洛陽城裏見秋風,
欲作家書意萬重。
復恐匆匆説不盡,
行人臨發又開封。
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秋の思い
洛陽城裏 秋風を見る,
家書を作らんと欲して 意 萬重 。
復(ま)た恐る 匆匆(そうそう)として 説(と)きて盡くせざるを,
行人 發(た)つに臨(のぞ)みて 又 封を開く。
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◎ 私感註釈
※張籍:中唐の詩人。字は文昌。和州(かしゅう)烏江(安徽省和県)の人。768年(大暦三年)〜830年(太和四年)。師友の韓愈に目をかけられ、その推薦によって、国子博士となった。楽府に長じている。
※秋思:秋の頃の物思い。秋に感じるものさびしい思い。
※洛陽城裏見秋風:洛陽の街に(新たに)秋風(が吹き始めたの)にでくわした。 ・洛陽城:東の首都・洛陽の街。 ・裏:内に。 ・見:みる。あう。 秋風:秋の風であるが「見秋風」で、新しい季節である秋に出逢った。歳月、時間がたくさん流れたということを自覚したということ。
※欲作家書意萬重:(故郷を離れて、季節を何回も過ごしてしまい、懐郷の念が興ってきたので)家へ手紙を書こうと思ったが、思いが幾重にも重なってきて(なかなかまとまらない)。 ・欲:…たいと思う。…しようとする。ほっす。 ・作:「作家書」で故郷への手紙を書く。 ・家書:故郷への便り。 ・意:思い。心。 ・萬重:幾重にも重なる。
※復恐匆匆説不盡:ひょとしたら慌ただしく(手紙を書いたので)言い尽くせていないかと心配して。 ・復恐:ひょとしたら…なのかもしれないと心配する。 ・復:また。ふたたび。東晋の陶潜詩のように言葉のリズムを整えるためにも使う。 ・恐:…ではないかと心配する。 ・匆匆:〔そうそう;cong1cong1○○〕慌ただしいさま。いそがしいさま。騒がしいさま。後世、李Uに『相見歡』「林花謝了春紅,太匆匆。無奈朝來寒雨晩來風。 臙脂涙,留人醉,幾時重。自是人生長恨 水長東。」がある。 ・説不盡:言い尽くせない。この表現では、なし遂(おお)せない、不可能であるというニュアンスを表す。否定形の「不説盡」とは異なる。李清照『雙調憶王孫』の「湖上風來波浩渺,秋已暮、紅稀香少。水光山色與人親,説不盡、無窮好。」や、李清照は『武陵春』に「風住塵香花已盡,日晩倦梳頭。物是人非事事休,欲語涙先流。 聞説雙溪春尚好,也擬泛輕舟。只恐雙溪舟,載不動,許多愁。」と同様の表現。「盡説」(「韋荘の『菩薩蠻』には「人人盡説江南好,遊人只合江南老。春水碧於天,畫船聽雨眠。 爐邊人似月,皓腕凝雙雪。未老莫還ク,還ク須斷腸。」、「説盡」(「中唐・白居易の『琵琶行』「轉軸撥絃三兩聲,未成曲調先有情。絃絃掩抑聲聲思,似訴平生不得志。低眉信手續續彈,説盡心中無限事。輕慢撚抹復挑,初爲霓裳後麹。大絃如急雨,小絃切切如私語,切切錯雜彈,大珠小珠落玉盤。間關鶯語花底滑,幽咽泉流氷下難。氷泉冷澀絃凝絶,凝絶不通聲暫歇。別有幽愁暗恨生,此時無聲勝有聲。銀瓶乍破水漿迸,鐵騎突出刀槍鳴。曲終收撥當心畫,四絃一聲如裂帛。東船西舫悄無言,唯見江心秋月白。」)の否定形になる。
※行人臨發又開封:(手紙を托した)旅人の出発に際して、又してももう一度手紙の封を開けてみた。 ・行人:旅人。ここでは、手紙を托す人のことになる。 ・臨發:出発に際して。出発にのぞんで。 ・又:またしても。 *今までにもしたが、又もう一度したことをいう。二度目、三度目…と繰り返しているさまをいう。 ・開封:手紙の封を開ける。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「風重封」で、平水韻上平一東(風)、上平二冬(重封)。次の平仄はこの作品のもの。
●○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●○○●●●,
○○○●●○○。(韻)
2007.11.12 11.13 |
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