Huanying xinshang Ding Fengzhang de wangye

                            


五月二十四日過高郵三溝
北宋・梅堯臣



甲申七月七,
未明至三溝。
先妻南陽君,
奄仳向行舟。
魂去寂無跡,
追之固無由。
此苦極天地,
心瞀腸如抽。
泣盡涙不續,
岸草風颼颼。
柎殭尚疑生,
大呼聲裂喉。
柁師爲我歎,
挽卒爲我愁。
戊子夏再過,
感昔涕交流。
恐傷新人心,
強制揩雙眸。
未及歸旅櫬,
悲恨何時休。



           
******

五月二十四日 高郵(かういう)三溝(さんこう)(よぎ)
甲申(かふしん)  七月七,
未明  三溝(さんこう)に至る。
先妻  南陽君(なんやうくん)
(には)かに(わか)るること  行舟(かうしう)()いてす。
(こん) 去りて  (せき)として(あと) 無く,
(これ)を追ふも  (もと)より (よし)無し。
()の苦  天地に(きは)まり,
(くら)く  腸 ()くが如し。
泣き()くして  涙 續かず,
岸の草に  風は 颼颼(しうしう)たり。
(かばね)()きて  ()ほ生けるかと疑ひ,
大いに呼べば  聲は(のど)を裂く。
柁師(だし)  我が(ため)(なげ)き,
挽卒(ばんそつ)  我が爲に(うれ)ふ。


戊子(ぼし)  夏 再び(よぎ)り,
昔に感じて  (なみだ) (こも)ごも流る。
新人(しんじん)の心を 傷つけんことを恐れて,
()ひて制して  雙眸(さうばう)(ぬぐ)ふ。
(いま)だ  旅櫬(りょしん)(かへ)すに 及ばざれば,
悲恨( ひ こん)  (いづ)れの時にか()まん。

                    ****************




◎ 私感註釈

※梅堯臣:北宋の詩人。咸平五年(1002年)〜嘉祐五年(1060年)。字は聖兪。宣州宣城(現・安徽省宣城)の人。宣城は、古くは宛陵と呼ばれていたので、宛陵先生と呼ばれた。終生官途には恵まれなかったが、その詩名は「宋詩開山の祖」として知られる。『詩經』『楚辭』の「写実」「寄興」の継承を主張し、西崑派の無意味な言葉を連ねる浮薄な傾向に反対して、「平淡」「閑遠」「発想は新しく、語句を練る」ことを主張した。その詩の多くは現実の生活を反映したもので、叙景・抒情の詩は清新で、深遠な意境を秘めている。

※五月二十四日過高郵三溝:(今、慶暦八年(1048年)の)陰暦五月二十四日に、高郵の三溝を(再び)過(よ)ぎって。 *四年前の秋七月に、この地で没した亡き妻を追想して詩を作った。 ・五月二十四日:慶暦八年(1048年)の陰暦五月二十四日のこと。=“今”。作者が宣城へ帰る途上で、この詩を作った時。なお、作者は四年前の慶暦四年(1044年)七月七日に、この場所で(先)妻を亡くした。その時を回想しての詩。 ・過:すぎる。よぎる。 ・高郵:〔かういう;Gao1you2○○〕高郵軍。揚州の北50キロメートルのところ。現・江蘇省揚州高郵県。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)22−23ページ「淮南東路 淮南西路」にある。 ・三溝:現・江蘇省揚州高郵県にある運河の名称か。作者が妻を亡くした場所。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)22−23ページ「淮南東路 淮南西路」では、見あたらない。

※甲申七月七:(以下、四年前の過去の描写:)甲申(こうしん)(=きのえさる 慶暦四年(1044年))の七月七日(の)。 ・甲申:〔かふしん;jia3shen1●○〕きのえさる。ここでは、慶暦四年(1044年)のこと。作者がこの詩を作った時点より四年前のことで、先妻を亡くした時。「甲申」は、干支で表した年。干支とは、十干と十二支の組み合わされた序列の表記法のこと。十干とは、「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」のことをいい、十二支とは「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」のことをいう。十干のはじめの「甲」、十二支のはじめの「子」から順に、次のように組み合わせていく: 甲子、乙丑、丙寅、丁卯、戊辰、己巳、庚午、辛未、壬申、癸酉、(以上、10組で、ここで十干は再び第一位の「甲」に戻り、11組目が始まる)甲戌、乙亥、……(ここで、十二支は「子」に戻り、13組目以降は)丙子、丁丑…となって、合計は(ページの)60組になる。これで、1から60までの順を表し、年月日の表示などに使われる。なお、61番目は、1番目の甲子にもどる。還暦である。それ故、甲申年は慶暦四年(1044年)だけに限らず、±60年(の倍数年)も甲申年となる。(例えば:1104年、1164年、1224年…と。また、984年、924年…と)。 ・七月七:陰暦七月七日。作者は四年前の慶暦四年(1044年 甲申)のこの日に(先)妻を亡くした。

※未明至三溝:夜明け前に三溝に着いた。 ・未明:夜明け前。明け方。びめい。

※先妻南陽君:先妻の南陽君(と)は。 ・南陽君:南陽県君のことで、先妻の称号。

※奄仳向行舟:旅行く舟で、突然に死別した。 ・奄:〔えん;yan3●〕忽然。突然。また、〔えん;yan1○〕久しい。ここは、前者の意。 ・仳:〔ひ;pi3◎〕分かれる。離別する。また、醜い。ここは、前者の意。 ・向:…に於いて。≒於、于。 ・行舟:旅行く舟。旅先の舟。

