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夫天地者,萬物之逆旅;
光陰者,百代之過客。
而浮生若夢,
爲歡幾何?
古人秉燭夜遊,
良有以也。
況陽春召我以煙景,
大塊假我以文章。
會桃李之芳園,
序天倫之樂事。
群季俊秀,皆爲惠連。
吾人詠歌,獨慚康樂。
幽賞未已,
高談轉清。
開瓊筵以坐華,
飛羽觴而醉月。
不有佳作,
何伸雅懷?
如詩不成,
罰依金谷酒數。
春夜 桃李園に 宴する序
夫(そ)れ 天地は, 萬物の逆旅(げきりょ)にして;
光陰は,百代の過客(くゎかく)なり。
而(しか)して浮生は 夢の若し,
歡を爲(な)すこと 幾何(いくばく)ぞ?
古人 燭を 秉(と)りて 夜に遊ぶ,
良(まこと)に 以(ゆゑ) 有る也。
況(いは)んや 陽春 我を召くに 煙景を以てし,
大塊 我に假すに 文章を以てするをや。
桃李の芳園に 會し,
天倫の樂事を 序す。
群季の俊秀は, 皆 惠連 爲(た)り。
吾人の 詠歌は, 獨り康樂に 慚(は)づ。
幽賞 未だ已(や)まず,
高談 轉(うた)た 清し。
瓊筵を 開きて 以て 華に坐し,
羽觴を飛ばして 月に醉(ゑ)ふ。
佳作 有らずんば,
何ぞ 雅懷を 伸べんや?
如(も)し 詩 成らずんば,
罰は 金谷の酒數に 依(よ)らん。
◎ これは、四六駢儷文の見本として、掲げた。構成は、次の通り。
夫 天地者, 萬物之逆旅; 光陰者, 百代之過客。 而 浮生若夢, 爲歡幾何? 古人秉燭夜遊, 良有以也。 況 陽春召我以煙景, 大塊假我以文章。 會桃李之芳園, 序天倫之樂事。 群季俊秀, 皆爲惠連。 吾人詠歌, 獨慚康樂。 幽賞未已, 高談轉清。 開瓊筵以坐華, 飛羽觴而醉月。 不有佳作, 何伸雅懷? 如 詩不成, 罰依金谷酒數。
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◎ 私感註釈
※四六駢儷文の見本として、掲げた。
・者:…は。主格を表す。
・逆旅:〔げきりょ;ni4lyu3〕旅人をむかえる旅館。後出の「過客」とともに、陶淵明の『雜詩十二首』其七「日月不肯遲,四時相催迫。寒風拂枯條,落葉掩長陌。弱質與運,玄鬢早已白。素標插人頭,前途漸就窄。家爲逆旅舍,我如當去客。去去欲何之,南山有舊宅。」 とあるのに基づく。
・光陰:年月。時間。
・過客:〔くゎかく;guo4ke4〕旅人。旅客。
・浮生:はかない人生。この世。浮き世。
・爲歡:歓楽事をする。よろこびをなす。 ・幾何:どれほど。いくばく。魏の曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。」とあり、その意も含んでいる。
・秉燭:明かりを取り持つ。『古詩十九首之十五・生年不滿百』の中の「生年不滿百,常懷千歳憂。晝短苦夜長,何不秉燭遊。」とあるのに基づく。 ・秉:〔へい;bing3〕手に取り持つ。
・夜遊:有限の時間を貴重に思って、夜遊びをする。
・良:まことに。副詞。後に用言が来る。
・以:ゆゑ。ゆえに。
・也:断定、詠嘆の助辞。終助詞。
・況:ましてや。いはんや。
・陽春:春季。
・召:めす。
・煙景:かすみがたなびく春景色。
・大塊:造化。造物主。
・假:かす。かりる。ゆるす。
・文章:華麗な文様・色彩。また、文才。文章。
・會:時間や場所を決めて、会うこと。
・桃李之芳園:春の桃李の花が咲き乱れている庭園。
・序:述べる。申し述べる。
・天倫之樂事:兄弟が揃って開く楽しい宴会。・天倫:自然に備わる人の順序。親子、兄弟など。
・群季:多くの弟たち。諸弟。
・俊秀:優れて秀でた者。
・皆爲:みんな…である。
・惠連:優れた弟の意。本来は人名。晋の謝惠連のこと。文をよくし、従兄の謝靈運にほめられたという故実に基づき、優れた弟の意で使われる。謝霊運。
・獨慚:ひとり、はじる。多くの弟たちは、晋の謝惠連のように、みな優秀であるのに、兄の自分だけは、晋の謝惠連の兄である謝靈運に及ばないということ。
・康樂:前出、謝靈運の封号。謝恵連の従兄の謝霊運のこと。
・幽賞:静かにほめ味わう。
・未已:まだ終わらない。
・高談:高尚な話。あたりかまわぬ声高い話。思う存分話をする。
・轉:いよいよ。いとど。ますます。
・瓊筵:〔けいえん;qiong2yan2〕美しい玉で飾ったムシロの意で、立派な宴席のこと。 ・筵:酒席、酒宴。坐るムシロ、せき。蛇足だが、「筵」「宴」の発音は極めて近く、使われ方も似ているが、語源や声調がことなる。筵:〔yan2〕で、宴:〔yan4〕になる。
・坐華:(美しい)花の上に坐る。華やかな宴席に列座する。
・飛:盃を交わす。「羽觴」なので、それに合わせて「飛」と表現した。
・羽觴:スズメが羽をひろげた形をした杯。
・不有:「有る、存在する」ということの打ち消し。「有るということがない」「いない」「存在しない」。「深沈百丈洞海底,那知不有蛟龍蟠。」に同じ。
・佳作:立派な作品。
・何:なんぞ。
・伸:述べる。
・雅懷:風流な思い。雅やかな考え。
・如:。もしも…ならば。もし…ば。仮定を表す。
・詩不成:(もしも)詩が出来ない。詩が完成しない。
・罰:ここでは、罰杯。罰として、酒を飲むこと。
・依:よる。もとづく。依拠する。
・金谷酒數:罰杯。晋の石崇が金谷の別荘で客を招き宴会をし、詩の作れない者は罰として、酒三杯を飲むこととした故事。石崇の『金谷園詩序』に「余以元康六年,………有別廬在河南縣界,金谷澗中,………晝夜遊宴,屡遷其坐,或登高臨水,或列坐水濱,時琴笙築,合載車中,道路併作。及住,令與鼓吹遞奏,遂各賦詩,以敘中懷,或不能者,罰酒三斗。」とあることに基づく。
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2003.10.1 10.2完 2007. 7.6補 2015.8.15文章 |
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