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      獨坐敬亭山

                 李白


衆鳥高飛盡,
孤雲獨去閒。
相看兩不厭,
只有敬亭山。


******


獨り 敬亭山に 坐す
 
衆鳥  高く 飛び 盡し,
孤雲  獨
(ひと)り 去りて 閒なり。
(あ)ひ 看て  兩(ふた)つながら 厭(あ)きざるは,
只だ  敬亭山 有るのみ。

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◎ 私感註釈

※李白:盛唐の詩人。字は太白。自ら青蓮居士と号する。世に詩仙と称される。701年(嗣聖十八年)~762年(寶應元年)。西域・隴西の成紀の人で、四川で育つ。若くして諸国を漫遊し、後に出仕して、翰林供奉となるが高力士の讒言に遭い、退けられる安史の乱では苦労をし、後、永王が謀亂を起こしたのに際し、幕僚となっていたため、罪を得て夜郎にながされたが、やがて赦された

※獨坐敬亭山:ひとりだけで敬亭山に坐って居る。後出の「衆鳥高飛盡」「孤雲」「獨去」「閒」などから、隠棲する意を込めている。 *この作品は古来多くの解釈が行われてきた。 ・獨坐:ひとりだけで居る。 ・敬亭山:安徽省東南にある宜城市の北5キロメートルの水陽江に面した海抜317メートルの山。長江と黄山の間になる。元は昭亭山といった。李白の墓も近くにある。

※衆鳥高飛盡:多くの鳥は高く飛び去り。 *群をなす鳥は(自分たちの目的に向かって)飛び去り、作者のもとから去っていく。陶淵明の『擬古』「迢迢百尺樓,分明望四荒。暮作歸雲宅,朝爲
飛鳥。山河滿目中,平原獨茫茫。古時功名士,慷慨爭此場。一旦百歳後,相與還北。松柏爲人伐,高墳互低昂。」、『古詩十九首』「生年不滿百,常懷千歳憂。」や『歸去來兮辭』「雲無心以出岫,倦飛而知還。景翳翳以將入,撫孤松而盤桓。」や『飮酒二十首・其五』「山氣日夕佳,飛鳥相與還。此中有眞意,欲辨已忘言。」 などの鳥とイメージが似ている。 ・衆鳥:群れ飛ぶ鳥。また、「移ろいやすい多くの人々」の意を暗に示す。 ・高飛:高く飛び去る。後世、白居易が『燕詩示劉叟』で「燕燕爾勿悲,爾當返自思。思爾爲雛日,高飛背母時。當時父母念,今日爾應知。」と使っている。  ・盡:つきる。ここでは、飛び去って見えなくなったことをいう。

※孤雲獨去閒:ぽつんと一つだけあった雲も流れ去って、今はゆったりと落ちついて静かである。また、一つだけあった雲も作者のもとから去っていった。作者の孤独感を暗示する。 ・孤雲:ぽつんと一つだけある雲。 ・獨去:独りだけで去って行く。 ・閒:ゆったりと落ちついて静かなさま。ひっそりと静かなさま。ゆったりとしてのどかなさま。

※相看兩不厭:お互いに眺めあっていても、双方(山と作者)少しもあきがこないのは。眺め続けていても、二つとも(「敬亭山」と「わたし」)あきないのは。ながめていても少しもいやがらないのは。 ・相看:お互いに見あって。眺めていても。ここでの「相」は普通の散文で使われる「相互に」の意(前者の訳)と、詩詞に多い動作の働きかけ(「明月來相照」)の場合(後者の訳)とに考えられる。 ・兩:双方。普通、山と人のこと。敬亭山と作者を指す。 ・不厭:あきてこない。また、いやにならない。

※只有敬亭山:ただ敬亭山があるのみである(前者の訳)。ただこの敬亭山があるのみである(後者の訳)。ただ、敬亭山だけは(衆鳥や孤雲などとは違い)わたしをいやがってわたしのもとから去るということはしない。敬亭山のみがわたしの理解者である。 ・只有:ただ…のみがある。

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◎ 構成について

韻式は「AA」。韻脚は「閒山」で、上平十五刪。次の平仄はこの作品のもの。

●●○○●,
○○●●○。(韻)
○◎●●●,
●●●○○。(韻)
2005.1. 2完
2007.9.25補

漢詩 填詞 詩餘 詩余 

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