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故人西辭黄鶴樓,
煙花三月下揚州。
孤帆遠影碧空盡,
惟見長江天際流。
黄鶴樓
「大陸旅游倶楽部三國志」
の紫氏より賜る。
黄鶴樓に 孟浩然の 廣陵に 之(ゆ)くを 送る
故人 西のかた 黄鶴樓を 辭し,
煙花 三月 揚州に 下る。
孤帆の 遠影 碧空に 盡き,
惟(た)だ見る 長江の 天際に流るるを。
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◎ 私感註釈
※黄鶴樓送孟浩然之廣陵:黄鶴楼で、孟浩然が広陵(揚州)に行くのを見送る。 *これと似たイメージのものに孟浩然の『送杜十四之江南』「荊呉相接水爲ク,君去春江正E茫。日暮弧舟何處泊,天涯一望斷人膓。」がある。 ・黄鶴樓:湖北省武昌の西南にある。 ・之:行く。動詞。 ・廣陵:江蘇省江都県の北東。現・江蘇省・揚州市。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)54ページ「唐 淮南道」で見る限り、揚州は揚州としてあり、廣陵は出てこない。『中国歴史地図集』第二冊 秦西漢・東漢時期(中国地図出版社)24−25ページ「西漢 揚州刺史部」では、現・揚州のところが廣陵となっている。李白は古地名を使った。
黄鶴樓
「大陸旅游倶楽部三國志篇」の紫氏より賜る。
※故人西辭黄鶴樓:古い知り合い(の孟浩然)が、西の方にある黄鶴樓(のある武昌)を辞去して。 ・故人:古い知り合い。昔なじみ。 ・西辭:西の方にある…を辞去する。黄鶴楼は広陵の西にあるからこういう。西方にあたる黄鶴樓のある(湖北省)武昌を辞去し、江蘇省の揚州に向かうこと。 ・黄鶴樓:湖北省武昌の西南にある建物の名で、ここでは、武昌という地名のスマートな出し方でもある。黄鶴樓は、その昔、老人が酒代の替わりにかいた黄色い鶴が実際に飛び去り、その地に伝説に基づき、記念として黄鶴樓を建てたという。崔(さいかう:cui1hao4)に七律『黄鶴樓』「昔人已乘白雲去,此地空餘黄鶴樓。黄鶴一去不復返,白雲千載空悠悠。晴川歴歴漢陽樹,芳草萋萋鸚鵡州。日暮ク關何處是,煙波江上使人愁。」 や、李白『與史郎中欽聽黄鶴樓上吹笛』「一爲遷客去長沙,西望長安不見家。黄鶴樓中吹玉笛,江城五月落梅花。」がある。
※煙花三月下揚州:春霞がたって美しい陰暦の三月に、下流の揚州の方へ下って行く。 ・煙花:春霞がたって美しい景色。「烟花」ともする。「烟」は「煙」の或体字。かすみのこと。 ・三月:陰暦の三月。季春。 ・下:くだる。下流の揚州の方へ行く。 ・揚州:江蘇省瓜州附近にある都会。
※孤帆遠影碧空盡:ぽつんとひとつだけの帆掛け船の姿が。遙か彼方の青空に消えてしまい。 ・孤帆:ぽつんとひとつだけの帆掛け船。李白に見送られた孟浩然が乗っている船。 ・遠影:遠くの姿。遙か彼方の船影。 ・碧空:青空。碧玉のように美しい青空。 ・盡:つきる。水平線の彼方に消えてしまったということ。
※惟見長江天際流:ただ、天の際(きわ)まで流れる長江が見えるだけだ。 ・惟:ただ…だけ。「唯」ともする。詩詞では「唯」よりも「惟」の方が多いか。東晉・陶潛の 『擬古・九首』其八に「少時壯且氏C撫劍獨行遊。誰言行遊近,張掖至幽州。饑食首陽薇,渇飮易水流。不見相知人,惟見古時丘。路邊兩高墳,伯牙與莊周。此士難再得,吾行欲何求。」とあり、李白は『戰城南』で「去年戰桑乾源,今年戰葱河道。洗兵條支海上波,放馬天山雪中草。萬里長征戰,三軍盡衰老。匈奴以殺戮爲耕作,古來唯見白骨黄沙田。」とし、白居易の『琵琶行』「轉軸撥絃三兩聲,未成曲調先有情。絃絃掩抑聲聲思,似訴平生不得志。低眉信手續續彈,説盡心中無限事。輕慢撚抹復挑,初爲霓裳後麹。大絃如急雨,小絃切切如私語,切切錯雜彈,大珠小珠落玉盤。間關鶯語花底滑,幽咽泉流氷下難。氷泉冷澀絃凝絶,凝絶不通聲暫歇。別有幽愁暗恨生,此時無聲勝有聲。銀瓶乍破水漿迸,鐵騎突出刀槍鳴。曲終收撥當心畫,四絃一聲如裂帛。東船西舫悄無言,唯見江心秋月白。」とし、また、曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。慨當以慷,憂思難忘。何以解憂,唯有杜康。」