西樓 | |
曾鞏 |
海浪如雲去卻囘,
北風吹起數聲雷。
朱樓四面鉤疏箔,
臥看千山急雨來。
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西樓
海浪 雲の如く 去りて 卻 囘る,
北風 吹き起す 數聲の雷。
朱樓の四面に 疏箔を鉤し,
臥して看る 千山に 急雨の來るを。
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◎ 私感註釈
※曾鞏:〔そうきょう;Zeng1Gong3〕北宋の人。字は子固。世に南豊先生と称せらる。(現・江西省南豐)の人。1019年〜1083年。唐宋八大家の一。
※西樓:西側のたかどの。詩の表現内容から、山と海に囲まれたところに建っているたかどのになる。朱敦儒の『相見歡』「金陵城上西樓,倚清秋,萬里夕陽垂地、大江流。 中原亂,簪纓散,幾時收?試倩悲風吹涙、過揚州。」など多いが、ここでは、特別の意は無い。後出・「朱樓四面鉤疏箔」での「朱樓」のこと。
※海浪如雲去卻回:海の大波は、雲のように(大きく)、去っていっては、また打ち寄せてくる。 ・海浪:海の大波。 ・如雲:雲のように。 ・去卻回:去っていっては、またかえってくる。 ・卻:〔きゃく;que4●〕やはり。
※北風吹起數聲雷:北風が吹き始めて、幾らか雷鳴(も聞こえる)。 ・吹起:吹き始める。 ・-起:(動詞の後に附き)…し始める。蛇足になるが、「起」にも「風が出る」の意があるが、その場合「北風吹起數聲雷」では「(北)風吹起…」ではなくて「起(北)風…」という表現の時。
※朱樓四面鉤疏箔:朱塗りのたかどのの四方にある簾(すだれ)を巻き上げて鉤(かぎ)で留め。 ・朱樓:朱塗りのたかどの。富貴の家のたかどの。紅楼。詩題の『西樓』のこと。 ・鉤:〔こう;gou1○〕(鉤(かぎ)で)ひっかける。かける。ひっかける。動詞。 ・疏箔:〔そ(しょ)はく;s(h)u1bo2○●〕すだれ≒珠箔〔しゅはく;zhu1bo2○●〕(真珠で飾った簾(すだれ)、美しい簾)。また粗い編み目の簾(すだれ)。 ・箔:〔はく;bo2●〕簾(すだれ)。
※臥看千山急雨來:横になって、多くの山々に俄(にわか)雨が降り出すのを見よう。 ・臥看:横になって見る。晩唐・杜牧の『秋夕』に「銀燭秋光冷畫屏,輕羅小扇捕流螢。天階夜色涼如水,臥看牽牛織女星。」や、南宋・陸游に『隴頭水』「隴頭十月天雨霜,壯士夜挽穀セ槍。臥聞隴水思故ク,三更起坐涙數行。我語壯士勉自強,男兒堕地志四方。裹尸馬革固其常,豈若婦女不下堂。生逢和親最可傷,歳輦金絮輸胡羌。夜視太白收光芒,報國欲死無戰場。」、「夜闌臥聽風吹雨,鐵馬冰河入夢來。 」、「斟殘玉行穿竹,卷罷黄庭臥看山」などある。盛唐・王翰の『涼州詞』での「葡萄美酒夜光杯,欲飮琵琶馬上催。醉臥沙場君莫笑,古來征戰幾人回。」は異なる用例。 ・千山:多くの山々。 ・急雨:にわか雨。驟雨。 ・來:くる。晩唐・許渾の『咸陽城東樓』「一上高城萬里愁,蒹葭楊柳似汀洲。溪雲初起日沈閣,山雨欲來風滿樓。鳥下黒盗`苑夕,蝉鳴黄葉漢宮秋。行人莫問當年事,故國東來渭水流。」に感じは同じ。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「回雷來」で、平水韻上平十灰。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●◎○○●●○。(韻)
2009.6.19 6.21 6.22 6.23 |
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