Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye
                             

懷舊
                                                  
                        南宋・陸游

身是人間一斷蓬,
半生南北任秋風。
琴書昔作天涯客,
蓑笠今成澤畔翁。
夢破江亭山驛外,
詩成燈影雨聲中。
不須强覓前人比,
道似香山實不同。




               
    **********************


            懷舊(くゎいきう)

身は()れ 人間(じんかん)の  一斷蓬(だんぽう)
半生(はんせい) 南北  秋風(しうふう)(まか)す。
琴書(きんしょ) 昔は  天涯(てんがい)(かく)()り,
蓑笠( さ りふ) 今は  澤畔(たくはん)(をう)と成る。
夢は(やぶ)る  江亭(かうてい) 山驛(さんえき)(そと)
詩は()る  燈影 雨聲の(うち)
(もち)ゐず  ()ひて  前人(ぜんじん)に比を(もと)むるを,
香山(かうざん)に似たりと()ふも  實は同じからず。





◎ 私感訳註:

※陸游:南宋の詩人。宣和七年(1125年)〜嘉定二年(1209年)。山陰 (現・浙江省紹興県)の人。字は務観。号して放翁。夔州通判、厳州権知事、軍器少監、礼部郎中兼実録院検討、宝謨閣待制などを歴任した。尤袤、楊万里、范成大とともに南宋四大家と称された。祖国を憂うる愛国詩人といわれるとともに、日常の生活をもこまやかに歌い上げた。

※懐旧:昔のことを懐かしむ。 *この詩、作者・陸游の『貧甚戲作絶句』其六「
行遍天涯斷蓬作詩博得一生窮。可憐老境蕭蕭,常在荒山破驛。」と似た雰囲気を持つ詩。

※身是人間一断蓬:(我が)身は、人の世の風に吹かれて飛び流離(さすら)う一本のヨモギで。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・人間:〔じんかん;ren2jian2○○〕人の世。世間。 ・断蓬:根から離れて風に吹かれて飛び流離(さすら)うヨモギの一種で、風に吹かれて流離(さすら)うさま、漂泊・流浪の身を謂う。この「蓬」は、クリスマスリースのようになって、風に吹かれて地上を転がる根無し草。デラシネ。「轉蓬」「飛蓬」のこと。盛唐・王之渙の『九日送別』に「薊庭蕭瑟故人稀,何處登高且送歸。今日暫同芳菊酒,明朝應作斷蓬。」とあり、前出・陸游の『貧甚戲作絶句』其六「行遍天涯等斷蓬,作詩博得一生窮。可憐老境蕭蕭夢,常在荒山破驛中。」とある。映画『黄土地』にその転蓬、飛蓬の様子が描写されている。曹植の『吁嗟篇』に「吁嗟此轉蓬,居世何獨然。長去本根逝,宿夜無休閑。東西經七陌,南北越九阡。卒遇回風起,吹我入雲間。自謂終天路,忽然下沈泉。驚飆接我出,故歸彼中田。當南而更北,謂東而反西。宕宕當何依,忽亡而復存。飄周八澤,連翩歴五山。流轉無恆處,誰知吾苦艱。願爲中林草,秋隨野火燔。糜滅豈不痛,願與根連。」とあり、李白の『送友人』に「青山北郭,白水遶東城。此地一爲別,孤蓬萬里征。浮雲遊子意,落日故人情。揮手自茲去,蕭蕭班馬鳴。」とある。後世、南唐・李Uの『浣溪沙』「轉燭飄蓬一夢歸,欲尋陳跡悵人非,天ヘ心願與身違。   待月池臺空逝水,蔭花樓閣漫斜暉,登臨不惜更沾衣。」や南宋・陸游『貧甚戲作絶句』其六に「行遍天涯等
斷蓬,作詩博得一生窮。可憐老境蕭蕭夢常在荒山破驛。」とある。

※半生南北任秋風:半生を、南北あちらこちらと秋風に任せて(流れていった)。 ・南北:南と北との間。

※琴書昔作天涯客:琴と本(といった高度の教養を持った文人の趣味のものを携えて、)昔は、地の果ての旅人となった(が)。 ・琴書:琴と本。趣味、道楽を謂う。高度の教養を持った文人のなし得る趣味、道楽であって、庶民のそれではない。東晋・陶淵明の『始作鎮軍參軍經曲阿作』に「弱齡寄事外,委懷在
琴書。」とあり、同・陶淵明の『帰去来兮辞』(歸去來兮辭)に「歸去來兮,請息交以絶遊。世與我以相遺,復駕言兮焉求。ス親戚之情話,樂琴書以消憂。」とある。また、盛唐・王維の六言詩『田園樂七首』之七に「酌酒會臨泉水,抱琴好倚長松。南園露葵朝折,東谷黄粱夜舂。」とあり、盛唐・李白に『山中與幽人對酌』「兩人對酌山花開,一杯一杯復一杯。我醉欲眠卿且去,明朝有意抱琴。」とある。 ・天涯:空の果て。遙かなところ。非常に遠いところ。 ・客:旅人。

