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生年不滿百,
常懷千歳憂。
晝短苦夜長,
何不秉燭遊。
爲樂當及時,
何能待來茲。
愚者愛惜費,
但爲後世嗤。
仙人王子喬,
難可與等期。
生年 百に 滿たず
生年 百に 滿たず,
常に 懷(おも)ふ 千歳の憂ひを。
晝 短くして 夜の長きを 苦み,
何ぞ 燭を 秉(と)りて 遊ばざる。
樂を爲すこと 當(まさ)に 時に及ぶべし,
何ぞ能く 來茲を 待たんや。
愚者は 費(つひ)えを 愛惜し,
但(た)だ 後世の 嗤(わら)はるると 爲るのみ。
仙人 王子喬,
期(のぞみ)を 等しくするを 與(とも)にすること 難(かた)かる 可(べ)し。
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◎ 私感註釈
※生年不滿百:これは『古詩十九首』の十五。になる。この『生年不滿百』は東晉の陶淵明に影響を与えたか。『帰去来兮辞』の最後の解が似通っている。『古文眞寶』は『生平不滿百』とする。(写真:右下)
『古詩源』 『古文眞寶』
※生年不滿百:人の命は、百歳に及ばない。 ・生年:人の命。 ・不滿百:百歳未 満である。百歳にならない。
※常懷千歳憂:いつも死没することへの恐怖を抱いている。また、いつも(自分の死後)千年のことをおもんばかってばかりである。ここは、前者の意。 ・常懷:いつも思う。 ・千歳憂:死没することへの恐怖。(人の)永遠の憂いである死没するという事実。或いは、(自分の死後)千年のおもんばかりである。後世、陶潛が『 遊斜川』で「開歳倏五日,吾生行歸休。念之動中懷,及辰爲茲游。氣和天惟澄,班坐依遠流。弱湍馳文魴,闥J矯鳴鴎。迥澤散游目,緬然睇曾丘。雖微九重秀,顧瞻無匹儔。提壺接賓侶,引滿更獻酬。未知從今去,當復如此不。中觴縱遙情,忘彼千載憂。且極今朝樂,明日非所求。」 と使う。
※晝短苦夜長:昼間が短くて、夜の長いことが辛い。
※何不秉燭遊:どうして、ともしびを点して、(暗い夜を)愉しく過ごすことをしないのか。 ・何不:どうして……しないのか。後世、李白は『春夜宴桃李園序』(夫天地者,萬物之逆旅)で、「而浮生若夢,爲歡幾何?古人秉燭夜遊,良有以也。」として、使っている。 ・秉燭遊:灯火を持って遊ぶ。ともしびを点して、(暗い夜を)愉しく過ごす。
※爲樂當及時:楽しめる時に楽しんでおくことが、大事だ。 ・爲樂:楽しいことをする。・當:…するのがよいだろう。まさに…べし。 ・及時:ふさわしい時。ちょうど良い時。適時。
※何能待來茲:どうして次の来る日を待っているのか。なぜ、すなおにさっさと(喜ぼうと)しないのか。 ・何能:どうして…なのか。……でありえない。なんぞよく…せんや。後世、晉・陶潛は『飮酒二十首・其五』「結廬在人境,而無車馬喧。問君何能爾,心遠地自偏。采菊東籬下,悠然見南山。山氣日夕佳,飛鳥相與還。此中有眞意,欲辨已忘言。」 とする ・來茲:明日。次の日。来日。来時。「來」は『論語』などで多用される「來者」(自分より後から生まれて来る者)の「來」に同じ。
※愚者愛惜費:愚か者は、ついえを惜しみ。 ・愚者:愚か者。 ・愛惜:…するに忍びない。惜しむ。 ・費:お金を使うこと。ついえ。
※但爲後古嗤:ただ、後の世わらい者となってしまっただけだ。 ・但爲:ただ…となってしまっただけだ。『古文眞寶』は『倶爲』とする。 ・後世:後の世。 ・嗤:あざわらう。馬鹿にしてわらう。わらい者。
※仙人王子喬:仙人となった王子喬。 ・仙人:山に入って修行を積んだ人。≒真人。遷人。道士。 ・王子喬:人名。周の霊王の太子。笙を吹くことを好み、とりわけ鳳凰の鳴き声を出すことが得意だった。王子喬がある時、河南省の伊水と洛水を漫遊した時に、浮丘公という道士に出逢った。王子喬は、その道士について嵩山に登っていった。そこにいること三十余年、浮丘公の指導の下、仙人になった。その後、王子喬は白い鶴に乗って、飛び去った、という『列仙傳』に出てくる故事中の人物。
※難可與等期:(王子喬のように仙人になるという)期待を同じくできるということは、むつかしいことだ。 ・難:むつかしい。 ・可:ことができる。 ・與:…とともにする。 ・等期:期待を同じくする。期待を等しくする。王子喬のように仙人になる期待を持つ。
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◎ 構成について
換韻。韻式は、「AABBB」。韻脚は「憂遊」(平水韻下平十一尤)、「時茲嗤期」(上平四支)。この作品の平仄は次の通り。
○○●●●,
○●○●○。(韻)
●●●●○,
○●●●○。(韻)
○●○●○,
○○●○○。(韻)
●●●●●,
●○●●○。(韻)
○○○●○,
○●●●○。(韻)
2003.6. 9 6.10 6.11完 2007.4.23補 4.27 |
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