流落相憐柳敬亭, 消除豪氣鬢星星。 江南多少前朝事, 説與人閒不忍聽。 |
柳敬亭 に贈る
流落 相 ひ憐 む柳敬亭 ,
豪氣 を消除 して鬢 星星 たり。
江南 多少 前朝 の事,
人閒 に説與 するも 聽くに忍 びず。
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◎ 私感訳註:
※毛奇齢:清初の文学者、史学者、経(けい)学者。明・天啓三年(1623年)~清・康煕五十二年(1713年)。浙江省蕭山の人。字は大可。号して初晴。西河先生と呼ばれた。翰林院編集に任ぜられ、『明史』の編集をした。清代の漢学者では、最も優れた人。『毛西河合集』498巻がある。
※贈柳敬亭:(講談師の)柳敬亭に(この詩を)贈る。 ・柳敬亭:明末・清初の人物で(日本で謂うところの講談師、また浪曲師に該る)芸術家。説書(歴史書の講談)をする人。明・嘉靖八年(1592年)~清・康煕十一年(1672年)頃。原姓は曹。名は永昌。字は葵宇。
※流落相憐柳敬亭:落ちぶれ果てた柳敬亭を憐れむ。 *柳敬亭よ、落ちぶれ果てて哀れだなあ。 ・流落:落ちぶれはてる。盛唐・王翰の『古長城吟(飮馬長城窟行)』に「長安少年無遠圖,一生惟羨執金吾。麒麟前殿拜天子,走馬西撃長城胡。胡沙獵獵吹人面,漢虜相逢不相見。遙聞撃鼓動地來,傳道單于夜猶戰。此時顧恩寧顧身,爲君一行摧萬人。壯士揮戈回白日,單于濺血染朱輪。歸來飲馬長城窟,長城道傍多白骨。問之耆老何代人,云事秦王築城卒。黄昏塞北無人煙,鬼哭啾啾聲沸天。無罪見誅功不賞,孤魂流落此城邊。當昔秦王按劍起,諸侯膝行不敢視。富國強兵二十年,築怨興徭九千里。秦王築城何太愚,天實亡秦非北胡。一朝禍起蕭墻内,渭水咸陽不復都。」とある。 ・相-:こもごも…。ともに…。
※消除豪気鬢星星:(今は)雄々しい気概も消え失(う)せて、耳際の髪には、ぽつぽつと(白髪が交じってきた)。 ・消除:(心配や障碍を)取り除く。除去する。 ・豪気:豪毅。雄々しい気概。 ・鬢:〔びん;bin4●〕耳ぎわの髪。びん。晩唐・杜牧の『歸家』に「稚子牽衣問,歸來何太遲。共誰爭歳月,贏得鬢邊絲。」とある。 ・星星:〔せいせい;xing1xing1○○〕ぽつりぽつり。僅かに。
※江南多少前朝事:江南(の前・明朝の残存勢力である南明(なんみん)の根拠地)では、先(さき)の王朝・明(みん)の(悲惨な)出来事が多く。 *中国・南部には、明の残存勢力に因る哀しい歴史があるが、清朝に遠慮して表現している。 ・江南:中国沿岸の南部。ここでは、前・明朝の残存勢力である南明(なんみん)の所在地域としてで、その興亡を指す。南明は明朝の崩壊後、皇族によって華中・華南に建てられた地方政権のこと。 ・多少:多い。少ない。どれほど。 ・前朝:先(さき)の王朝。ここでは、明(みん)朝のことのなる。 ・事:出来事。南明が北方の清朝と争った幾多の出来事を指す。
※説与人間不忍聴:世間での口演(こうえん)には、聴くに忍びない(ものがある)。 ・説:「説話」「説書」のこと。講談。 ・説与:…に歴史書を講義する。北宋・黄庭堅の『絶句』に「半篙春水一蓑煙,抱月懷中枕斗眠。説與時人休問我,英雄囘首卽神仙。」とある。 ・人間:〔じんかん;ren2jian1○○〕人の世。世間。 間=閒。 ・不忍:忍(しの)びない。耐えられない。 ・聴:(聴こうと思って)聴く。
◎ 構成について
2021.11. 9 11.10 11.11 11.12 11.13完 |
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