※蓑笠今成沢畔翁:蓑笠(さりゅう=みのかさ)姿で、今は、(『楚辭・漁父』でいう“時代の趨勢に流されて行く”)沼沢のほとりの老人となってしまった。 ・蓑笠:〔さりふ;suo1li4○●〕蓑(みの)と(頭にかぶる)編み笠(かさ)。「蓑」は「簑」とも書く。萱、菅、藁等の茎や葉を編んで作った身に着ける雨具。 *「蓑笠」は、水辺の仙人とも謂える漁父の大切な道具。中唐・柳宗元の『江雪』に「千山鳥飛絶,萬徑人蹤滅。孤舟
簑笠,獨釣寒江雪。」とあり、宋・徐積の『漁歌子/漁父樂』に「水曲山隈四五家,夕陽煙火隔蘆花。漁唱歇,醉眠斜,綸竿蓑笠是生涯。」とある。 ・沢畔:沼沢のほとり。『楚辭・漁父』に「屈原既放,游於江潭行吟澤畔,顏色憔悴,形容枯槁。漁父見而問之曰:「子非三閭大夫與?何故至於斯?」屈原曰:「舉世皆濁我獨C,衆人皆醉我獨醒,是以見放。」漁父曰:「聖人不凝滯於物,而能與世推移。世人皆濁,何不淈其泥而揚其波?衆人皆醉,何不餔其糟而歠其釃?何故深思高舉,自令放爲?」屈原曰:「吾聞之:新沐者必彈冠,新浴者必振衣。安能以身之察察,受物之汶汶者乎?寧赴湘流,葬於江魚之腹中,安能以皓皓之白,而蒙世俗之塵埃乎?」漁父莞爾而笑,鼓竡ァ去。乃歌曰: 「滄浪之水C兮,可以濯我纓,滄浪之水濁兮,可以濯我足。」遂去,不復與言。」とある。

※夢破江亭山駅外:夢が破(やぶ)れて目覚めれば、(見ていた夢は)川沿いの宿屋や山中の宿場の彼方(で)。 ・江亭:川沿いの宿屋(長亭・短亭)、の意で、作者の蜀の時代の思い出の場所。 ・山駅:山中の宿場。作者の蜀の時代の思い出の場所。前出・陸游『貧甚戲作絶句』其六に「行遍天涯等斷蓬,作詩博得一生窮。可憐老境蕭蕭夢,常在荒山破驛。」とある。

※詩成灯影雨声中:詩ができあがったのは、火影(ほかげ)に(=夜間の)雨の音が(聞こえる時であった)。 ・詩成:詩ができあがる意。 ・灯影:火影(ほかげ)。夜間であることを謂う。

※不須強覓前人比:強:しいて先人と比較することを求めるまでもない。 ・不須-:…するまでもない。…に及ばない。…する必要がない。用(もち)ゐず。 ・強:しいて。 ・覓:もとめる。 ・前人:先人。

※道似香山実不同:「(わたしの詩は)白居易と似ている」と言うが、実はそうではない。 ・道:言う。 ・香山:白居易のこと。香山居士は号。中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。官は武宗の時、刑部尚書に至る。左拾遺になるが、江州の司馬に左遷され、後、杭州刺史に任ぜられる。やがて刑部侍郎、太子少傅、刑部尚書を歴任する。その詩風は、平易通俗な語彙表現を好み、新楽府、竹枝詞、楊柳枝等に挑戦し、諷諭詩や感傷詩でも活躍した。白居易の作品は、「抒情詩の頁」に多く集めている。 ・実:其の実は。実際は。 ・不同:同じではない。異なる。 *白居易も陸游も人々の生活を描いた作品を残すが、白居易は高官であって、なお民衆に優しい視線を向ける。陸游は、陶淵明のように農民と共にいるものの、憂国の情を独りたぎらせている。民衆の中にいるものの、そのさまは異なる。





◎ 構成について

韻式は「AAAAA」。韻脚は「蓬風翁中同」で、平水韻上平一東。次の平仄はこの作品のもの。

○●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
○○○●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2019.2.5
     2.6
                               
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