銷夏詩 | |
清・袁枚 |
不著衣冠不半年,
水雲深處抱花眠。
平生自想無官樂,
第一驕人六月天。
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銷夏 詩
衣冠を著 けざること 半年に近く,
水雲 深き處 花を抱 きて眠る。
平生 自 ら想 ふ 無官の樂 ,
第一に 人に驕 るは 六月の天。
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◎ 私感註釈
※袁枚:清代の詩人。1716年(康煕五十五年)〜1797年(嘉慶二年)。字は子才。号して簡齋。別号に隨園老人ともいう。銭塘(現・浙江省杭州)の人。乾隆年間の進士で、県令の任につく。やがて官を退き、江寧(金陵=現・南京附近)小倉山の隨園(別号に基づく)に隠棲する。詩では性霊説を唱えて、格調説を論駁する。
※銷夏詩:夏の暑さをしのぐ詩。 ・銷夏:夏の暑さをしのぐ。「銷」〔せう;xiao1〕=「消」〔せう;xiao1〕=(けす)。
※不著衣冠近半年:(宮仕えを止めたため、)衣服とかんむりの正しい装束を着なくなって半年近くになり。 ・不著衣冠:(宮仕えを止めたため)きちんとした正しい装束を着なくなった。 ・著:身につける。着る。 ・衣冠:〔いくゎん;yi1guan1○○〕衣服とかんむり。正しい装束。
※水雲深処抱花眠:(今は)水や雲といった大自然のところで、花にいだかれて眠っている。 ・水雲:水と雲。大自然。 ・-深処:(…ことが)甚だしい時とところで。 ・處:ところ。ところで。ところに。「…のところ」といった位置、場所を表し、…の点、…の折といったことも表す雰囲気もある。白居易の『靈巖寺』「館娃宮畔千年寺,水闊雲多客到稀。聞説春來更惆悵,百花深處一僧歸。」、前出・釋靈一の『題僧院』「無限青山行欲盡,白雲深處老僧多。」、柳永の『夜半樂』「凍雲黯淡天氣,扁舟一葉,乘興離江渚。渡萬壑千巖,越溪深處。怒濤漸息,樵風乍起,更聞商旅相呼。片帆高舉。泛畫鷁、翩翩過南浦。 望中酒旆閃閃,一簇煙村,數行霜樹。殘日下,漁人鳴榔歸去。敗荷零落,衰楊掩映,岸邊兩兩三三,浣沙遊女。避行客、含羞笑相語。 到此因念,繍閣輕抛,浪萍難駐。歎後約丁寧竟何據。慘離懷,空恨歳晩歸期阻。凝涙眼、杳杳~京路。斷鴻聲遠長天暮。」 、或いは、「荷花深處小船通」「漉k深處是蘇家(=蘇小小の所)」、李清照の『如夢令』「嘗記溪亭日暮,沈醉不知歸路。興盡晩回舟,誤入藕花深處。爭渡,爭渡,驚起一灘鴎鷺。」、や前出・戴叔倫『夏日登鶴巖偶成』「碧雲深處共翔。」というように使う。我が国では、江戸時代・廣P旭莊の『夏初遊櫻祠』「花開萬人集,花盡一人無。但見雙黄鳥,緑陰深處呼。」がある。 ・抱花:花をいだく。花をかかえる。花にかじりつく。 *この「花」を女性の意ととる見方もある。また、「抱花」を受身の意ととり「花にいだかる」ととる。 ・抱:だく。かかえる。かじりつく。いだく。
※平生自想無官楽:常々、官職に就かない気楽さを想像していたが。 ・平生:ひごろ。ふだん。つねづね。また、かつて、むかし。往時。 ・無官:官職がないこと。官職についていないこと。
※第一驕人六月天:(その「無官楽」のすばらしさの)第一に挙げて人に自慢できるのは、(衣冠を著けないで過ごせる)夏の日である。 ・驕人:他人に対して不遜なこと。 ・驕:誇る。誇りに思う。また、おごりたかぶる。傲慢である。おごる。 ・六月:陰暦の六月で晩夏。現在の七月から八月上旬頃の気候か。夏の三か月(陰暦四月・陰暦五月・陰暦六月)のうちの終わりの月。夏の終わり。季夏。中唐・戴叔倫の『夏日登鶴巖偶成』に「天風吹我上層岡,露灑長松六月涼。願借老僧雙白鶴,碧雲深處共翺翔。」とある。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」で、韻脚は「年眠天」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○。(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2012.10.22 10.23完 2017. 2.10補 |
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