※魂去寂無跡:魂(たましい)は、ひっそりと、あとかたが無く去って行き。 ・寂無跡:ひっそりとして、あとかたが無い、の意。東晉・陶潛の『飮酒』其十五に「貧居乏人工,灌木荒余宅。班班有翔鳥,
寂寂行迹。宇宙一何悠,人生少至百。歳月相催逼,鬢邊早已白。若不委窮達,素抱深可惜。」 とあり、盛唐・李白の『宿五松山下荀媼家』に「我宿五松下,寂寥所歡。田家秋作苦,鄰女夜舂寒。跪進雕胡飯,月光明素盤。令人慚漂母,三謝不能餐。」とある。

※追之固無由:これ(=魂)を追いかけることは、もとより、する方法がない。 ・固:もとより。 ・無由:…する方法がない。由(よし)なし。

※此苦極天地:この苦しみは天地に極まった。 ・極:きわまる。

※心瞀腸如抽:心は暗く、腸(はらわた)が抜かれるようだ。 ・瞀:〔ぼう;mao4、mou4●〕くらい。目がはっきりしない。心がくらい。惑乱する。 ・抽:ぬく。

※泣尽涙不続:(涙を流して)泣き尽くしたので、涙は(涸れ果てて)続かない。 ・泣:(声を立てずに涙を流して)なく。なお、「哭」は、大声をあげて泣く。

※岸草風颼颼:岸の草に風がサーッ(と吹いてきて)。 ・颼颼:〔しうしうsou1sou1○○〕(風の音で、)サーッ(と吹く)。ヒュー(と吹く)。擬声語。

※柎殭尚疑生:亡骸(なきがら)に付いていれば、なおまだ、生きているかと疑ってしまう。 ・柎:〔ふ;fu1○〕つける。=付。 ・殭:〔きゃう;jiang1○〕屍(しかばね)。死んで硬くなった死体。また、死後硬直する。 ・尚:まだ。なお。まだなお。

※大呼声裂喉:大きな声で呼びかけたため、喉が裂ける(ばかりである)。 ・裂喉:喉を裂く、意。

※柁師為我歎:舵取りは、わたしのために嘆いて。 ・柁師:〔だし;duo3shi1●○〕かじとり。南宋・陸游の『感昔』に「行年三十憶南遊,穩駕滄溟萬斛舟。常記早秋雷雨霽,
柁師指點説流求。」とあり、現代・『大海航行靠舵手』「大海航行靠舵手,萬物生長靠太陽。雨露滋潤禾苗壯,幹革命靠的是毛澤東思想。魚兒離不開水呀,瓜兒離不開秧。革命群衆離不開共産黨,毛澤東思想是不落的太陽。」とある。 ・柁:〔だ;duo4●〕(船などの)かじ。船尾に附けて、船の方向を決める道具。 ・為我:わたしのために…、の意。

※挽卒為我愁:舟を曳く人夫は、わたしのために悲しんだ。 ・挽卒:舟を曳く人夫。

※戊子夏再過:(以下、「現在」の描写:)戊子(ぼし=つちのえね=慶暦八年(1048年))の夏(=五月二十四日)に(高郵の三溝を)過ぎった(が)。 ・戊子:〔ぼし;wu4zi3●●〕つちのえね。ここでは、慶暦八年(1048年)のことで、作者がこの詩を作った時。=“今”。 ・夏:詩題の『五月二十四日過高郵三溝』中の「(陰暦)五月」は盛夏。

※感昔涕交流:昔(=四年前に先妻が亡くなった時)を思い出して、涙がこもごも流れた。 ・涕:〔てい;ti4●〕涙。 ・交流:こもごも流れる、の意。

※恐傷新人心:(先妻の没後に再婚した)新妻(にいづま)の心を傷(いた)めるのを恐れたため。 ・新人:新妻。

※強制揩双眸:両の瞳(ひとみ)を無理に拭(ぬぐ)っ(て、誤魔化し)た。 ・強制:無理強(じ)いする。 ・強:しいて。 ・揩:〔かい;kai1○〕ぬぐう。拭(ふ)く。擦(す)る。また、〔かつ;jia2●〕打つ。 ここは、前者の意。 ・双眸:〔さうばう;shuang1mou2○○〕両のひとみ。

※未及帰旅櫬:まだ旅先で葬ったひつぎを(郷里に)帰すことができない(ので)。 ・未及-:まだ…できない。まだ…するに至らない。…する暇がない。 ・櫬:〔しん;chen4●〕ひつぎ。棺桶。 ・旅櫬:旅先で葬ったひつぎ、の意。

※悲恨何時休:悲しく恨めしい思いは、いつ止むことだろうか。 ・何時:いつ(…か)。 ・休:やむ。やすむ。

              ***********






◎ 構成について

韻式は、「AAAAAAAAAA」。韻脚は「君舟由抽颼喉愁流眸休」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。


●○●●●,
●○●○○。(韻)
○○○○○,
●●●○○。(韻)
○●●○●,
○○●○○。(韻)
●●●○●,
○●○○○。(韻)
●●●●●,
●●○○○。(韻)
○○●○○,
●○○●○。(韻)
●○●●◎,
●●●●○。(韻)
●●●●●,
●●●○○。(韻)
●○○○○,
●●○○○。(韻)
●●○●●,
○●○○○。(韻)
2019.3.12
     3.13
     3.14





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