耽っている）。
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◎　構成について

　双調。三十六字。平韻　一韻到底。韻式は「ＡＡＡ　ＡＡＡ」。韻脚は「流頭愁　悠休樓」で、第十二部平声。赤の部分は、畳字。青の部分も、畳字にする。上片と下片は同一の詞調。

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