や、唐の劉希夷『白頭吟(代悲白頭翁)』に「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,C歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫~仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」とあり、李白の『將進酒』に「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復回。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金尊空對月。天生我材必有用,千金散盡還復來。烹羊宰牛且爲樂,會須一飮三百杯。岑夫子,丹丘生。將進酒,杯莫停。與君歌一曲,請君爲我傾耳聽。鐘鼓饌玉不足貴,但願長醉不用醒。古來聖賢皆寂寞,惟有飮者留其名。陳王昔時宴平樂,斗酒十千恣歡謔。主人何爲言少錢,徑須沽取對君酌。五花馬,千金裘。呼兒將出換美酒,與爾同銷萬古愁。」とあり、劉長卿は『尋盛禪師蘭若』で「秋草黄花覆古阡,隔林何處起人煙。山僧獨在山中老,唯有寒松見少年。」や、後世、北宋・蘇軾の『江城子』乙卯正月二十日夜記夢には「十年生死兩茫茫,不思量。自難忘。千里孤墳,無處話淒涼。縱使相逢應不識,塵滿面,鬢如霜。 夜來幽夢忽還ク。小軒窗,正梳妝。相顧無言,惟有涙千行。料得年年腸斷處,明月夜,短松岡。」と使い、司馬光は『居洛初夏作』「四月清和雨乍晴,南山當戸轉分明。更無柳絮因風起,惟有葵花向日傾。」と使う。 ・見:見みえる。 ・長江:大江。揚子江。初唐・張若虚の『春江花月夜』に「春江潮水連海平,海上明月共潮生。灩灩隨波千萬里,何處春江無月明。江流宛轉遶芳甸,月照花林皆似霰。空裏流霜不覺飛,汀上白沙看不見。江天一色無纖塵,皎皎空中孤月輪。江畔何人初見月,江月何年初照人。人生代代無窮已,江月年年祗相似。不知江月待何人,但見長江送流水。白雲一片去悠悠,青楓浦上不勝愁。誰家今夜扁舟子,何處相思明月樓。可憐樓上月裴回,應照離人妝鏡臺。玉戸簾中卷不去,擣衣砧上拂還來。此時相望不相聞,願逐月華流照君。雁長飛光不度,魚龍潛躍水成文。昨夜鞨K夢落花,可憐春半不還家。江水流春去欲盡,江潭落月復西斜。斜月沈沈藏海霧,碣石瀟湘無限路。不知乘月幾人歸,落月搖情滿江樹。」とある。 ・天際:天の果て。水平線の彼方。謝の『宣城郡出新林浦向板橋』「江路西南永,歸流東北鶩。天際識歸舟,雲中辯江樹。旅思倦搖搖,孤遊昔已屡。既歡懷祿情,復協滄洲趣。囂塵自茲隔,賞心於此遇。雖無玄豹姿,終隱南山霧。」後世、北宋・柳永も『蝶戀花』で「佇倚危樓風細細,望極春愁,黯黯生天際。草色煙光殘照裏,無言誰會憑欄意。擬把疏狂圖一醉,對酒當歌,強樂還無味。衣帶漸ェ終不悔,爲伊消得人憔悴。」や、同・柳永の『八聲甘州』「對瀟瀟、暮雨灑江天,一番洗C秋。漸霜風淒慘,關河冷落,殘照當樓。是處紅衰翠減,苒苒物華休。惟有長江水,無語東流。不忍登高臨遠,望故ク渺,歸思難收。歎年來蹤迹,何事苦淹留。想佳人、妝樓望,誤幾回、天際識歸舟。爭知我、倚闌干處,正恁凝愁。」 と使う。
◎ 句の大意
・故人西辭黄鶴樓:古い知り合い(の孟浩然)が、西の方にある黄鶴樓(のある武昌)を辞去し、
・煙花三月下揚州:春霞がたって美しい陰暦の三月に、下流の揚州の方へ下って行く。
・孤帆遠影碧空盡:ぽつんとひとつだけの帆掛け船の姿が。遙か彼方の青空に消えてしまい、
・惟見長江天際流:ただ、天の際まで流れる長江が見えるだけだ。
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◎ 構成について
七絶平起。韻式は「AAA」。韻脚は「樓州流」で、平水韻下平十一尤。以下の平仄は、この作品のもの。
●○○○○●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
○○●●●○●,
○●○○○●○。(韻)
2002.9. 8 9. 9 9.10完 2005.8.22補 2007.8.11 2016.6. 7 |
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