王安石梅花　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 Wang Anshi

梅花
	王安石

牆角數枝梅，
凌寒獨自開。
遙知不是雪，
爲有暗香來。

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梅花

牆角しゃうかく　　數枝の梅，
寒を凌しのぎて　　獨り自ひと　みづから開く。
遙かに知る　　是これ雪ならず，
暗香あんかうの來きたる　有るが爲ためなり。

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◎　私感註釈

※王安石：北宋の政治家、改革者。文学者。１０２１年（天禧五年）～１０８６年（元祐元年）。字は介甫。号は半山。撫州臨川（現・江西省臨川）の人。神宗のとき宰相となり、変法（制度改革）を倡え強行したが、司馬光らの反対に遭い、やがて失脚して引退する。散文に優れる。唐宋八大家の一人。

※梅花：梅の花。梅花は、早春の雪の中で花を著け、寒さ（＝境遇の悪さ）に耐えて、清らかな香りを放つ（＝薫化）。そのさまは、君子の徳操を象徴するものとされる。それ故、作者・王安石は、自分自身を詠ったものとも考えられる。陸游の『卜算子・詠梅』に「驛外斷橋邊，寂寞開無主。已是黄昏獨自愁，更著風和雨。　　　無意苦爭春，一任羣芳妬。零落成泥碾作塵，只有香如故。」とあり、李清照は『聲聲慢』で「尋尋覓覓，冷冷淸淸，凄凄慘慘戚戚。乍暖還寒時候，最難將息。三杯兩盞淡酒，怎敵他、曉來風急。雁過也，正傷心，却是舊時相識。　　　　滿地黄花堆積，憔悴損，如今有誰堪摘。守着窗兒, 獨自怎生得黑。梧桐更兼細雨，到黄昏、點點滴滴。這次第，怎一個、愁字了得。」と使う。

※牆角數枝梅：垣根のかどに数本の梅の枝（が見え）。　・牆角：かきねのかど。　・牆：〔しゃう；qiang2○〕垣。垣根。

※凌寒獨自開：寒気を衝（つ）いて、（他の春の花は、まだ咲いていないが、梅は）じぶんひとりだけで開いていた。　・凌：〔りょう；ling2○〕しのぐ。　・寒：さむさ。名詞。　・獨自：じぶんひとりで。北宋・王安石の『重將』に「重將白髮傍牆陰，陳迹茫然不可尋。花鳥總知春爛熳，人間獨自有傷心。」とあり、前出・陸游の『卜算子』詠梅「驛外斷橋邊，寂寞開無主。已是黄昏獨自愁，更著風和雨。　　　無意苦爭春，一任羣芳妬。零落成泥碾作塵，只有香如故。」とあり、前出・李清照は『聲聲慢』で「尋尋覓覓，冷冷淸淸，凄凄慘慘戚戚。乍暖還寒時候，最難將息。三杯兩盞淡酒，怎敵他、曉來風急。雁過也，正傷心，却是舊時相識。　　　　滿地黄花堆積，憔悴損，如今有誰堪摘。守着窗兒，獨自怎生得黑。梧桐更兼細雨，到黄昏、點點滴滴。這次第，怎一個、愁字了得。」と使う。

※遙知不是雪：はるかに離れていても、それは雪ではないことが分かる。　・遙知：はるかに離れていても分かる。　・不是：…は…ではない。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語（述部の名詞句）を否定する働きがある。〔A不是B：AはBではない〕。「是」の否定形で、文語の「非」に似た働きをする。

※爲有暗香來：（その訳（わけ）は、）どこからともなく漂ってくる香りがあるためだ。　*この句は「爲〔有｛（暗香）來｝〕」という構造。　・爲有：…があるため。　・爲：〔ゐ；wei4●〕…のゆえ（に）。…のため（に）。原因（や目的）を表す。　・暗香：どこからともなく漂ってくる香り。かおりは、君子の徳、薫染を暗示する。中唐・白居易の『春夜宿直』に「三月十四夜，西垣東北廊。碧梧葉重疊，紅藥樹低昂。月砌漏幽影，風簾飄闇香。禁中無宿客，誰伴紫微郎。」とあり、両宋・李清照の『醉花陰』に「薄霧濃雲愁永晝，瑞腦消金獣。佳節又重陽，玉枕紗廚，半夜涼初透。　　　東籬把酒黄昏後，有暗香盈袖。莫道不消魂，簾捲西風，人似黄花痩。」とある。

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◎　構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「梅開來」で、平水韻上平十灰。この作品の平仄は、次の通り。

○●●○○，（韻）
○○●●○。（韻）
○○●●●，
●●●○○。（韻）